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十二月二十五日のクリスマスの誕生日は幸せで最悪だった

最悪なゴングの鐘が鳴る二人の誕生日

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 お兄さんと学校でのことなどを話しているとドアベルがカランカランと鳴った。その音に振り返ると美衣佐が薔薇の花のような微笑みを浮かべ立っていた。

  その美衣佐のファッションは白地に真っ赤な薔薇が舞うブラウスに黒のミニスカートを履いていた。あまりに美しくて思わずじっと眺めてしまった。

「当近さん十六歳のお誕生日おめでとう」

   美衣佐はそう言いながらわたしの目の前に腰を下ろした。

「美衣佐ちゃんも十六歳のお誕生日おめでとう」

  わたし達はお互いの誕生日を祝い合う言葉を言い合った。

  それからしばらくすると、店長さんが料理を運んで来た。海老ドリアにナポリタンパスタ、ピザ、サンドイッチ、それから飲み物などがテーブルに並べられた。

「わっ、美味しそう」とわたしと美衣佐はほぼ同時に声を上げた。

「美衣佐ちゃん、海代ちゃんお誕生日おめでとう。ゆっくり食べてね」

「ありがとうございます」
「美間さん、ありがとう」

  わたしと美衣佐はお礼を言いにっこりと微笑みを浮かべた。

「では、美衣佐と当近さんの十六歳の誕生日パーティーを開催します」

  お兄さんが立ち上がり誕生日会開催の挨拶をした。

  わたしと美衣佐はパチパチと拍手をする。

「では、先ずはジュースで乾杯をするよ」

  お兄さんがそう言ったのでわたしと美衣佐はグラスに注がれたオレンジジュースを手に取った。

「はい、では、二人の十六歳の誕生日に乾杯」

「ありがとう。乾杯~」
「乾杯~」

  わたし達三人はカチンとグラスをぶつけ合う。こんな誕生日は初めてかもしれない。

  その後は料理を食べながら会話を楽しんだ。美衣佐の幼少期のことなど冗談を交えながら話してくれた。

「え?  わたし、クマのぬいぐるみを持ち歩いていたかな?」
「美衣佐、持ち歩いていたぞ」

  お兄さんはクスクスと笑いながら話した。

  クマのぬいぐると美衣佐はとても可愛らしい組み合わせだなとわたしは思った。



  楽しい会話が続き今年の誕生日が一番楽しいかもしれないと思った。だって、いつもの誕生日はクリスマスのついでだったのだから。それが今年の誕生日はわたしと美衣佐が主役なのだ。

「ジャーン!  当近さんと美衣佐へ俺からのお揃いのプレゼントだよ」

  お兄さんにお礼を言って包みを開けると中から黒地に薔薇柄のトレーナーとクマのぬいぐるみが出てきた。

「可愛らしい。お兄さんありがとうございます」
「お兄ちゃん、ありがとう。大事にするね」

  わたし達はお兄さんにお礼を言って頬を緩めた。美衣佐も幸せそうな表情なのでわたしは嬉しくなった。

  そして、美衣佐とお互いの誕生日プレゼントを交換し合った。

  美衣佐がわたしにくれたプレゼントはクマ柄が可愛らしいペンケースとクマ柄のペンダントだった。美衣佐のクマ好きはどうやら今も続いているようだ。

  わたしが美衣佐にプレゼントしたのは、薔薇柄のペンケースと薔薇のキーホルダーだった。

「ありがとう、めちゃくちゃ可愛らしいね」とお互いに喜び合った。

  お兄さんへは紺のシンプルなハンドタオルをわたしはプレゼントした。美衣佐はボールペンをプレゼントした。

  今日は本当に楽しい誕生日だったなと思っていたその時、美衣佐が「当近さんもう一つプレゼントがあるよ」と言った。

  これがまさか最悪なゴングの鐘だということに、この時のわたしはまだ気づいていなかった。
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