56 / 83
お兄ちゃんの日記帳
お兄ちゃんの日記帳
しおりを挟む日記帳を勝手に読むのは少し後ろめたいけれど、わたしは、お兄ちゃんのことを知りたくてページを捲った。
お兄ちゃんは、何を考えて生きていたんだろう? お兄ちゃんは、どんな人生を生きたかったのかな?
もちろん、お兄ちゃんがこの世にまだいるんだったら勝手に日記帳は読まない。
だけど、もう、お兄ちゃんは、この世にいないから、直接お話をすることが出来ないから日記帳を読むしかない。
○月○日
俺は日記をつけることにした。三日坊主にならないように気をつけないと。
頑張るぞ俺はなんてな……。
俺は、この世に生まれてきて幸せだなと思う。だって、優しい両親に可愛い妹の史砂がいるのだから。
両親は、食堂を経営していて俺はその後継ぎになろうかなと思っている。
まあ、考えが変わらないければだけどね。
料理をすることも嫌いじゃないし、むしろ好きだ。それに、あの食堂を潰したくないから。
この世に生まれてきたのは何か意味があるのかなとか最近は考えたりもする。
それを考えるとなんだか不思議な気分になる。
○月○日
俺には可愛らしい妹がいる。史砂って言うんだ。可愛くて仕方ない無邪気な奴なんだな。
今日なんて、お兄ちゃんがこの町から離れないのならわたしもずっとここにいるだなんなて、可愛いことを言うんだからか困るよ。
そんなことを言っているのはきっと今のうちだけだと思っている。
だって、この町には何もないもんな。
史砂が大人になり都会に興味を持ちこの町を出て行く日が来ると本当に寂しいけれど、それは仕方のないことだと思っている。
史砂には本人が幸せだなと思う人生を歩いてほしいなと思う。
それが、俺の願いなのだから。
ーーーーー
お兄ちゃんの日記をここまで読んで、わたしは、なんてお兄ちゃんに愛されていたんだろうなと思った。
わたしのことを可愛いと思っていてもらえていた。嬉しいな。
そして、お兄ちゃんの将来の目標はやっぱり食堂を継ぐことだったんだね。
ああ、それなのにと思うと胸が痛くなる。
だけど、考えていても何も変わらないことにわたしは、気がついている。
だから、前を向きたい。
お兄ちゃんだってわたしが泣いている顔なんてみたくはないだろう。
だから、わたしは、笑いたい。きっとわたしが笑うとお兄ちゃんも何処かで喜んでくれるんじゃないかなと思う。
遺影が哀しげな表情に変化した。そんなお兄ちゃんのをあの表情を思い出した。
お兄ちゃんの哀しげな顔は二度とみたくはない。
わたしは、次々に日記帳のページを捲った。カラスについて何か書かれていないのかなと気になる。
日記に書かれている内容はたいしたことは、ほとんど書かれていなかった。学校でのこと、友達のこと、お父さんやお母さんのこと、それからわたしのことが時々書かれていた。
他には、ご飯が美味しかった。あのアニメ面白いなとか日常生活のことが書かれていた。
お兄ちゃんってば。こんなことがあったんだって時々笑えることも書いてあった。
それから、親友の友君と同じ高校に行くんだ。高校生になるのが楽しみだ~っと書かれている文章を読んで胸がチクッと痛くなった。
ああ、もう嫌だ。明るく前を向こうと思っているのに……嫌になってしまう。
分厚い日記帳なので、まだまだ続きがあるけれど、今日はトイレに閉じ込められたりして本当に疲れた。
また、明日続きを読もう。
わたしは、そう決めて、背表紙が濃い青色の日記帳を抱えて自室に戻った。勉強机にお兄ちゃんの日記帳を置いてわたしは、眠りに着いた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
わたし雑草がぼうぼうと生えているおばあちゃんの家にお邪魔します!(猫と不思議な生き物が住みついています)
なかじまあゆこ
児童書・童話
猫好きな小鳥浜ことりが最近気になるのは雑草がぼうぼうに生えているおばあちゃんの家だ。
その家に大好きな猫が通っているのを見かけめちゃくちゃ興味を持っていた。
そんなある日、猫と遊んでいると、その家に住むおばあちゃんに声を掛けられて。
小鳥浜ことり小学五年生と幼なじみの紫美紀香と町田結太におばあちゃんと猫。それからちょっと不思議なあやかしの物語です。
よろしくお願いします(^^)/
【完】ことうの怪物いっか ~夏休みに親子で漂流したのは怪物島!? 吸血鬼と人造人間に育てられた女の子を救出せよ! ~
丹斗大巴
児童書・童話
どきどきヒヤヒヤの夏休み!小学生とその両親が流れ着いたのは、モンスターの住む孤島!?
*☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆*
夏休み、家族で出掛けた先でクルーザーが転覆し、漂流した青山親子の3人。とある島に流れ着くと、古風で顔色の悪い外国人と、大怪我を負ったという気味の悪い執事、そしてあどけない少女が住んでいた。なんと、彼らの正体は吸血鬼と、その吸血鬼に作られた人造人間! 人間の少女を救い出し、無事に島から脱出できるのか……!?
*☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆*
家族のきずなと種を超えた友情の物語。
ひみつを食べる子ども・チャック
山口かずなり
児童書・童話
チャックくんは、ひみつが だいすきな ぽっちゃりとした子ども
きょうも おとなたちのひみつを りようして やりたいほうだい
だけど、ちょうしにのってると
おとなに こらしめられるかも…
さぁ チャックくんの運命は いかに!
ー
(不幸でしあわせな子どもたちシリーズでは、他の子どもたちのストーリーが楽しめます。 短編集なので気軽にお読みください)
下記は物語を読み終わってから、お読みください。
↓
彼のラストは、読者さまの読み方次第で変化します。
あなたの読んだチャックは、しあわせでしたか?
それとも不幸?
本当のあなたに会えるかもしれませんね。
おねしょゆうれい
ケンタシノリ
児童書・童話
べんじょの中にいるゆうれいは、ぼうやをこわがらせておねしょをさせるのが大すきです。今日も、夜中にやってきたのは……。
※この作品で使用する漢字は、小学2年生までに習う漢字を使用しています。
日本ボカシ話
昆布海胆
児童書・童話
むか~しむかし、あるところにお爺さんとお婆さんが暮らしておりました。
「また都に鬼が出たそうじゃ」
「あら怖いですね~」
仲の良いお爺さんとお婆さんはいつもの世間話をした後、支度をして出発しました。
お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ選択に行きました。
お婆さんが川で選択をしていると上流から大きな昆布が・・・
こんぶらこ・・・ひっきこもり・・・こんぶらこ・・・ひっきこもり・・・
と流れてきました。
お婆さんは目に装着していた装置のボタンを押します。
ピピピピピ・・・ピー!
「戦闘能力たったの5か・・・ゴミめ」
昆布はそのまま川を流れて行きました。
昆布が川を下っていると一緒に1つのお椀が流れているのに気が付きます。
良く見るとお椀の中には身の丈1寸程の男の子が入っていました。
「この世の全ての食材に感謝を込めて、いただきます」
昆布は喰われてなるものかと逃げるように川を更に下流へと流れていきました。
やがて昆布は海へと辿り着き海岸へ流れ着きました。
するとそこには海を眺めながら唖然と立ち尽くす青年の姿があります。
青年は脇に抱えた玉手箱をゆっくりと下へ降ろしてその封を切ります。
するとその玉手箱からは突如白い煙が発生し青年の体を包み込みます。
「ばけらった!」
その白い煙に包まれた青年は叫び声と共にその姿を老人へと変貌させました。
老人はプルプルした手付きで海岸に打ち上げられた昆布を手にし家へと帰りました。
そしてお爺さんはそのまま帰らぬ人となりました。
昆布がその家で乾燥させられている間に夫婦と兄妹がその家に住み着きました。
ですがその家族は貧乏で明日食べる食料にも困る生活を送っておりました。
ある日、子供たちが寝静まった頃に母親は言いました。
「二人を山へ捨てましょう・・・」
翌日、兄妹を連れて山へ出かけた家族。
兄は母親の言動に違和感を覚えていました。
その為に兄は帰り道が分からなくならない様に家にあった昆布を持ち出して少しずつ千切って道標に残していきました。
その昆布の欠片を道標に兄妹は無事に家へと帰宅します。
その兄妹の名前は・・・
「その妹があの歌手なのさ」
テレビに映るグレイと言うグループの歌手を指差して王子様は姫に教えます。
どう見ても男にしか見えないその人物とは・・・
グレイのテルであったとさ・・・
めでたしめでたし・・・
月神山の不気味な洋館
ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?!
満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。
話は昼間にさかのぼる。
両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。
その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。
ひとなつの思い出
加地 里緒
児童書・童話
故郷の生贄伝承に立ち向かう大学生達の物語
数年ぶりに故郷へ帰った主人公が、故郷に伝わる"無作為だが条件付き"の神への生贄に条件から外れているのに選ばれてしまう。
それは偶然か必然か──
ヒョイラレ
如月芳美
児童書・童話
中学に入って関東デビューを果たした俺は、急いで帰宅しようとして階段で足を滑らせる。
階段から落下した俺が目を覚ますと、しましまのモフモフになっている!
しかも生きて歩いてる『俺』を目の当たりにすることに。
その『俺』はとんでもなく困り果てていて……。
どうやら転生した奴が俺の体を使ってる!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる