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お兄ちゃん!お兄ちゃん!!

お兄ちゃん!

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  お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん~!!

  わたしは、大きな声を出して泣き叫んだ!

   涙がどんどん溢れてくる。もう、止まることはないのではと思うぐらいに溢れる涙。

  そこまで、思い出した。

  まるで昨日起きた出来事であるかのように鮮明だ。

  

  そして、今現在に心が戻ってきた。

  わたしは、頬に何かを感じそっと触れると涙がつぅーと頬を伝っていた。

  
  今は考えるのはよそう。涙を拭い笑ってみる。

  わたしの部屋は和室なので、ベッドは置かずに畳に直接布団を敷く。

  お母さんが、布団を干してくれていたみたいでお日様の匂いがして気持ちいい。

 お布団に入り、楽しいことでも考えようとする。

  先程、わたしには、幸せになる資格はないと思ったばかりだけど、それでも楽しいことを探してしまうわたしがいるのも事実だ。

  ゆかりや真由と笑っている時間が好きだ。

  二人と話して他愛のないことで笑っていると、あの日の悪夢もお兄ちゃんのことも一時忘れられる。

  
  明日も展望台に行こう。

  そして、なんでもするからお兄ちゃんを返してと祈るんだ!

  そうしよう……。

  そんなことを考えているうちにわたしは、眠りに落ちていた。

 だけど、暫くすると目が覚めた。目を開けると、白い影がぼやけて見えた。 この影は、やっぱりお兄ちゃんなの?

「お兄ちゃん?」

  だけど、わたしの呼びかけに返答はない。

  
  そして、気がつくと白い影はすーっと消えていた。

  消えてしまったと思い寝返りを打つと目の前に白い影が見えて、ドキリとした。

  その白い影は、しゅるしゅるしゅると小さくなっていき、そして、消えた。

  わたしは、中々寝つかなくなってしまい、何度も白い影が見えないかと確認するけれど、この日は白い影が現れることはなかった。

   知らないうちにわたしは深い眠りに落ちていたようだった。
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