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シーサーたんとミケナ

4 この猫は

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  おばあさんはわたし達の目の前にやって来ると、ミケネコーンの顔を覗き込んだ。

  そして、「おっ、この猫ちゃんはお口が裂けているんだね」と言った。

「ミケネコーンは猫とちゃいますにゃん」

「あらあら、怪獣ちゃんなのよね」

「はいにゃん!  ミケネコーンは猫怪獣ちゃんですにゃん」

  おばあさんはミケネコーンの存在にそれほど驚いてはいないようだ。

「夏花ちゃん、おばあさんとミケネコーンちゃんは息が合っているみたいだね」

  みっきーがポンとわたしの肩を叩いた。

  わたしは、振り返り「うん、良かった」 と答えた。

「うちにも猫ちゃんがいるのよ」

「お家に猫ちゃんがいるんですかにゃん。あ、ミケネコーンは猫とちゃいますにゃん」

「そうよ。シーサーたんが見つけてくれたのよ」

「そうだ~わたしが見つけたのじゃ~」

  それまで黙っていたシーサーたんが目をギョロギョロとさせ得意げだ。

  それはそうとおばあさんはシーサーたんと当たり前のように話している。だから、ミケネコーンが喋っても驚かないのだなと思いわたしは納得した。

「家の前で猫ちゃんがねお腹を空かせていたから拾ったのよ」

「にゃはは、それってミケネコーンとそっくりですにゃん」

「うふふ、そうなのね。あ、あらあらミータンだわ」

  
  わたしは、ミータンって何だろうと思いながらおばあさんの視線の方向に目を向けた。

  すると、そこには……。

  えっ!?  わたしはあまりにもびっくりして一瞬声が出なかった。

「ミータン、お友達よ。ミケネコーンちゃんですって」

  ミータンとおばあさんに呼ばれてこちらに向かって歩いてくるのは三毛猫だった。そう猫なのだけど、わたしのよく知っている三毛猫だった。

「……ミケナだよね?」

  その三毛猫はどこからどう見てもミケナだった。わたしの大切なミケナだった。

「お嬢さんどうしたの?」

  おばあさんがわたしの顔を心配そうな表情で眺めた。

「その子、わたしの猫だと思います」

「え?  その子ってミータンのことかな?」

「はい、行方不明になっていたわたしの猫です」

  すると、その時、三毛猫がわたしの足元に尻尾をピンと立ててすり寄ってきた。ミケナだ。この子は間違いないミケナだよ。

  わたしはしゃがんでミケナの頭をそっと撫でた。ミケナはわたしを見上げてにゃーと鳴いた。

  その目は夏花ちゃんと言っているように見えた。わたしのこと忘れないでいてくれたんだね。そう思うと嬉しくて涙が出そうになった。

「ミータンはお嬢さんの猫だったの?  わたしは捨て猫か野良猫かなと思って拾ったんだけどね」

  おばあさんもしゃがみ優しい笑顔を浮かべた。


  
  そうか、この優しいおばあさんにミケナは拾われていたのか。きっと、優しくしてもらえていたんだろうなと思う。

  だって、ミケナの毛並みはツヤツヤで柔らかいんだもん。

「はい、この子はミケナです。おばあさん、ミケナに優しくしてくれてありがとうございます」

  わたしは、顔を上げておばあさんの優しい目を見た。

「いえいえ、わたしもミータン、あっ、ミケナちゃんだったわね。ミケナちゃんがいてくれて毎日楽しかったわよ」

  そう言って、おばあさんはミケナの頭を優しく撫でた。その手のひらはシワシワでちょっとゴツゴツしていた。けれど、長く生きてきた人生を感じる手だ。

  なんてね、まだ人生なんてよく分からないけれど。

「あの、おばあさん……」

「うん?  お嬢さんどうしたのかな?」

「ミケナを連れて帰ってもいいのかな?」

「ミケナちゃんはお嬢さんの猫なんだものかまわないわよ」

  そう言っておばあさんは、にっこりと微笑みを浮かべた。

「良かったです。だけど、ミータンって名前も付いてるし……おばあさん、寂しくなるよね?」

「そうね、寂しくなるわね。だけど、元々、住んでいた家に帰ることがきっと、幸せなことだと思うのよ」

「……そうなのかな?」

「そうよ。ミケナちゃんはお嬢さんの顔を見上げて幸せそうだもの」

  わたしは、その言葉で視線を下に向けると、わたしを見上げているミケナの大きな目と目が合った。
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