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わたしの願いは一つ
お兄ちゃんの言葉
しおりを挟むそれから、自室に戻り和室に置かれた椅子に座り、先程お兄ちゃんが言ったと思われる言葉を思い出す。
お兄ちゃんは、『お前は、よ、か、』と言った。あれは絶対にお兄ちゃんの言葉だ。
聞き間違いでも幻聴でもない。
わたしが、毎日展望台の下で祈っている、お兄ちゃんに会いたいと思う気持ちは叶うのだろうか。
そうであれば良いのだけど。
お兄ちゃんは、わたしに何かを伝えたかったのだろうか。
『お前は、よ、か』は、史砂は良かったねとお兄ちゃんは言いたかったのかな。
もしも、そうだとすればお兄ちゃんは、お人好しだ。
お兄ちゃんは、わたしのせいで死んだのに……。
だけど、それもお兄ちゃんらしいと言えばお兄ちゃんらしいのだけど……。
だって、お兄ちゃんはあの時、『史砂は……』
あれ?
お兄ちゃんは、あの時なんて言ったのか、わたしは忘れてしまった。何かが引っかかる、そんな気がした。
ーーーーー
あの時……。
事故があったあの日は少し雲が優勢な空だった。
わたしとお兄ちゃんは、駄菓子屋さんに行こうとしていた。
駄菓子屋さんで、お菓子をたくさん買うんだとわたしは意気込みお兄ちゃんの前を急ぎ足で歩いていた。
わたしは、スカートの後ろポケットにハンカチを入れていた。
そして、わたしは……。
ハンカチを落とした。
わたしの落としたハンカチに気がついたお兄ちゃんは、「史砂、ハンカチ落としたよ」と言った。
わたしは、お兄ちゃんの声に振り返った。
お兄ちゃんは、しゃがみこみわたしが落としたハンカチを拾おうとしていた。
お兄ちゃんの手がハンカチに触れた。
その時。
車が……。
そう、車が物凄いスピードでこちらに向かってきた。
ハンカチを落とした。
わたしの落としたハンカチに気がついたお兄ちゃんは、「史砂、ハンカチ落としたよ」と言った。
わたしは、お兄ちゃんの声に振り返った。
お兄ちゃんは、しゃがみこみわたしが落としたハンカチを拾おうとしていた。
お兄ちゃんの手がハンカチに触れた。
その時。
車が……。
そう、車が物凄いスピードでこちらに向かってきた。
『お兄ちゃん~』
車は、どんどんスピードを上げてわたし達の方に近づいて来た。
あ! と思った!
今、あの時の光景を思い出すと胸がえぐられそうだ。 加速した車は、ブレーキを踏まずに突っ込んできて、そして、
『お兄ちゃん~』
わたしは、大声で叫んだ!
『史砂~』
と、わたしの名を呼んだお兄ちゃんは、わたしの肩をドンと強い力で押した。その力でわたしは、車から少し離れた場所で転んだ。
そして、起き上がり顔を上げると、お兄ちゃんは車に轢かれていた!!
『お兄ちゃん~きゃあ~』
『嫌だ~お兄ちゃんーーーーーー!!』
『お兄ちゃんーーーーーーーーー!!』
わたしは、狂ったように叫んだ!
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