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展望台とお兄ちゃんの願い
わたしの心そしてアイツと対決
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秋から冬に近づき、真っ赤だった世界が冬支度を始める。
わたしの心も冬の世界のように暗くてぼんやりと沈んでいた。
あれから、なんとなくぼんやりと毎日を過ごしている。お兄ちゃんの日記帳も勉強机の片隅に置いたままだ。
教科書等の隙間からカラスの本もチラリと顔をのぞかせる。黒色のその姿を見る度にわたしは、気持ち悪くなり吐き気がする。
あのカラスの姿はあれから暫く見てないけれど、また現れると思う。
あの悪魔がじっと黙っているなんて思えないのだから。
許せないのと同時にどうでもいいやと思う気持ちとが半々になっている。
わたしはかなり疲れた。
疲れて、疲れて疲れ果てた。このまま熊のように冬眠したくなる。
そんなことを思いながらぼんやりとする日が続いているのだった。
ゆかりと真由と一緒にいる時も時々上の空になるので、わたしは二人に心配をかけているんだなといつも思っている。
わたしって駄目だな。本当に駄目な子だ。
なんて自己嫌悪に陥りながら勉強机の上にある教科書を開いたり閉じたりしている。
そんな時も カラスの本が目に入る。
本の表紙の真っ黒なカラスと目が合う。ドキリ、ドキドキ。カラスの瞳をじっと見ていると、あのお兄ちゃんの日記帳に書かれていたことを思い出した。
『俺達は、許さないからな、この恨みを晴らすまで許さないからな、覚悟をしておくんだ』カラスのこの言葉……。
お兄ちゃんは、カラスに恨みを晴らされたのかな。もしそうだとしたらあんまりだよ。
わたしとお兄ちゃんも悪いことをしてしまったのかな? だけど、それはいつのことよ。
わたしは立ち上り、猫の鞄にお兄ちゃんの日記帳とカラスの本を詰め込む。
そして、ミシミシとなる階段を下りた。
「ちょっと出かけて来るね」と言ってわたしは、玄関の引き戸をガラガラと開けた。
外の空気は少しひんやりとしていた。
お兄ちゃん、カラスと対決しないとね。
ううん、対決と言うかカラスと話をしないとね。辛くても本当のことをわたしは知りたい。
わたしは、前を向いて歩きはじめた。
わたしは、展望台へと続く道へと歩いた。カラスはあの場所にいるのだろうか。
分からないけれど、いるような気がする。
木々が生い茂り途中にお地蔵さんが三体ありこのお地蔵さんは今日もニコニコ笑っているように見える。
お地蔵さんにわたしは挨拶をして木々の鬱蒼と生い茂る道をひたすら歩く。
遠くにあの煉瓦造りの展望台が見えてきた。
なんだかあの周りだけ、白く靄に囲まれているように見えた。異様な空気が感じられる。怖いけれど、一歩、また一歩一歩く。
わたしは、アイツがいる展望台を見上げ、大きく深く一つ息を吐き、「わたしだよ。史砂よ」と言った。
すると、真っ黒なそのカラスは、ガァーッガァーッガァーッと鳴いた。
この世界にまるでわたしとカラスしかいない、そんな気分になった。
「鳴いていないでなんとか言ったらどうなの?」
わたしは、大きな声を張り上げた。
カラスは、何も答えない。しばらくの間、静寂に包まれた。
わたしとカラス以外に誰もいない。ひっそりと静まり返っているこの空間。一秒一秒が長く感じられる。
わたしは、黒いカラスをじっと見つめる。なんだか分からない異様な何かがわたしの中に溢れてくる。
なんだろう? この変な気持ちは……。
込み上げてくる。ドロドロとした何かが。
風は優しく穏やかに吹いている。
そう思ったその瞬間。突然。
ザーザーザーッ、ゴーゴーゴーゴーゴーッと立っているのも困難な風が吹いた。
そして、地獄の底から聞こえてくるような声で、
「史砂、よく来たな」 と、カラスが言った。
それと同時にカラスは、バサバサと飛びわたしの目の前まで降りてきた。
「ようこそ、ふ、み、さ」
カーカーッカーッー。
「アッハハハハハ~アッハハハハハ~アッハハハハハ。カラスに挨拶をする史砂、楽しいぞ、面白いぞ」
カラスは、黒い羽をバサバサさせて笑った。
「ふざけないで、カラス。わたしのお兄ちゃんに呪いでもかけたの?」
「呪い? 意味が分からないな?」
カラスは、よく通るその低い声で可笑しそうに言った。
くちばしを左右に振るその姿が憎たらしい。
「カラス、本当に頭にくる」
わたしは、拳を強く握り締めながら言った。
「本当に人間て凶暴だな。史砂、可愛い顔して、心は腐っているもんな……」
心が腐っている。そんなことはないと思ったけれど、よく考えるとわたしは心の腐った人間なのかもしれない。
カラスの言っていることは正しいのかもね。
「史砂、反撃して来ないんだな」
「……」
「史砂どうした? お前の勢いはそこまでなのかな?」
カラスは落ち着きを取り戻したのか静かに話した。
「カラス、あなたのことは許せないけど、言ってることは一理あるのかも」
そうだ、わたしは、ゆかりや真由に酷いことをしているのだから。
それにカラスにも、覚えてはいないけれど、カラスの巣をわたしは、めちゃくちゃにした。
それが本当のことなら酷いことだよね。わたしは、このカラスを殺したんだよね。
わたしの心も冬の世界のように暗くてぼんやりと沈んでいた。
あれから、なんとなくぼんやりと毎日を過ごしている。お兄ちゃんの日記帳も勉強机の片隅に置いたままだ。
教科書等の隙間からカラスの本もチラリと顔をのぞかせる。黒色のその姿を見る度にわたしは、気持ち悪くなり吐き気がする。
あのカラスの姿はあれから暫く見てないけれど、また現れると思う。
あの悪魔がじっと黙っているなんて思えないのだから。
許せないのと同時にどうでもいいやと思う気持ちとが半々になっている。
わたしはかなり疲れた。
疲れて、疲れて疲れ果てた。このまま熊のように冬眠したくなる。
そんなことを思いながらぼんやりとする日が続いているのだった。
ゆかりと真由と一緒にいる時も時々上の空になるので、わたしは二人に心配をかけているんだなといつも思っている。
わたしって駄目だな。本当に駄目な子だ。
なんて自己嫌悪に陥りながら勉強机の上にある教科書を開いたり閉じたりしている。
そんな時も カラスの本が目に入る。
本の表紙の真っ黒なカラスと目が合う。ドキリ、ドキドキ。カラスの瞳をじっと見ていると、あのお兄ちゃんの日記帳に書かれていたことを思い出した。
『俺達は、許さないからな、この恨みを晴らすまで許さないからな、覚悟をしておくんだ』カラスのこの言葉……。
お兄ちゃんは、カラスに恨みを晴らされたのかな。もしそうだとしたらあんまりだよ。
わたしとお兄ちゃんも悪いことをしてしまったのかな? だけど、それはいつのことよ。
わたしは立ち上り、猫の鞄にお兄ちゃんの日記帳とカラスの本を詰め込む。
そして、ミシミシとなる階段を下りた。
「ちょっと出かけて来るね」と言ってわたしは、玄関の引き戸をガラガラと開けた。
外の空気は少しひんやりとしていた。
お兄ちゃん、カラスと対決しないとね。
ううん、対決と言うかカラスと話をしないとね。辛くても本当のことをわたしは知りたい。
わたしは、前を向いて歩きはじめた。
わたしは、展望台へと続く道へと歩いた。カラスはあの場所にいるのだろうか。
分からないけれど、いるような気がする。
木々が生い茂り途中にお地蔵さんが三体ありこのお地蔵さんは今日もニコニコ笑っているように見える。
お地蔵さんにわたしは挨拶をして木々の鬱蒼と生い茂る道をひたすら歩く。
遠くにあの煉瓦造りの展望台が見えてきた。
なんだかあの周りだけ、白く靄に囲まれているように見えた。異様な空気が感じられる。怖いけれど、一歩、また一歩一歩く。
わたしは、アイツがいる展望台を見上げ、大きく深く一つ息を吐き、「わたしだよ。史砂よ」と言った。
すると、真っ黒なそのカラスは、ガァーッガァーッガァーッと鳴いた。
この世界にまるでわたしとカラスしかいない、そんな気分になった。
「鳴いていないでなんとか言ったらどうなの?」
わたしは、大きな声を張り上げた。
カラスは、何も答えない。しばらくの間、静寂に包まれた。
わたしとカラス以外に誰もいない。ひっそりと静まり返っているこの空間。一秒一秒が長く感じられる。
わたしは、黒いカラスをじっと見つめる。なんだか分からない異様な何かがわたしの中に溢れてくる。
なんだろう? この変な気持ちは……。
込み上げてくる。ドロドロとした何かが。
風は優しく穏やかに吹いている。
そう思ったその瞬間。突然。
ザーザーザーッ、ゴーゴーゴーゴーゴーッと立っているのも困難な風が吹いた。
そして、地獄の底から聞こえてくるような声で、
「史砂、よく来たな」 と、カラスが言った。
それと同時にカラスは、バサバサと飛びわたしの目の前まで降りてきた。
「ようこそ、ふ、み、さ」
カーカーッカーッー。
「アッハハハハハ~アッハハハハハ~アッハハハハハ。カラスに挨拶をする史砂、楽しいぞ、面白いぞ」
カラスは、黒い羽をバサバサさせて笑った。
「ふざけないで、カラス。わたしのお兄ちゃんに呪いでもかけたの?」
「呪い? 意味が分からないな?」
カラスは、よく通るその低い声で可笑しそうに言った。
くちばしを左右に振るその姿が憎たらしい。
「カラス、本当に頭にくる」
わたしは、拳を強く握り締めながら言った。
「本当に人間て凶暴だな。史砂、可愛い顔して、心は腐っているもんな……」
心が腐っている。そんなことはないと思ったけれど、よく考えるとわたしは心の腐った人間なのかもしれない。
カラスの言っていることは正しいのかもね。
「史砂、反撃して来ないんだな」
「……」
「史砂どうした? お前の勢いはそこまでなのかな?」
カラスは落ち着きを取り戻したのか静かに話した。
「カラス、あなたのことは許せないけど、言ってることは一理あるのかも」
そうだ、わたしは、ゆかりや真由に酷いことをしているのだから。
それにカラスにも、覚えてはいないけれど、カラスの巣をわたしは、めちゃくちゃにした。
それが本当のことなら酷いことだよね。わたしは、このカラスを殺したんだよね。
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