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美衣佐がわからない
お兄さんに
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「えへへ、来てしまいました」
「また、来てくれて嬉しいですよ。美間さんも喜ぶよ。お好きな席にどうぞ」
お兄さんはにっこりと微笑みを浮かべわたしの顔を見た。その優しい笑顔にわたしはほっとした。
今回もわたしはカウンター席に腰を下ろした。店内にはお客さんが五人ほどいた。
お兄さんがわたしの目の前に水の注がれたグラスとメニュー表を置いた。
そして。
「あの、当近さん……ちょっと言いにくいんだけど」
「え? どうしたんですか?」
わたしはお兄さんを見上げ尋ねた。
「もしかして泣いてるの? 何かあったのかな大丈夫?」
お兄さんは心配そうに眉間に皺を寄せている。
「泣いてるってまさかわたしが……」
わたしは言いながら自分の頬に手をふれた。すると頬から温かい涙が伝っていた。わたしは慌てて手の甲で流れていた涙を拭う。
「何かあったの?」
「……そ、それはその……」
お兄さんに美衣佐のことを相談したいけれど、なんて話したらいいのかわからない。だって、お兄さんの妹である美衣佐のことであるから尚更だ。
「もしかしたら美衣佐が原因かな?」
「あ、えっとそれは……」
お兄さんはめちゃくちゃ鋭いのだ。
「あ、違っていたらごめんね」
「違ってはいないのですが……」
「やっぱり美衣佐のことなんだね」
お兄さんはちょっと困ったように顔を歪めた。
お兄さんがじっとわたしの顔を見ている。わたしは、そのお兄さんの目を見る。
「は、はい……」とわたしは小さな声で返事をした。
「当近さんちょっと待ってて」
お兄さんはそう言ったかと思うと奥のキッチンに向かった。そして、店長さんに何やら話をしているようだ。
わたしは、メニュー表を広げた。眺めているだけで美味しそうな写真にヨダレが垂れてしまいそうになる。
パンケーキ、グラタン、パフェにケーキ、落ち込んでいたのにその写真を眺めているとちょっと元気になり食欲が湧いてきた。
「当近さん」
メニュー表を眺めわくわくしていたわたしの背中にお兄さんが声を掛けた。
「はい、何ですか?」
わたしは振り向き返事をする。
「美間さんに休憩をもらったよ。良かったら話を聞くよ」
お兄さんは柔らかい微笑みを浮かべた。
「お、お願いします」と思わず答えてしまった。
「あ、そうだ、まだ注文を聞いてなかったね」
「では、ダージリンティにカスタードクリームと生クリームのシュークリームをお願いします」とわたしは言った。
今日は敢えてイチゴが入っていないシュークリームを選んだ。
「う~ん、カスタードクリームと生クリームがたっぷり入っていて美味しいです」
わたしは、カスタードクリームと生クリームのシュークリームを頬張りながら感嘆の声を上げた。濃厚なカスタードクリームと生クリームがたっぷり入っていて贅沢でめちゃくちゃ美味しかった。
「うん、美味しいね」
お兄さんも大きな口を開けてカスタードクリームと生クリームのシュークリームをガツガツと食べている。
そして、今回もあっという間に食べきってしまいお皿が空っぽになっていた。その食べっぷりにわたしはクスッと笑ってしまった。
「美味しいから一気に食べきってしまったよ。当近さんは味わってゆっくり食べるタイプかな?」
お兄さんはちょっと照れたように笑った。
「美味しいものを食べると元気になれますね。お兄さんみたいに一気に食べるのもいいなと思いますよ。わたしはどっちかと言うと味わって食べる方かな?」
わたしはそう答えカスタードクリームと生クリームのシュークリームをもう一口食べた。落ち込んでいた気持ちがどんどん解れていく。
「当近さん、美衣佐の話に戻るけど……アイツ当近さんに失礼なことをしたのかな?」
お兄さんの表情は真面目になった。
「それは……失礼なことと言うかシャープペンをわたしの方にわざと落としたんです」
「ん? 美衣佐がシャープペンをわざと落とした?」
「あ、ごめんなさい。何を言っているのかわからないですよね」
わたしは、ぺこっと軽く頭を下げ、先程教室で聞いてしまった美衣佐と三竹さんの会話を話した。
お兄さんは驚いた顔をした。それからうんうんと頷き口を挟まずわたしの話を聞いてくれた。
「また、来てくれて嬉しいですよ。美間さんも喜ぶよ。お好きな席にどうぞ」
お兄さんはにっこりと微笑みを浮かべわたしの顔を見た。その優しい笑顔にわたしはほっとした。
今回もわたしはカウンター席に腰を下ろした。店内にはお客さんが五人ほどいた。
お兄さんがわたしの目の前に水の注がれたグラスとメニュー表を置いた。
そして。
「あの、当近さん……ちょっと言いにくいんだけど」
「え? どうしたんですか?」
わたしはお兄さんを見上げ尋ねた。
「もしかして泣いてるの? 何かあったのかな大丈夫?」
お兄さんは心配そうに眉間に皺を寄せている。
「泣いてるってまさかわたしが……」
わたしは言いながら自分の頬に手をふれた。すると頬から温かい涙が伝っていた。わたしは慌てて手の甲で流れていた涙を拭う。
「何かあったの?」
「……そ、それはその……」
お兄さんに美衣佐のことを相談したいけれど、なんて話したらいいのかわからない。だって、お兄さんの妹である美衣佐のことであるから尚更だ。
「もしかしたら美衣佐が原因かな?」
「あ、えっとそれは……」
お兄さんはめちゃくちゃ鋭いのだ。
「あ、違っていたらごめんね」
「違ってはいないのですが……」
「やっぱり美衣佐のことなんだね」
お兄さんはちょっと困ったように顔を歪めた。
お兄さんがじっとわたしの顔を見ている。わたしは、そのお兄さんの目を見る。
「は、はい……」とわたしは小さな声で返事をした。
「当近さんちょっと待ってて」
お兄さんはそう言ったかと思うと奥のキッチンに向かった。そして、店長さんに何やら話をしているようだ。
わたしは、メニュー表を広げた。眺めているだけで美味しそうな写真にヨダレが垂れてしまいそうになる。
パンケーキ、グラタン、パフェにケーキ、落ち込んでいたのにその写真を眺めているとちょっと元気になり食欲が湧いてきた。
「当近さん」
メニュー表を眺めわくわくしていたわたしの背中にお兄さんが声を掛けた。
「はい、何ですか?」
わたしは振り向き返事をする。
「美間さんに休憩をもらったよ。良かったら話を聞くよ」
お兄さんは柔らかい微笑みを浮かべた。
「お、お願いします」と思わず答えてしまった。
「あ、そうだ、まだ注文を聞いてなかったね」
「では、ダージリンティにカスタードクリームと生クリームのシュークリームをお願いします」とわたしは言った。
今日は敢えてイチゴが入っていないシュークリームを選んだ。
「う~ん、カスタードクリームと生クリームがたっぷり入っていて美味しいです」
わたしは、カスタードクリームと生クリームのシュークリームを頬張りながら感嘆の声を上げた。濃厚なカスタードクリームと生クリームがたっぷり入っていて贅沢でめちゃくちゃ美味しかった。
「うん、美味しいね」
お兄さんも大きな口を開けてカスタードクリームと生クリームのシュークリームをガツガツと食べている。
そして、今回もあっという間に食べきってしまいお皿が空っぽになっていた。その食べっぷりにわたしはクスッと笑ってしまった。
「美味しいから一気に食べきってしまったよ。当近さんは味わってゆっくり食べるタイプかな?」
お兄さんはちょっと照れたように笑った。
「美味しいものを食べると元気になれますね。お兄さんみたいに一気に食べるのもいいなと思いますよ。わたしはどっちかと言うと味わって食べる方かな?」
わたしはそう答えカスタードクリームと生クリームのシュークリームをもう一口食べた。落ち込んでいた気持ちがどんどん解れていく。
「当近さん、美衣佐の話に戻るけど……アイツ当近さんに失礼なことをしたのかな?」
お兄さんの表情は真面目になった。
「それは……失礼なことと言うかシャープペンをわたしの方にわざと落としたんです」
「ん? 美衣佐がシャープペンをわざと落とした?」
「あ、ごめんなさい。何を言っているのかわからないですよね」
わたしは、ぺこっと軽く頭を下げ、先程教室で聞いてしまった美衣佐と三竹さんの会話を話した。
お兄さんは驚いた顔をした。それからうんうんと頷き口を挟まずわたしの話を聞いてくれた。
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