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美衣佐の家

美衣佐の家は

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 それから数日後の秋晴れの日曜日。今日は美衣佐の家に遊びに行く約束の日だ。

 あの日、美衣佐の家に遊びに行きたいと書いた交換日記を渡すと美衣佐はとても喜んでいた。

 返ってきた交換日記には『当近さん、ありがとう嬉しいよ。是非我が家へお越しください』と美衣佐の丸っこく可愛らしい文字で書かれていた。

 美衣佐は果たしてどんな家に住んでいるのだろうか。薔薇の花が似合う豪邸に住んでいるかもね。

 庭には薔薇が咲き乱れリビングは吹き抜けになっていたりしてね。それはさすがにないか。

 それとも真っ赤な三角屋根が可愛らしいカフェのような家だったりして。

 わたしは妄想を膨らませ地図を片手にワクワクしながら歩いた。

 だがしかし、先ほどから美衣佐の家を探しているのだけど見つからない。

「う~ん、おかしいなこの辺りのはずなんだけどな」

 わたしはキョロキョロと辺りを見回すけれど、『牧内』と書かれた表札が見つからない。まさか、わたしを家に招待することなんて冗談だったのかなと不安になってきた。

 明日、学校へ行くと当近さん騙されたんだーと言われたりして……。ああ、もうダメだ。そんなはずはないのに不安がどんどん膨らんでいく。

 そんなことを考えながら『牧内』の表札を探していると、「当近さ~ん」とわたしを呼ぶ声が聞こえてきた。

 この声は美衣佐だ。



 わたしは振り返る。すると、そこには……。

 裾にフリルがあしらわれたクラシカルな黒のワンピースに身を包み、髪はサラサラのストレートヘアを真っ直ぐ下ろし、頬にはピンクのチークがふんわりとのせられもうお人形さんのように見える美衣佐が立っていたのだ。

「美衣佐ちゃん!」

「もう当近さんってば約束の時間になっても来ないから道に迷っているのかな? と思って家から出てきたよ」

 美衣佐はそう言って薔薇のような微笑みを浮かべた。

 わたしは制服姿よりも一段と美しい美衣佐のその姿に見惚れてしまった。

「当近さんどうしたの?」

 美衣佐は首を横に傾げ不思議そうにわたしの顔を見ている。

「あ、えっと、美衣佐ちゃんがお人形さんみたいで可愛らしいなと思って」

「えっ? お人形さんみたいって、あはは、やだ、ありがとう。嬉しいな」

 美衣佐はピンク色に染まった頬に手を当てて笑った。その美衣佐は動くお人形さんのように美しくて可愛らしかった。

 それはそうと美衣佐は家から出てきたと言うのだけど何処なのだろうか。
 
「わたし道に迷っていたんだけど美衣佐ちゃんの家はまだ先かな?」

 そう尋ねるわたしに美衣佐は「あら、もう到着してるよ」と答えた。

「へっ? 到着してる?」

 わたしは思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。だって、この辺りの一軒家の『牧内』の表札は確認済みだけど無かった。見落としたんだな、きっと。

「当近さんってばなんて声を出してるのよ」

 美衣佐は口元に手を当ててクスクスと笑う。そして、「我が家へようこそ」と言って両手を広げ満面の笑みを浮かべた。

「へっ! へっ? 我が家へって……」

 わたしはまたまた素っ頓狂な声を上げてしまった。だって、有り得ないし信じられなかった。

「もう、当近さんってば本当にどうしたの?」

 美衣佐はわたしの顔を覗き込む。

「だって、ここってアパートだよね?」

「うん、そうだよ。わたしの家はこのアパートの二階だよ。あ、ごめん、地図に二階だって書いてなかったね」

 美衣佐はそう言って手を合わせて謝るけれど、いやいやそう言った問題ではないのだ。
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