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お兄ちゃん!お兄ちゃん!!
わたしの住む小さな町
しおりを挟むわたしは、気分を変えるため、外に出ることにした。
夏の日差しが眩しい。夏休みなんだなと思った。太陽がわたしの肌を焦がしそうなくらい強烈だ。
「史砂ちゃん、こんにちは」
「おじさんこんにちは」
近所のおじさんとも顔見知りで、必ず挨拶を交わす。
人口も少ない穏やかな小さな町。みんなが優しくて、ゆったりと時間が流れているそんな場所。
何もないけど、わたしはみんなに守られている気がして、ここが本当に好きだった。
木々も川も畑もそのすべてがキラキラして見えた。
だけど、そのキラキラして見えたもの達が一瞬にして裏返ってしまった。
そう、あの日から……。
お兄ちゃんが事故に遭って亡くなったあの日から……。
わたしの視界は靄がかかったように見える。
綺麗な木々も小鳥のさえずりも、可愛い猫や犬も大好きだったもの達の輝きも一瞬にしてわたしの心から消えた。
気がつくと足が展望台へと向かっていた。
展望台へは夕方になってから行くつもりだったけれど、まぁいいか。
展望台へと続く道をひたすら歩く。
木々が生い茂り途中にお地蔵さんが三体ありこのお地蔵さんはニコニコ笑っているようにも見える。
そして、木々がざわざわお喋りをしてるみたいだ。
わたしは、黙々と歩き続ける。
鳥達の声も聞こえる。
そして、木々がうっそうとした道を抜けると、煉瓦造りの展望台が見えてきた。
あの場所に果たしてわたしの願いを叶える何かがあるのかな?
本当は半信半疑なんだけれど、何かにすがりたいこの気持ち。
こんなにどこまでも青く晴れている空なのに、展望台はいつもより暗くくすんで見えるのは何故なんだろうか……。
わたしは、一歩一歩展望台へと近づく。展望台を見上げると、史砂よく来たなとでもお兄ちゃんが言ってるかのように見えた。
これは、わたしの勝手な解釈なんだろうけれど……。
そして、わたしは展望台の前に辿り着くと、
「今日も来たよ」と言った。
すると、わたしの周りにある木々がざわざわざわざわと音を立てた。
ざわざわざわざわざわざわと木々が揺れる。史砂ようこそ! と言っているかのように感じた。
「どうかわたしのお兄ちゃんを生き返らせてください」
わたしは、掌を合わせて祈った。
すると風がびゅ~と吹きわたしの髪の毛をなびかせた。
そして、何かが始まりそうな予感がしたのだった。
そう、身体の中から何かが込み上げてくる。ゾクゾクゾクゾクゾワゾワと。
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