ねえ当近さんちょっとレトロだけどわたしと交換日記をしない?

なかじまあゆこ

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ねえ当近さんわたしと交換日記をしない?

楽しみな交換日記

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「えっと、その……みい、あ、牧内まきうちさんが」とわたしは焦りながら答える。

「あ、わたしが……それはありがとう」
「ううん、なんか綺麗で可愛くて少女マンガに出てくる女の子みたいだね」
「あはは、大袈裟な。そんなわけないでしょう」

 美衣佐の表情は変わらずだ。特に嬉しそうな顔はしない。少女マンガに出てくる女の子みたいだと言われても嬉しくないのかな。でも、自分が美人だということはわかっているようだ。

「当近さんも可愛いじゃない。目が大きくてくりんとしてるもんね」

 美衣佐はそう言って大輪の薔薇のような華やかで存在感のある笑みを浮かべた。

「あ、ありがとう……」

 美衣佐にそう言われても……。

 
 気づくと水色の海のような空は美しいオレンジ色になっていた。

 さあ、早く帰って交換日記を読もう。

「ただいま~」とわたしは玄関の扉を開けて言った。返事がないので、誰もいないようだ。

 わたしは二階の自分の部屋にドタバタと駆け上がり制服も着替えず勉強机の上にノートを置く。

 もちろんこのノートは『交換日記』だ。表紙はふわふわしていて猫を撫でているような手触りだった。柄はいちご柄で可愛くて女の子らしい。

 このノートでこれから美衣佐と交換日記を始めるんだなと思うとわくわくドキドキする。ノートの中に書かれている内容が気になって仕方がないのにわたしはしばらくの間表紙をじっと眺めていた。

 そして、思い切ってノートを開く。

 ノートの中もいちご柄が描かれていて可愛らしかった。美衣佐は薔薇のイメージあるのだけれど案外ラブリー柄が好きなのかもしれない。人は見かけによらぬものと言うものね。

 ノートに書かれている美衣佐の文字も丸っこくて可愛らしかった。

『当近さん交換日記楽しみだね』と書かれていた。

 こんにちは、当近さん、牧内美衣佐です。うふふ、自己紹介なんてしてしまいました。

 これから交換日記を通して言いたいことを話していこうね。


 当近さんもご存じの通り高校一年生。誕生日がまだなので十五歳です(因みに誕生日は十二月二十五日クリスマス生まれだよ)

 えっ? 十二月二十五日のクリスマスとはびっくりした。だって、わたしも十二月二十五日のクリスマス生まれなのだから。

 家族はわたしと両親にお兄ちゃん。クリスマスに生まれたものだから誕生日がクリスマスのついでみたいになってツマンナイよ。

 クリスマスプレゼントと誕生日プレゼントがまとめられて一個にされてしまうし、友達からも誕生日おめでとうって言われない。なんだかめちゃくちゃ損したーって感じです。

 しかもうちは貧乏だからプレゼントも豪華じゃないんだよね……。

 ごめんなさい、楽しい交換日記にしようと思っているのに当近さんに愚痴を言ってしまいました。でも、いいよね、これから交換日記をする友達だもんね。

 それとね、これは自慢になるけどわたしのお兄ちゃんはめちゃくちゃ美形だよ。

 好きな食べ物はカレーライスにドリアにそれから唐揚げです。今回はこの辺で。

 次は、当近さんの番だよ。わたしのことは美衣佐と呼んでね。当近さんは苗字が個性的だから当近さん呼びにしようかな。

 ではではまたね。美衣佐。

 交換日記を読み終えたわたしはしばらくの間美衣佐の丸っこくて可愛らしい文字を眺め続けた。

 すると、美衣佐がこのいちご柄の交換日記にサラサラとペンを走らせている姿が思い浮かんだ。

 誕生日も好きな食べ物も同じなんて気が合いそうだ。そうなのだ、わたしもカレーライスもドリアも唐揚げも大好きなのだ。

 美衣佐と気が合いそうで嬉しくなった。
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