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英美利ちゃんは好きだけど嫌い

3 お茶会

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「わたしはそろそろ仕事に戻りますね」

  雪本さんは、そう言って立ち上がった。わたしも雪本さんに続いて立ち上がろうとすると、

「雪本さん、葉月ちゃん。今日はもう少しゆっくりするといいわよ。お茶でも飲みながら話でもしましょう」

  英美利ちゃんは大きな薔薇の花のような微笑みを浮かべた。

「え、英美利様!  ありがとうございます。英美利様のお部屋を綺麗に磨かなくてはなりませんが、では、今日はお言葉に甘えさせてください」

  雪本さんは、ぺこりとお辞儀をして椅子に腰を下ろした。

  わたしも「ありがとう。英美利ちゃん、ではお言葉に甘えさせてもらうね」と言った。

「わたしも二人とお茶をしたかったからいいのよ。そうだ、今度はわたしがお茶を淹れてくるね」

  英美利ちゃんはそう言ったのと同時に立ち上がりさっと台所に行った。

「え、英美利様~感激でございます。英美利様に淹れて頂いたお茶を飲むことができるなんて雪本は幸せです」

  なんて言って雪本さんは泣きそうになっている。

  わたしの頭の中には今もお姉ちゃんが潰したリンゴが浮かんでいた。

  「成田さん。ちょっと、成田さん」

   ポンポンと肩を軽く叩かれてわたしは我に返った。

「あ、はい、何ですか?」

  お姉ちゃんがリンゴを握り潰したあの瞬間を思い出し、わたしはぼーっとしていた。

「英美利様に紅茶を淹れて頂けるなんて幸せですよね」

  雪本さんは、頬を上気させ嬉しそうだ。そんなことで喜べる雪本さんは幸せな人だなと思った。

「あ、はい。英美利ちゃんに紅茶を淹れてもらえるのは有り難いですね」

  わたしは、無理矢理笑顔を作った。

「そうでしょ。英美利様は素晴らしい女優さんなんですからね。ああ、わたしは幸せですよ~」

  雪本さんは、胸の前で手を握りうっとりしている。その幸せを半分でもいいから分けてほしいなと思った。

「お待たせ~紅茶を淹れてきたよ~あ、クッキーもあるからね」

  英美利ちゃんがお盆にティーポットとクッキーを載せて戻ってきた。
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