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プロローグ こんにちはミケネコーンとシーサーと大好きな本

4 シーサーとミケネコーン

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  わたしは、視線の感じる方向に目を向けた。すると、その先にシーサーの置物があった。

  そうなのだ、シーサーの置物は門柱の上に置かれているあの置物だ。

  これはどういうことなんだろう?  だって、シーサーのギョロとした目がこちらを見ているではないか。

  いやいや、こちらをというかわたしじゃなくてどうやらミケネコーンを見ているようだ。

「美味しいですにゃんたら美味しいですにゃ~ん!  にゃんにゃんたらたらにゃんにゃん!」

  ミケネコーンは、シーサーの視線に気づく様子もなくドーナツを美味しそうにむしゃむしゃにゃんと歌を歌うように食べ続けている。

  そんなミケネコーンの姿をシーサーのギョロリとした目がじっと見ている。

「ねえ、ミケネコーンちゃん、シーサーの置物が見ているよ」

「うにゃん?  シーサーの置物がですかにゃん。ミケネコーンは気にしませんにゃん」

  ミケネコーンはむしゃむしゃにゃんとドーナツを食べ続けた。

  と、その時、「ならん」と誰かが言った。

  この声はまさか……。でも、そんなことってあるのだろうか。信じられないけれど、この声の主は……。

  わたしは、恐る恐る振り向いた。やはりわたし達の周りには誰もいなかった。

  いるのはむしゃむしゃにゃんとドーナツを食べ続けるミケネコーンとわたしとそれから、門柱の上に置かれたシーサーの置物だけだったのだ。

「……ならんと言ったのはシーサーきみ
なのかな?」

  シーサーの置物に尋ねている自分がなんだか可笑しくて笑ってしまいそうになる。

「そうだ、わたしだよ」

  シーサーのその声はちょっと甲高くて間抜けな声だった。

  猫の形をした怪獣の次はシーサーの置物が喋ったよ。わたしは、またまた腰を抜かしそうになってしまった。

  それなのにミケネコーンはシーサーに気づかないのか今もむしゃむしゃにゃんとドーナツを食べ続けている。

「ミケネコーン~どれだけマイペースなのよ!」

  わたしは、思わず叫んでしまった。

「うにゃん?  何ですかにゃん?」

  ミケネコーンは、顔を上げてわたしの顔を見た。その顔はパンくずだらけでお口の周りは砂糖まみれになっていた。

  呆れてしまい溜め息が出る。
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