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お兄ちゃんの日記帳

お兄ちゃんの日記帳

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    日記帳を勝手に読むのは少し後ろめたいけれど、わたしは、お兄ちゃんのことを知りたくてページを捲った。

  お兄ちゃんは、何を考えて生きていたんだろう?    お兄ちゃんは、どんな人生を生きたかったのかな?

   もちろん、お兄ちゃんがこの世にまだいるんだったら勝手に日記帳は読まない。

  だけど、もう、お兄ちゃんは、この世にいないから、直接お話をすることが出来ないから日記帳を読むしかない。

  
  ○月○日

  俺は日記をつけることにした。三日坊主にならないように気をつけないと。

  頑張るぞ俺はなんてな……。

  俺は、この世に生まれてきて幸せだなと思う。だって、優しい両親に可愛い妹の史砂がいるのだから。

 両親は、食堂を経営していて俺はその後継ぎになろうかなと思っている。

  まあ、考えが変わらないければだけどね。

  料理をすることも嫌いじゃないし、むしろ好きだ。それに、あの食堂を潰したくないから。

   この世に生まれてきたのは何か意味があるのかなとか最近は考えたりもする。

 それを考えるとなんだか不思議な気分になる。

  
  ○月○日

  俺には可愛らしい妹がいる。史砂って言うんだ。可愛くて仕方ない無邪気な奴なんだな。

  今日なんて、お兄ちゃんがこの町から離れないのならわたしもずっとここにいるだなんなて、可愛いことを言うんだからか困るよ。

  そんなことを言っているのはきっと今のうちだけだと思っている。

  だって、この町には何もないもんな。

  
  史砂が大人になり都会に興味を持ちこの町を出て行く日が来ると本当に寂しいけれど、それは仕方のないことだと思っている。

  史砂には本人が幸せだなと思う人生を歩いてほしいなと思う。

  それが、俺の願いなのだから。

  
ーーーーー

  お兄ちゃんの日記をここまで読んで、わたしは、なんてお兄ちゃんに愛されていたんだろうなと思った。

 わたしのことを可愛いと思っていてもらえていた。嬉しいな。

  そして、お兄ちゃんの将来の目標はやっぱり食堂を継ぐことだったんだね。

  ああ、それなのにと思うと胸が痛くなる。

  
  だけど、考えていても何も変わらないことにわたしは、気がついている。

  だから、前を向きたい。

  お兄ちゃんだってわたしが泣いている顔なんてみたくはないだろう。

  だから、わたしは、笑いたい。きっとわたしが笑うとお兄ちゃんも何処かで喜んでくれるんじゃないかなと思う。

  遺影が哀しげな表情に変化した。そんなお兄ちゃんのをあの表情を思い出した。

   お兄ちゃんの哀しげな顔は二度とみたくはない。

  
  わたしは、次々に日記帳のページを捲った。カラスについて何か書かれていないのかなと気になる。

  日記に書かれている内容はたいしたことは、ほとんど書かれていなかった。学校でのこと、友達のこと、お父さんやお母さんのこと、それからわたしのことが時々書かれていた。

  他には、ご飯が美味しかった。あのアニメ面白いなとか日常生活のことが書かれていた。

  お兄ちゃんってば。こんなことがあったんだって時々笑えることも書いてあった。

  それから、親友の友君と同じ高校に行くんだ。高校生になるのが楽しみだ~っと書かれている文章を読んで胸がチクッと痛くなった。

  
  ああ、もう嫌だ。明るく前を向こうと思っているのに……嫌になってしまう。

  分厚い日記帳なので、まだまだ続きがあるけれど、今日はトイレに閉じ込められたりして本当に疲れた。

  また、明日続きを読もう。

  わたしは、そう決めて、背表紙が濃い青色の日記帳を抱えて自室に戻った。勉強机にお兄ちゃんの日記帳を置いてわたしは、眠りに着いた。
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