異世界に召喚された俺はなぜだかゴリラに懐かれました。俺がもふもふしたいのはゴリラじゃない猫だよ(俺って最強なの?)

なかじまあゆこ

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この世界は心地よい

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 お父さんの言う通りだった。地球も素敵な場所ではあるけど、幼き頃の俺の周りにさえ悪意が満ちあふれていたのだから。

「うん、そうだね。ここは自然も豊かでそれに何よりも人や動物に獣人もみんな優しいもんね」

「それが一番だよな」

 お父さんはそう言って柔らかい笑みを浮かべた。

「うん。俺のことを考えてこの世界に居るんじゃないんだよね。お父さんもこの世界は暮らしやすくて幸せな場所になっているんだね」

 お父さんの顔を真っ直ぐ見つめながら俺は言った。

「ああ、もちろんだよ。お父さんもそれからお母さんもこの世界が大好きだぞ」

「良かった」

「俺もいるしな」とそれまで黙って中世風パンケーキを頬張っていたゴリーラが話に加わってきた。

「そうだね。まあ、ゴリーラには動物園へ行けば会えたけどさ」

「ふふん、ナオートはゴリラ好きだもんな」

「あのな何回も言うけど俺はゴリラ好きじゃないんだよ」

「ナオート照れなくても良いぞ」

「この顔が照れている顔に見えるのかよ」

 そう言って俺は口を尖らせた。

「おいおい、兄弟喧嘩は止めるんだぞ」

 お父さんはクスクス笑い俺達の顔を見る。

「兄弟喧嘩じゃな~い!」
「そうそう俺達仲良しだもんな~」
「だから違うんだよ! 俺は怒っているんだよ」
「まあまあ、ナオート照れるなよ」
「ふざけるな!」

 俺は怒りを込めてゴリーラを睨む。けれど、心のどこかでこの状況を楽しんでいる俺も存在するのは確かだ。

 ゴリラ好きじゃないのは本当のことではあるけれど、なぜだか怒りながら笑う俺なのだ。
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