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奈美ちゃんと英美利ちゃん

世界で一番嫌いだけど

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  わたしも英美利ちゃんの半分でも良いので自分に自信を持ちたいな。

  あの思い込みこそ世界で一番だと思う。羨ましい性格だ。でもまあ、英美利ちゃんが美しいのは本当のことだけど。

「英美利ちゃん、その馬鹿みたいに自信満々な性格を貫いてね」

  お姉ちゃんはにっこりと笑って言った。

「順子ちゃん、本当に失礼な子だね!  まぁ、わたしも順子ちゃんのその失礼なところが嫌いだけど嫌いじゃなかったけどね」

「嫌いだけど嫌いじゃなかったって意味が分からないんだけど?  それって、英美利ちゃん、わたしのことが好きってことかな?」

  お姉ちゃんはニヤリと笑った。

「はぁ?  ふざけないでよ、どうしてわたしが……でもまあ、あまりにも失礼なところが正直で良いかもね」

  英美利ちゃんは、眉間に皺を寄せて、やれやれと溜め息をついた。


  「ありがとう。英美利ちゃん!」

「えっ?  わたし、お礼なんて言われることしたかな?」

  英美利ちゃんは、お箸で挟んでいたタコさんウインナーをポトリと落っことした。

「うん、失礼なところが正直で良いって言ってくれたから」

  無表情か若しくは険しい表情だったお姉ちゃんがにっこりと笑った。

「よく分からないけど順子ちゃんが笑ってくれて良かった」

「うん、美人なのに奈美ちゃんに対して悔しいって気持ちを持っていて、めちゃくちゃ自信家で正直な英美利ちゃんがわたしは好きだよ」

「あ、ありがとう……」

  英美利ちゃんは慌てた様子でタコさんウインナーを口に運んだ。

「だからね、英美利ちゃんには変わらないでほしいのよ」

  お姉ちゃんはニヤリと笑った。その表情が魔女のようで少し怖いなと思った。

「変わらないでほしいって?」

  英美利ちゃんが首を傾げながら尋ねた。


  「それは、奈美ちゃんに嫉妬して憎悪を感じるあの黒く病んだ気持ちのことだよ。奈美ちゃんのことが憎くて羨ましくてでも好きだと言う気持ちを忘れないで持ち続けてほしいのよ」

  お姉ちゃんはそう言って笑った。

「……順子ちゃん」

  英美利ちゃんは深い溜め息をついた。

  わたしは、お姉ちゃんの心の中にあるどうしようもないその気持ちも気になるけれど、話の話題になっている奈美ちゃんのことも心配になった。

  わたしは、ちらりと奈美ちゃんに視線を向けた。

  奈美ちゃんのその横顔はなんとも言えない悲しみが溢れていた。

  わたしはこの場にいる皆のことが大好きなのにどうしてこんなことになってしまったのだろうかと思うとやるせない気持ちになる。

  皆のことが大好きなのにとわたしは叫びたくなった。

  お姉ちゃんは、わたしの大切なお姉ちゃんだよ。それに、英美利ちゃんも奈美ちゃんも大切な友達なんだからね。

  この思いが皆に届きますように。
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