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カラスと日記帳

恐怖と恨み

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『この姿は本来俺達が生まれてくるはずだった姿だ!』

「じゃあ、お前は生きていないのか?」

  俺は生きているようにしか見えないカラスに、向かって尋ねる。

『そうだよ、この姿は、仮の姿だ。俺達は生まれてくる前に死んだんだ、お前や史砂のせいでな』

「そ、そんな……」

『そんなだと、それはこっちの台詞だ!!』

  
  カラスが羽をバサバサさせると今度は近くに生えている木が揺れた。

  ゴーゴーゴーゴーゴーッ、ヒューヒューと風が強く唸りをあげる。俺の耳はこの風の音で鼓膜が破れそうになる。

『お前と史砂を俺達は許さない!  それから良く聞け、お前達の先祖も俺達を殺したんだ、なんて血なんだろな』

  カラスは怒りを露にしている。

「俺達の先祖もって何なんだよ?」

『お前達の先祖もな、同じように、木の枝か何かで俺達の仲間を殺したんだよ、お前の祖先は故意にな』

  カラスがそう言ったあと再び風が強くなりヒューヒューゴーゴーッと吹いた。


『俺達は、許さないからな、この恨みを晴らすまで許さないからな、覚悟をしておくんだな。分かったか』

  そう言ったかと思うとカラスはバサバサと飛び去って行った。

  俺は……。

  俺は、俺は、あまりにもびっくりしてその場に立ち尽くした。

  カラスが遠くで、カーカーと鳴いていた。

    
ーーーーーー

  わたしは、ここまで読んでびっくりした。ううん、びっくりし過ぎた。

  お兄ちゃんの日記帳を持つわたしの手は恐怖のあまり震えている。今にもこの日記帳を落っことしてしまいそうだ。

  わたしは、わたしとお兄ちゃんがあのカラスを殺したというの?

  もしそうだったとしても故意に殺すことなんてしていないはずだ。

  それなのに、それなのに、お兄ちゃんは、あのカラスに殺されたの?

  そんなのあんまりだよ。酷すぎるよ、お兄ちゃんを返してよ、お兄ちゃんを返せ!

  
  わたしにお兄ちゃんを返してよ、返してよ、返してよ。どうしてこんな目に遭わなければならないの?

  ねえ、どうして?   誰か教えてよ。

  あまりにも酷くて酷すぎて涙が次から次へと溢れ落ちていく。

  あのカラス許さない!

カラスの奴、「何が許さないだ!  こっちこそ許さないんだから!」わたしは、声を張り上げて怒り、お兄ちゃんの日記帳を壁にぶつけた。

  
  わたしが投げたお兄ちゃんの日記帳は、畳の上に転がった。わたしは、いけないっと思い慌てて日記帳を拾った。

  ごめんなさい、お兄ちゃん。

  日記帳に当たるなんてわたしは最低だよね。すると、日記帳のページがパタパタと捲れた。

  
  とにかくあのカラスを退治しないと、そこまで考えたところで、退治なんてしたら駄目なのかな。でも……。

  わたしは、どうしたらいいのだろうか?

  途方に暮れたわたしは、膝を抱えうずくまる。

  お兄ちゃんの日記帳はパタパタと揺れている。
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