上 下
30 / 86
英美利ちゃんは好きだけど嫌い

憧れのお姉さんだったけれど

しおりを挟む

  わたしがまだ小学生の頃英美利ちゃんは中学生だった。わたしにとって英美利ちゃんは可愛くて美人な憧れのお姉さんだった。

  お姉ちゃんと違って大人っぽくてキラキラ輝いていて夢の世界からやって来た女の子みたいだった。

  羨ましいとか妬みなんかなくて、ただそこにいるだけで華がぱっと咲いたような女の子って本当にいるんだなと思い眺めていた。

  そんな英美利ちゃんと同じようにキラキラと輝く一輪の花のような女の子がもう一人いた。それが、森本奈美ちゃんだった。

  花で例えると英美利ちゃんが薔薇で、奈美ちゃんはかすみ草のような女の子だった。

  英美利ちゃんは真っ赤な薔薇のようにその輝きを見せつけていた。その一方、奈美ちゃんは控え目で目立とうしないけれど、可愛くて清純でまるで天使のようで英美利ちゃんとまた違った魅力があった。

  わたしは、英美利ちゃんも奈美ちゃんもどっちも大好きだった。

  それなのに……。

  学生時代、わたしのお姉ちゃんと英美利ちゃんは、奈美ちゃんに嫉妬をして意地悪なことをしていたのだった。

  「ねえ、英美利ちゃん。あなたは何でも持っているのにどうしてお姉ちゃんと一緒になって奈美ちゃんに意地悪なことをしたのかな?」

  わたしは、写真の英美利ちゃんに話しかける。英美利ちゃんの表情は変わることなくキラキラと輝いている。

「お姉ちゃんやわたしは、英美利ちゃんのようにお金も美貌も才能も何も持っていないんだよ。英美利ちゃんは元々お金持ちのお嬢さんだったでしょ」

  写真の英美利ちゃんは自信満々の表情で微笑んでいた。その笑顔からトゲが飛んできてわたしの胸にグサリと刺さったように感じた。

  お姉ちゃんがしたことは勿論いけないことだけど、何となく気持ちは分かる。

   だけど、何でも待っている英美利ちゃんが奈美ちゃんを羨ましく思う気持ちがわたしには分からない。

「英美利ちゃん、分からないよ」

   わたしは、いつまで遠い過去に縛られているのだろう。それは、お姉ちゃんがあんなのだからだ。

   なんて、考えていると、

「成田さ~ん、おはようございます」と雪本さんの元気な声が聞こえてきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

凪の始まり

Shigeru_Kimoto
ライト文芸
佐藤健太郎28歳。場末の風俗店の店長をしている。そんな俺の前に16年前の小学校6年生の時の担任だった満島先生が訪ねてやってきた。 俺はその前の5年生の暮れから学校に行っていなかった。不登校っていう括りだ。 先生は、今年で定年になる。 教師人生、唯一の心残りだという俺の不登校の1年を今の俺が登校することで、後悔が無くなるらしい。そして、もう一度、やり直そうと誘ってくれた。 当時の俺は、毎日、家に宿題を届けてくれていた先生の気持ちなど、考えてもいなかったのだと思う。 でも、あれから16年、俺は手を差し伸べてくれる人がいることが、どれほど、ありがたいかを知っている。 16年たった大人の俺は、そうしてやり直しの小学校6年生をすることになった。 こうして動き出した俺の人生は、新しい世界に飛び込んだことで、別の分かれ道を自ら作り出し、歩き出したのだと思う。 今にして思えば…… さあ、良かったら、俺の動き出した人生の話に付き合ってもらえないだろうか? 長編、1年間連載。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

連続寸止めで、イキたくて泣かされちゃう女の子のお話

まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*)   「一日中、イかされちゃうのと、イケないままと、どっちが良い?」 久しぶりの恋人とのお休みに、食事中も映画を見ている時も、ずっと気持ち良くされちゃう女の子のお話です。

造花の開く頃に

有箱
現代文学
不安障で死にたがりで頑張り屋の青年、月裏(つくり)の元に、大好きな祖母から一通の手紙が届く。 それは月裏の従兄弟に当たる青年、譲葉(ゆずるは)を世話して欲しいとの内容だった。 そうして、感情の見えない美少年、譲葉との手探りの生活が始まった。 2016.12完結の作品です。

処理中です...