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アルバイトと美衣佐とわたしの家
美衣佐が家にやって来る
しおりを挟む今日は日曜日だ。美衣佐が家にやって来る。
お母さんは、「海代ちゃんのお友達が来るのね」と言って朝からそわそわしている。大袈裟なんだから。
「ねえ、海代ちゃんお菓子はケーキがいいかしら? それともお饅頭かな? あら、お饅頭は古風すぎるかな? それともドーナツがいいかしら」
「なんでもいいんじゃない? ポテチとかでもかまわないよ」
なんて返事をしながらわたしは美衣佐にはケーキが似合うなと思った。この椅子に座り優雅にケーキを食べる美衣佐の姿を思い浮かべ絵になるなとうっとりした。
うふふ、テーブルに薔薇の花なんて飾るとそれこそ映画の中のワーンシーンのようで素敵すぎるよ。と、ここまで考えたところで、美衣佐に薔薇の花や豪邸なんて必要ないのに……。
わたしは、美衣佐の外見ばかり見ているのだろうか。これでは、三竹さんと変わらない。ううん、それ以下だよ。なんか最低だ。
「海代ちゃんどうしたの? お母さんちょっと買い物に行って来るわね」
お母さんは、わたしの顔を覗き込み財布を手に取り買い物に行った。そんなお母さんの後ろ姿を眺めながらわたしは贅沢だよねと感じた。
お姉ちゃんと比較されてもわたしは愛されているのではないか。どうして、何かが足りないなんて考えてしまうのかな。わたしは、幸せだよね。
自分の心に問いかけてみるけれど、答えは返ってこなかった。
昼食を食べ終えたわたしは、部屋の中を行ったり来たりしていた。あと三時間で美衣佐が家にやって来る。ああ、嬉しくて頬が緩んでしまう。
友達が家に遊びに来るのなんて小学生以来だ。だから、お母さんも張り切っているのだろう。わたしは、もう高校生だというのに。
昼食はお母さんと二人で食べた。お父さんとお姉ちゃんは外出中だ。「お菓子はケーキにしたわよ」なんて言ってお母さんは口元を緩めている。
「お母さん、ありがとう」
「えっ? 海代ちゃんどうしたの?」
お母さんは目を丸くしてわたしの顔を見た。
「うん、わたしの友達の為にケーキを用意してくれて嬉しくて……」
「あら、そうなの。海代ちゃんの友達が来るからお菓子くらい出してあげたいなと思っただけよ」
お母さんは楽しそうにうふふと笑った。
今わたしは、自室でお母さんの優しい笑顔を思い出しながら美衣佐がやって来るのを心待にしている。そういえば美衣佐のアパートには両親がいなかったけれど、出かけていたのかなとふと思った。
机の上に置いてあるいちご柄の交換日記に目をやる。このノートに美衣佐とわたしの様々な想いが詰まっている。
わたしは、机の前に行き交換日記にそっと、手を触れる。
ふわふわしていて猫を撫でているような手触りで心地好いな。中身はちょっと複雑な内容ではあるけれど。
その時、ピンポーンとチャイムが鳴った。あ、美衣佐がやって来たのかな。壁の時計に目をやると午後の三時を指していた。
いつの間にか約束の時間になっている。
わたしは、交換日記から手を離し一階へとドタバタと駈け下りる。美衣佐が家にやって来た。
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