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お姉ちゃんと英美利

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「……お姉ちゃんが、あ、そうなの?」

「そうなのよ。お姉ちゃんが順子が昨日から帰ってこないのよ」

  電話越しにでもお母さんが不安そうな顔をしているなと想像することができる。

「でも、お姉ちゃんは大人なんだからそのうち帰ってくるでしょう?」

  わたしは濡れた手をエプロンで拭きながら話をした。

「でも……葉月も分かっているとは思うけど……順子は精神的にも不安定じゃない? 
お母さん心配でどうしたらいいのかなって、警察に連絡した方が良いかなとも考えているのよ。葉月今日家に来てよ」

「あ、えっと、うん……行けたらね。警察に連絡はちょっと大袈裟だよ」

「絶対に来てよ。近所なんだからね」

  行かなきゃ、どうせ何回も電話してくるんでしょう。そう思うと溜め息が出る。

「成田さ~ん!  何してるの?  英美利様のお部屋の掃除よ」

  と雪本さんの声が聞こえてきた。

「あ、は~い。今、行きます」と雪本さんに返事をしてそれから、「わたし今、仕事中だから」とお母さんに言って電話を切った。

 
  
  お母さんはお姉ちゃんのこととなると大袈裟なんだから。二十五歳にもなる大人のお姉ちゃんの心配ばかりして。

  学生の頃からずっとそうだった。お母さんはお姉ちゃんのことばかり考えていた。お姉ちゃんが精神的に弱いことも知ってはいるけれど。

  それでもわたしのことなんてどうでもいいのかなと思うと少し寂しく思う。けれどその分自由気ままに生活してこれたのかなとも思う。わたしはお姉ちゃんのことは好きだけどやっぱり嫌いだ。

「成田さ~ん、まだですか?」

「は~い、すみません」

  いけない考え事なんてしてる場合ではなかった。雪本さんに怒られてしまう。

  わたしは、長い廊下を急いで歩いた。

  英美利ちゃんの部屋に入るとびっくりした。

  だって、部屋の壁一面に英美利ちゃん本人の写真が貼られていてベッドの上には可愛らしいクマのぬいるぐみがたくさん飾られ床には高級そうな服が散乱していた。

  これは……。
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