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美衣佐がわからない

何事もなかったかのように

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  翌日、美衣佐と顔を合わすのが気まずいなと思いながら登校した。

  引き戸をガラガラと開け教室に入ると美衣佐はすでに席に座っていた。すると、わたしがおはようと挨拶をする前に美衣佐の方から「当近さん、おはよう」と挨拶をしてきた。

  なんだか拍子抜けだった。

「おはよう美衣佐ちゃん」と返すわたしに美衣佐は「はい、交換日記だよ」と言いながら差し出した。

「あ、ありがとう」とわたしは交換日記を受け取る。昨日の出来事は夢の中のことだったのかなと思うほど刺々しさも皆無だった。

  そして、「当近さん昨日はごめんね」と謝ってきた。わたしはびっくりして目を丸くした。

「えっと、その……気にしてないから大丈夫だよ」と返事をするのが精一杯だった。

「真紀ちゃんに交換日記を見せるつもりなんてないからね」

  美衣佐は艶やかな薔薇の花のような微笑みを浮かべた。

「そっか、良かった」

  わたしも笑顔を浮かべた。

  昨日はあれからお兄さんが美衣佐に何か言ってくれたのだろうか。それとも美衣佐にとっては大した出来事ではなかったのかな。その答えはわからないけれど、美衣佐の笑顔を見ることができてわたしは嬉しかった。

  わたしは、美衣佐から受け取った交換日記を通学カバンの中へ丁寧に仕舞う。


  学校から帰ると、「ただいま~」と玄関の扉を勢いよく開けて家に入る。返事はないので誰もいないようだ。

  わたしは、ドタバタと階段を駆け上がる。二階の自室に入るとさっそく交換日記を通学カバンから取り出す。

  そして、制服のまま勉強机に交換日記を広げ読んだ。

  当近さん、こんばんは。

  今日はごめんなさい。わたし、ちょっと意地悪なことをしてしまったかもしれないです。許してね……。

  真紀ちゃんに交換日記を見せるつもりはなかったんだよ。あれは冗談で言ったのだけど、当近さんが怒り悪いことをしたと反省しています。本当にごめんね。

  それから、わたし楽しいことを思いつきました。それはね……。

  ジャーン!!  わたしと当近さんの誕生日パーティーをニコニコカフェで十二月二十五日に開催したいなと思っているだよ。

  あ、クリスマスパーティーと言ってもわたしと当近さんとお兄ちゃんだけかなです。

  当近さん、ねえ、誕生日パーティーに参加してくれるかな?  

  当近さんと誕生日パーティーができることを楽しみにしてるよ。だって、わたしと当近さんは誕生日が同じ十二月二十五日なのだから運命を感じるよ。

   良い返事を待っています。

  美衣佐より。

  わたしは、美衣佐からの交換日記を読み終えた。

  そうだった、美衣佐と誕生日が同じだったことを思い出し頬が緩んだ。しかも誕生日パーティーを企画してくれたなんて嬉しすぎて交換日記をギュッと抱きしめた。


  わたしは、もちろん美衣佐からの誕生日パーティーのお誘いを快く受けた。

「美衣佐ちゃん、誕生日パーティーを企画してくれてありがとう。わたし誕生日パーティーに参加するよ」

  と言いながらわたしは交換日記を美衣佐に差し出した。美衣佐はにっこりと微笑みを浮かべ「当近さんありがとう」ととびっきりの笑顔を浮かべた。

  美衣佐はわたしから受け取った交換日記を通学カバンに詰め込んだ。もちろん交換日記の返事は『誕生日パーティーに誘ってくれてありがとう是非参加したいです』と書いたのだ。

  美衣佐の気持ちがよくわからなくて色々考えてしまったけれど、考えすぎだったのかもしれない。
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