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お兄ちゃんの日記帳
部屋に戻り
しおりを挟む今日のデザートはアップルパイだった。わたしは、宿題があるから部屋で食べるねと言って、アップルパイの載ったお皿を持ってそそくさと二階の自室に戻った。
お母さんと一緒にアップルパイを食べる気がしなかった。
自分の部屋の襖を開けて電気をつけた。勉強机の上にお皿をコトッと置き椅子に座り溜め息をついた。
お兄ちゃんの日記帳は勉強机の上にある。
手を伸ばし読もうとするけれど、何となく躊躇して手を引っ込めた。
アップルパイをフォークでサクッと刺して口に運んだ。だけど、今日はアップルパイの味があまり感じられなかった。
やっぱり日記が気になる。
わたしは、日記帳を手に取りぺらぺらと捲り続きを読んだ。
部屋の空気がなんだか変わったような気がした。気のせいかな?
お兄ちゃんの日記帳の続きをわたしは、読んだ。
そこには……。
ーーーーー
俺は、はっと我に返りマックに戻った。友はとっくに注文を終えて席に座っていた。慌ててビックマックセットを注文して、友が座っている席に向かった。
友は、「何をしていたんだよ」と呆れ顔。
「ごめん、ごめん、ちょっとな」
俺は、席に腰を下ろして、友に詫びた。
きっと笑われるかもしれないと思ったけど、俺はさっきあった出来事を友に話した。
友は、俺の話を頷きながら聞いたあと、
「本当にそいつはお前と同じ顔だったのか?」と言った。
「そうだよ、本当に自分じゃないのかって思うほど瓜二つなやつだったんだよ」
俺は興奮して身を乗りだしながら言った。
「マジでか……」
「そうだよ」
友は、ポテトをくわえながら、うーんと唸った。
「まったく同じ顔だったら不気味だよな」
「そうなんだよ、だから薄気味悪くて」
「だよな……」
「そうなんだよ」
俺と友は、暫くの間うーんと唸った。
特になんの解決策も浮かばず俺達はマックを出た。
それから更にびっくりしたことがあった。
それは。
マックを出た俺達は、駅前のショッピングセンターに行った。友は、ゲームソフトを買うんだとウキウキしていたけど、俺は気分がすぐれなかった。
自分と瓜二つの紫色のパーカーの男の子の姿が頭の中に浮かんでは消えた。
あの少年は、俺だなんてことはないよな。
考えても仕方ないよなと気を取り直したその時、俺は信じられないものを見た。
友がいつまでもゲームソフトを見ているので、俺は本屋の中をブラブラと歩いていた。久しぶりに小説でも買おうかなと、本を手にした。
その時。
俺の後ろを人が通った。俺は何気なく後ろを振り返った。
俺が振り返った先には、え、なんでだ……。
嘘だろう。おい。嘘だろう。
だって、目が合ったのは少女だったんだけど、その少女は史砂とそっくりだったのだから。
そっくりと言うよりも史砂じゃないのかと思えるほど、そっくりだった。
俺は、史砂と声を掛けそうになった。だけど、史砂は長い髪の毛をおさげにしていることが多い。
だが、目の前を歩く少女は、おかっぱ頭だったのだ。
史砂じゃないのか?
本当に、ヘアースタイル以外は、顔立ちも背丈もシルエットも史砂と言ってもおかしくないほどその全てがそっくりだった。
なんて、考えているうちにその少女は俺の後ろを通り過ぎて行った。
一体どういうことなんだろう? 同じ日に自分のそっくりさんと、妹の史砂のそっくりさんを見るなんて。
なんなんだ。これは。
不思議で不思議で、そして不気味で仕方なかったのだ。
俺に何かが起こっているのだろうか?
なんなんだよ。
なんなんだよ。
わたしは、ここまで読むと日記帳をパタンと閉じた。
これは。このわたしにそっくりな女の子の話は、以前お兄ちゃんに聞いた。あの時の話だ。
しかも、同じ日にお兄ちゃんは、自分にそっくりな男の子とわたしにそっくりな女の子を見ていたなんて。
とても不思議な話だ。
あのおぞましいカラスやお兄ちゃんの死と何か関係があるのかな?
分からない。とにかく、嫌な空気が部屋の中に漂っているような気がして、わたしは窓を開けた。
夜風がぴゅ~と部屋の中に入ってきて心地よかった。
とりあえず今日はもう寝ようかな。
何かを考えることに疲れてしまった。窓を閉めてわたしは、パジャマに着替えた。
お布団を敷き、ごろんと横になった。秋の虫の鳴き声がリーンリーンジージーと聴こえてきた。
気がつくとわたしは眠りについていた。
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