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カラスを退治したい
この現実が辛い
しおりを挟むわたしの周りで何かが起こっているのかもしれない。
だって、まずカラスが話をすることも絶対に変だ。それから、カラスのお弁当、気がついたらあの展望台に倒れていたことも……。
それに、白い人影。
一体どういうことだろうか。
元気に明るく前を向いて歩こうと思うけれど、やっぱり……。
そう簡単にはいかないよ。
わたしは、やっぱり弱いのかな。強くなりたいよ、お兄ちゃん。わたし強くなりたいんだよ。わたしの心は叫んでいる。
先程台所に行き、以前カラス弁当が入っていたお弁当箱を何か仕掛けはないのかなと、隈なく点検した。
だけど、変哲もないお弁当箱だった。
そうだよね、毎日使っているもんね、何かあるならとっくに気がついていると思う。
お弁当箱を食器棚に戻してわたしは溜め息をついた。
そして、今現在に至る。
暑くも寒くもない秋、畳の上で寝転んでいるとなんだか気持ちよくなり気がついたら眠りに落ちていた。
夢の中にもカラスが出てきて、わたしは、カラスに囲まれた。
黒い黒いカラスの大群がじりじりじりじりわたしに近づいてくる。
お弁当箱の蓋をカラスはくちばしでパカリと開けてわたしに見せる。コロンと転がったお弁当箱の蓋、そして、お弁当の中にはあのカラス弁が入っていた。
「ぎゃあ~!!」夢だと分かっているのに、わたしは大声を上げていた。
その自分の声で、わたしは飛び起きた。
秋だというのに汗をかいていた。嫌な寝汗だ。もうカラスにまとわりつかれているそんな感じだ。
わたしは、カラスに悪いことをした覚えもないのにどうして?
夢の中にまで出てくるし嫌になる。
窓を開けて空気の入れ換えをする。秋風が、窓から入ってきて気持ちいい。
住み慣れた我が家、十三年間ずっとここで暮らしてきた。
これといってなんの不自由もないけれど、お兄ちゃんだけいなくなり、ぽっかりとあいた穴。寂しいよ……。
だって、この家にはお兄ちゃんとの思い出がたくさんつまっている。お父さんとお母さんが仕事で忙しい時も、お兄ちゃんがいたから寂しくなかった。
だけど、お兄ちゃんは何処にもいなくてわたしは、一人ぼっちだ。
寂しいな苦しいな、カラスには苛められるし……。
嫌になるよ。本当に嫌になるよ……。
ああ、嫌になる。
少しだけ冷たい秋風が頬を撫で気持ちいい、しばらくの間わたしは、秋の風を頬に受けてじっとしていた。
さっきまで不幸だと思っていたけれど、心地いい風の中、目を瞑ると幸せだなと思えた。
わたしは、それからしばらくの間、そよそよ、なびく風に吹かれていた。
「史砂ちゃん、お菓子食べない?」
お母さんが階下からわたしを呼んだ。
「は~い、今、いくよ」とわたしは元気よく階下に向かって返事をした。
「史砂ちゃん、手を洗うのよ」
わたしが居間に顔を出すとお母さんが言った。わたしは、「は~い」と返事をして洗面所で手を洗った。
今日のお菓子は大福だった。
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