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展望台とお兄ちゃんの願い
カラスと話がしたい
しおりを挟む「カラス、わたしね、お兄ちゃんの日記を読んだの」
「ほほう、お兄ちゃんの日記をか、そこにはなんて書かれていたんだね?」
カラスは興味深そうな声を出して、カーカーッと鳴いた。
「わ、わたしが……わたし達があなたの巣をめちゃくちゃにしたって書いてあったの」
わたしは、声を絞り出すように恐る恐る言った。
すると、カラスの瞳が一瞬ピカッと黄色に光った。
「と言うことは史砂お前は、お前達が俺達を殺したことは知っているんだよな」
カラスの声は地面を突き破りそうなそれはそれは恐ろしい声だった。
殺したって、そんな……。
「わ、わたし、覚えていないの。わたしは、本当にあなたの巣をめちゃくちゃにしたの?」
「めちゃくちゃにぐちゃぐちゃに、無邪気な顔でしたぞ」
「ご、ごめんなさい」
「俺達は、死んだんだ。謝ってもらっても意味がない。俺達が生き返らないと意味がないんだよ! 史砂分かるかな?」
カラスの悲痛な声がわたしの胸に突き刺さる。痛い。
わたしは、どうしたらいいの? どうしたらいいのよ。
お兄ちゃん、わたしは、どうしたらいいのかな?
「史砂、もっと もっと悩むといい。お前は悩んで悩んで、ずーっと悩むといいんだ。悩んで悩んでお兄ちゃん~と叫べ」
カーカーッーガァ、ガァガァー。
カラスの鳴き声が展望台のまわりに響き渡った。
カラスはそう言ったかと思うと黒い羽をバサバサとさせて大きな青空に向い飛び去ろうとした。
「ま、待って!」わたしは、カラスを呼び止めた。だって、わたしは、この展望台に来た目的はカラスにちゃんと話を聞きたくて来たのだから。
わたしは、カラスと対決、それからちゃんと話をしたかった。
「カラス、わたしは、あなたと話がしたいの。だから待ってよ」
わたしは、カラスに近寄り手を伸ばそうとした。
すると、カラスはわたしの伸ばしかけた手を細いくちばしで突っついた。
「い、痛い」
カラスにつつかれた手のひらに痛みが走る。
わたしは、つつかれた手のひらを引っ込めようとしたけれど、カラスが手のひらに噛みついた。
わたしの身体にズキズキ痛みが走った。
「俺は史砂、お前を恨んでいる。しかし、お前も滑稽だよな。お前を恨んでいるこの俺にお兄ちゃんを生き返らせてと頼んだのだからな」
そうだった。わたしは、馬鹿みたいだ。わたしを恨んでいるカラスにお兄ちゃんを生き返らせてなんて頼んだのだから。
笑うしかないよね。
「いいか、史砂、お前に詳しく話をするのはもう少し先になりそうだ。俺が話したその時に史砂、お前が何を感じるのか楽しみだ」
カラスは、そう言って今度こそは飛び去ってしまった。
「待って」とわたしが痛みの走る手を伸ばすけれどカラスは今度こそは、大空を羽ばたいて飛び去ってしまった。
わたしは、一人取り残されて大きな青空を見上げ、そのまま暫くこの場から動くことが出来なかった。
わたしは、来た道をとぼとぼ歩いた。展望台に来た時の勢いは何処に落っことしてしまったのかな。
お地蔵さんが三体いる前で立ち止まり、「お地蔵さん、史砂は史砂はカラスに勝てませんでした」と話しかけた。
お地蔵さんは気にするなって言っているような柔らかい表情だったので、わたしは、少しだけ心が和らいだ。
カラスと決着するのは別に今日じゃなくてもいいよね。
気がつくと空は夕焼けが眩しいオレンジ色になっていた。秋の夕暮れはとても綺麗でだけどどこか哀しげだ。
暗くならないうちに家に帰ろう。
わたしは、家の前に着いた。お父さんとお母さんと一緒に暮らすわたしの家。
暖かくて幸せでなんの不自由もない毎日を送っている。
昔ながらのこの家がわたしは、大好きでいついつまでもここで暮らしていたいなと思った。
わたしは、玄関の引き戸をガラガラと元気よく開けて、「ただいま」と明るく挨拶をした。
「おかえりなさい」とお母さんの声が部屋の奥からした。
「今日の夕飯は、何~」と言ってわたしは、元気に暖かい家の中に入った。
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