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わたしと家族と座敷わらし
鞠助は眠れなかったの?
しおりを挟むおばあちゃんが焼いてくれたトーストにバターとイチゴジャムをたっぷり塗り大きな口を開けて食べる。
バターがじゅわっと染み込みイチゴジャムの甘酸っぱさと良く合いもう最高だ。
「う~ん、美味しいな」わたしはほくほく顔になる。
「そんなに食べると太りそう」
「わたしは太りにくい体質だから大丈夫だもんね」
「あっそ、それは良かったね。そんなぽわわんとした顔で食べていたら遅刻するんじゃない。おばあちゃんごちそうさま」
お姉ちゃんは椅子から立ち上がり台所から出ていく。人がせっかく美味しく食べているのにお姉ちゃんは水を差すのだから嫌になる。
「お母さんごちそうさま」と言ってお母さんも出ていく。
食卓はわたしとおばあちゃんとそれから鞠助だけになり静かになった。
「慌ただしい子達だよね」
おばあちゃんはマグカップを口に運びながら言った。
「うん、もっとゆっくり食べたらいいのにね。まあ、お姉ちゃんもお母さんも学校や職場が遠いからね」
わたしは三枚目のトーストを口に運びながら言った。
「鞠姉ちゃんは呑気過ぎるんだよ」
それまで黙っていた鞠助が言った。
「そっかな?」
「そうだよ」と答える鞠助の顔をよく見ると目の下にクマができていた。
「あ、鞠助ってば昨夜は恐怖のあまり眠れなかったのかな?」
わたしの顔をギロッと見た鞠助は「部屋に戻った途端爆睡したよ」と言った。
「そうは見えないけどな~」
だって、鞠助の顔色は青黒いし目の下には青クマができていて寝不足ですよと返事をしているんだから。
「そんなことないよ。もう爆睡だよ~」と言いながらふぁーとあくびをしているんだから可笑しくなる。
「鞠助君寝不足なのかい?」
おばあちゃんが心配そうに鞠助の顔を覗き込む。
「はぁ? おばあちゃんさっきから爆睡したって言ってるじゃないか」
鞠助は頬を膨らませた。
「そうなのかい? でも目の下に青クマができているわよ。勉強もほどほどにするんだよ」おばあちゃんは鞠助の顔をじっと見て言った
「……わ、わかったよ」
なんて頬を膨らませ鞠助は答えているけれど勉強じゃないのにね。お化けが怖かったんだよね。本当のことを言えばいいのになと思う。素直じゃないんだから。きっと、プライドが許さないのだろう。
「鞠姉ちゃん、なんか笑ってないか?」
「ううん、笑ってないよ」
「笑ってるじゃないか。頬がぴくぴくしてるよ」
「そっかな? あはは」
「笑うなよ。気にくわないぞ」
「笑ってないよ。たまにはお姉ちゃんを頼ってね」
「はぁ? 姉らしくないクセに偉そうだよ」
わたしと鞠助が言い合いをしていると、おばあちゃんが「仲良しだね」と言ってわたし達のことを目を細めて見ている。
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