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アルバイトと美衣佐とわたしの家
どうして
しおりを挟む三竹さんがわたしの足をぎゃっぎゅっぐりぐりーぐりーっと踏んでいるではないか。
「あの、足を……踏んでるんだけど」
わたしは顔を上げて三竹さんの顔を見た。
「あ、当近さんごめんね~シャープペン拾っていたらなぜか足を踏んでいたよ」
三竹さんは踏んでいた足をサッと退け顔の前で手を合わせ謝った。けれど、これは絶対にわざとだ。
だって、ぎゅぎゅっぐりぐりーぐりーっと足を踏まれたのだから。これは明らかに悪意があると思う。
「あ、そうなんだね。シャープペンをね……」
「本当にごめんね。痛かったよね」
三竹さんは綺麗に整った顔を歪めわたしの顔を見る。
「大丈夫だよ。気にしないでね……」と言ったものの本当はどうしてわたしの足を踏んだのよと聞きたい。
「ごめんね。あ、もうすぐホームルームが始まる。じゃあね」
三竹さんは、逃げるように自分の席に戻る。因みに三竹さんの席は窓際の一番前の席だ。
わたしは三竹さんの艶々サラサラの揺れる髪をじっと、眺めた。そして、ちらっと美衣佐に視線を移すと……。美衣佐は。
わたしは、えっ!? と声が出そうになるのを堪え美衣佐の顔をじっと見る。
その顔は口角がキュッと上がり楽しそうだ。わたしが三竹さんに足を踏まれたことは知っているはずなのにどうしてそんな顔をしているの。
そう心の中で呟いていると、美衣佐がこちらを向いた。
「当近さん大丈夫? 真紀ちゃんに足を踏まれたんだよね」
美衣佐は眉間に皺を寄せ心配そうにわたしの顔を見る。あの楽しそうに見えた顔は気のせいだったのだろうか。
「あ、うん。大丈夫だよ……」
わたしはぎこちなく笑った。
「もう、真紀ちゃんってばおっちょこちょいでせっかちな子なんだから。困っちゃうね。痛かったよね」
美衣佐はそう言いながら窓際の一番前の席に座る三竹さんに視線を向けた。
「うん、ちょっと力強く踏まれたから痛かったけど大丈夫だよ」
わたしはそう答え笑ってみせた。
足も痛かったけれど、その痛みよりも三竹さんがどうしてわたしの足を踏んだのか気になった。そして、何よりも美衣佐の一瞬見せた楽しそうな表情が気になった。
この日の授業は集中することができなかった。隣の席の美衣佐と三竹さんのことが気になって仕方がなかったのだ。
ちらりと盗み見た美衣佐の横顔はとても綺麗だった。まるで映画のスクリーン画面を見ている感覚に陥る。
美衣佐は今何を考えているのだろうか。
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