ねえ当近さんちょっとレトロだけどわたしと交換日記をしない?

なかじまあゆこ

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美衣佐がわからない

もうわからない

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「え?  そうなの……二人とも喧嘩なんてしちゃダメだよ」

  美衣佐は自分には関係ないよと言った感じで笑う。

「喧嘩なんてしてないよ。当近さんが酷いんだからね」

  それはこっちのセリフだよと言いたくなるのをわたしはぐっと堪える。

「もう、一体どうしたの?  真紀ちゃん落ち着いてよ」
「だって、そのノートをちょっと見ようとしただけなんだよ」

  三竹さんはそう言ってわたしが取り返しぎゅっと抱えているいちご柄の交換日記を指差す。

「えっ!」

  美衣佐は三竹さんが指差したわたしがぎゅっとしてるいちご柄の交換日記に目を向け目を大きく見開いた。

「美衣佐ちゃんどうしたの?」

  驚いた様子の美衣佐に三竹さんは首を傾げている。

「そのノートを見ようとしたんだね……」

  美衣佐は交換日記と三竹さんの顔を交互に見て尋ねた。

「うん、そうだよ。美衣佐ちゃんそのノート見たことあるの?」

「あ、うん。わたしそのノートを使って当近さんと交換日記をしてるんだ」

  美衣佐は口角をきゅっと上げ楽しそうに笑う。美衣佐のその表情はわたしが三竹さんに足を踏まれたあの時と同じだ。

  美衣佐どうして笑っているの?  この交換日記を三竹さんに読まれても構わないのかな。それとも三竹さんに見せたことがあるのかな。わたしは交換日記をぎゅっと抱え美衣佐の顔をチラリと見た。

「へっ!?  美衣佐ちゃん、当近さんと交換日記をしてるの?」

  三竹さんは素っ頓狂な声を上げた。

  わたしと美衣佐が交換日記をしていたことを三竹さんはどうやら知らなかったようだ。

「うん、当近さんと隣の席になった記念に交換日記をしてるんだよ」

  美衣佐は歌を歌うように言った。

「隣の席になった記念にね……へぇ~そうなんだ」

  三竹さんは納得のいかない顔をしている。

「うん、そうだよ。ねっ、当近さん。わたしが隣の席になった記念に交換日記をしようってお願いしたんだよね」

  そう言って美衣佐はわたしの顔を見てニコッと笑った。その笑顔はまるで天使のようで可愛らしかった。

「あ、うん、そうだね……」とわたしは返事をした。けれど、どうしてそんな可愛らしい笑顔をわたしに向けるのかな。

「へぇ~ふぅ~ん、当近さんと美衣佐ちゃんは仲良しなんだね……」

  三竹さんは気にくわない声を出した。

  わたし達三人の間にずーんと重たくて異様な空気が流れた。わたし達はしばらく黙っていた。

  その異様な空気が流れる沈黙を破ったのは美衣佐だった。

「当近さん、わたし達仲良しだよね」
「あ、うん、そうだね……」

  わたしは答えながら本当に仲良しだったらどれだけ嬉しいことかと思った。

「ふ~ん、美衣佐ちゃんと当近さんは仲良しか……へぇ~」

  三竹さんはわたしをじーっと観察するように眺めた。その目はどうしてこんな子と美衣佐が仲良しなのよと思っているように見えた。

  わたしだって美衣佐がどうして良くしてくれるのか不思議でたまらないんだからね。こんなわたしなんかと……。

  それに美衣佐はわたしを友達と思っているのかそれさえもよくわからない。

「ねっ、二人ともわたしと仲良しってことでいいじゃない?」

  美衣佐は問題が解決したかのように笑っている。

  そんな美衣佐のことがなんだか嫌になった。わたしは、美衣佐に振り回されている。そんな気がする。

  美衣佐の笑顔も悲しそうな顔も何もかも作りもので、それは表情がコロコロ変わるお人形みたいだ。美衣佐に対する信頼感が、呆気なくガラガラガラガラと音を立てて壊れてしまいそうになる。

「じゃあ、その交換日記わたしに見せてよ」

  三竹さんがふふっと笑い今もわたしがぎゅっと抱えてる交換日記を見てくる。

「え!  それはちょっと困るな……あ、でもどうしようかな?」

  美衣佐はそう言ってわたしの顔を試すような目で見てくる。一体どういうつもりなのかな。わたしに何て答えてほしいの。

「美衣佐ちゃん、迷っているんだったら見せてよ」

  三竹さんは意地悪く笑う。

「う~ん、でもね、わたしと当近さんの交換日記だからね……」

  美衣佐は困ったように眉間に皺を寄せているけれど、なんだか楽しんでいるようにも見える。

  この二人を見ていると無性に腹が立ってきた。

「じゃあ、当近さんに頼んでみようかな~」
「頼んでみたら……」

  やっぱり絶対に頭に来る!!  何が頼んでみようかなだよ、頼んでみたらだよ。わたしは唇をぎゅっと噛み美衣佐と三竹さんを睨み付けた。

「え?  当近さん怖い顔してどうしたの?」

  美衣佐は大きな目を更に大きく見開きびっくりした表情でわたしを見る。

  このびっくりした表情ももしかしたら演技なのだろうか。もう、美衣佐のことがよくわからない。いやいやまったくわからない。

  一方、三竹さんは、何なのこの子って感じの顔でわたしを見ている。

  わたしの怒りは頂点に達した。堪忍袋の緒がプツンと切れた感じだ。

「ねえ、二人ともいい加減にしてくれない!!」

  わたしは、声を張り上げてしまった。
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