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アルバイトと美衣佐とわたしの家

明かりが消えた

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「じゃあ、わたしそろそろ帰ろうかな」と紅茶も飲み干した美衣佐は立ち上がった。

「美衣佐ちゃん、また来てね」
「うん、またお招きしてね」

  美衣佐は玄関の三和土で靴を履きながら顔を上げてニコッと笑った。

 「今日は来てくれてありがとう」
「うふふ、当近さん楽しかった~。ありがとう。じゃあ、明日学校でね」

  と言って美衣佐が玄関を開けようとしたその時、ガチャと先に扉が開いた。

「あ、お友達!?」

  入ってきたのはお姉ちゃんだった。美衣佐が立っていたのでお姉ちゃんはびっくりしたようだ。

「お邪魔してました。牧内美衣佐です。当近さんのお姉さんですか?」

  美衣佐はお姉ちゃんに挨拶をした。

「海代のお友達ね。はい、姉の綾代です」

 お姉ちゃんも笑顔で挨拶をした。

「当近さんにはいつも仲良くしてもらっています」

「こちらこそ、海代と仲良くしてくれてありがとうね」

  美衣佐とお姉ちゃんの交わす会話をわたしはぼんやりと眺めていた。

  そして、美しくて可憐な美衣佐は帰った。家の中に灯っていた華やかな明かりが消えたそんな気がした。

  美衣佐が帰ったあとお姉ちゃんは「あの子が海代ちゃんの話していた美衣佐ちゃんね。しっかりした子でめちゃくちゃ美人だね」と言った。

  わたしは美衣佐が褒められまるで自分のことのように嬉しくなった。


  わたしはペンを握る。目の前には花瓶に挿した真っ赤な薔薇の花が飾られている。ふわふわすべすべで猫の毛のような肌触りのよい交換日記の表紙に手を触れる。

  そして、ゆっくり交換日記のページを開く。

美衣佐ちゃんヘ。

  こんばんは。今日は家に遊びに来てくれてありがとう。楽しい時間を過ごすことができました。

  美衣佐ちゃんに貰った薔薇の花を花瓶に挿して飾っているよ。今、目の前にあってとても綺麗だよ。存在感がめちゃくちゃある! 
 ありがとう。しばらく癒され目の保養になるよ。

  まさか薔薇をプレゼントしてくれるなんて思っていなかったよ。ちょっとびっくりした嬉しい驚きです。

  それと、生クリームがたっぷりなイチゴのシュークリームも美味しかったね。あのイチゴのシュークリームこの前お兄さんのアルバイト先のカフェでも食べました。お兄さんと美衣佐ちゃんは兄妹だから好きな食べ物もそっくりなのかな。

  お兄さんもぱくぱく美味しそうに食べていたよ。

  わたしのお母さんが買ってきたイチゴのケーキも美味しかったでしょう?  なんだかイチゴ尽くしになったね。

  他にも色々書きたいことはあるけれど……。

  あ、そうそうお姉ちゃんが美衣佐ちゃんのことを『しっかりした子で美人だね』と言って褒めていたよ。わたしなんだか嬉しくなってしまった。

  また、遊びに来てね。

  当近海代より。

  わたしは、美衣佐への交換日記を書いた。ペンを机に置き花瓶に挿した薔薇をじっと眺めた。薔薇は美衣佐のみたいに美しく鮮やかに輝いていた。
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