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怪しげな視線
わたしと美衣佐
しおりを挟む翌朝。この日は爽やかな秋晴れだった。教室に足を踏み入れると美衣佐はわたしの隣の自分の席に座っていた。
「おはよう美衣佐ちゃん」
「あ、おはよう~当近さん」
美衣佐はカバーのかけられた文庫本から顔を上げ鮮やかな笑みを浮かべた。
わたしは、通学カバンから取り出した交換日記を美衣佐に差し出しながら「美衣佐ちゃんはアルバイトをしているんだよね。いいな。羨ましい~」と言った。
昨夜交換日記にもアルバイト羨ましいなとかわたしもアルバイトしてみたいなと書いた。
「えっ? アルバイト羨ましいかな……」
美衣佐は交換日記を受け取り通学カバンに仕舞いながら微かに笑う。
「うん、わたしもアルバイトしてみたいなって思っていたもん」
わたしは笑顔で答える。
「そっか、当近さんはどうしてアルバイトをやってみたいと思ったの?」
美衣佐はわたしの目を真っ直ぐ見て聞いた。なんだかその表情は真面目だった。
「えっと、それは好きなものを自分の稼いだお金で買えるでしょう。なんだか一歩大人に近づいた気分になれるかなと思ったんだよ」
わたしはカフェやファストフード店にそれから書店などで働き接客している自分の姿を思い浮かべてみた。
楽しそうではあるけれど、わたしは人見知りをするので裏方さんの方が合っているかもしれないなと思った。
そんなことを考えていると、美衣佐は「そっか……」と呟いた。
その美衣佐の表情に陰りが見えたような気がした。
放課後、通学カバンに教科書や筆記用具を仕舞っていると、美衣佐が「当近さん、じゃあ、また明日ね」とわたしに手を振りパタパタと教室の扉へ向かう。
「美衣佐ちゃん、また明日」とわたしは美衣佐の背中に声をかける。美衣佐はこちらに振り向きもう一度手を振り踵を返し教室から出て行く。
かなり急いでいるようだ。この後アルバイトにでも行くのかなと思いながらわたしは、美衣佐が出て行った扉を眺めた。
通学カバンを肩に掛けわたしも本気でアルバイトを探してみようかなと考えた。
校舎を出て家路に向かう。空を見上げるとオレンジ色の夕焼け空がとても綺麗でビルや建物がオレンジ色に染まっている。
わたしは商業施設やカフェや本屋などがある駅前近くにある高校に徒歩で通っている。家から学校が近いので朝寝坊しても間に合うのが嬉しい。
高校生になり半年ほど経った。友達なんていらないかなと思っていたけれど、美衣佐と出会えた。
そんなことを考えながら歩いていると、ふと、怪しげな視線を感じた。気のせいだよね。そう思おうとしたけどやっぱり視線を感じる。
誰かに見られているような気がする。
わたしは、後ろを振り返った。
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