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お姉ちゃんと英美利

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  英美利ちゃんの部屋は自分の写真を壁一面貼り付けこれこそ正にナルシスト、そして、床には高級そうな服が散乱しているのだからナルシスト&汚部屋だったのだ。

「さあ、英美利様のお部屋を掃除しますよ。あら、成田さんどうしましたか?  固まっているみたいですが」

  雪本さんは、わたしの顔を可笑しそうに見て言った。

「……いえ、そのなんというか壁の写真に驚いたのと床にたくさんの服が散乱しているなと思ってびっくりしてしまいました」

  わたしは思ったことを正直に答えた。

「ふふっ、まあちょっと散らかってはいますけどそれも愛嬌ですよ」

  なんて言ってクスクス笑う雪本さん。

  それから、わたしと雪本さんは床にぐちゃぐちゃに積まれている服を片付けた。

「あっ、このスカート」

「成田さん、どうしましたか?」

「いえ、何でもありません」

  思わず声を上げてしまったのは、わたしの欲しかったあの桜色のスカートがベッドの上にあるからだ。

  英美利ちゃんはこの桜色のスカートを美しく穿きこなしていた。

  それは、羨ましいのと同時にわたしが欲しくてだけど買えなかったスカートをベッドの上に放置しているなんて、なんだか頭にくる。

  わたしは、英美利ちゃんの服を片付けながらお金持ちは違うなと思った。庶民のわたしが欲しくても手に入らない物を、英美利ちゃんはあっさり手に入れることができる。

  そして、あっさり手に入れた素敵な服をぐちゃぐちゃに放置している。

  触れると柔らかい肌触りの服。わたしだったら粗末にしないで大切にハンガーに掛けうっとりと眺めるだろうな。

  そして、全身鏡の前で服を着て微笑む。

  そう思うとなんだかイライラしてきて服をギュッと掴んだ。駄目だ、これは嫉妬だ。自分が英美利ちゃんのようにキラキラと輝けないから嫉妬しているんだ。

  わたしは、明るくて元気な葉月ちゃんと言われていたのにいつからこんなわたしになってしまったのかなと考えると悲しくなった。

  でも、だけどそれだけではない……。
  
  
  考えれば考えるほど憂鬱な気持ちになる。実家に行きお姉ちゃんを探さなければならないなんて。

  英美利ちゃん宅の掃除を終えたわたしは、雪本さんにお疲れ様でしたと挨拶をして桜が舞う川沿いの桜並木をとぼとぼと歩く。

  実家には行きたくない。だって、お姉ちゃんの顔なんて見たくない。

  だけど、行くしかない。行かなければなんて薄情な子なんだとお母さんが言うに決まっているのだから。

  わたしは、荷物を部屋に一度置いてから実家に行こうと思い、川沿いの道を左に曲がりまっすぐ歩きひとり暮しのわたしのマンションに着いた。

  エレベーターに乗り三階のボタンを押して部屋に向かう。

  三階に着きエレベーターから降りると、

  うわぁーん、うわぁーん、うわぁーんとけたたましい声が聞こえてきた。

  この声は……。嫌な予感がした。
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