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わたしと家族と座敷わらし

鞠助と座敷童子とお手玉

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「一体どうなっているんだよ。お~い、鞠姉ちゃんって居ないのかよ」

  鞠助はどうやらわたしの部屋に勝手に入り文句を言っているようだ。

  そして、廊下をドタドタと走る慌ただしい足音が聞こえてきたかと思うとナオカちゃんの部屋の引き戸がガラガラと開いた。

「あ、鞠姉ちゃんやっぱりここに居た」と ビニール袋を手に持った鞠助が部屋に入ってきた。

「勝手に人の部屋に入って来ないでよ」
「はぁ?  鞠姉ちゃん。ここはナオカちゃんの部屋だろう」
「ナオカちゃんの代わりに言ってあげたんだよ」
「こまたん優しいね~」
「ふ~ん、そうかよ……仲良しでいいよな。わっ!  その小汚いクマのぬいぐるみは何だよ!?」

  鞠助は仲良く並べたナオちゃんとくーまたんを指差し嫌な顔をした。

「何ってナオちゃんとくーまたんだよ。小汚いって失礼だよ」、「そうだよ。失礼だよ」と  わたしとナオカちゃんはほぼ同時に言った。

「はぁ?  名前まで付いてんのかよ。ナオちゃんにくーまたんって笑えるんだけど」

  鞠助はそう言って馬鹿にしたようにケラケラと笑う。なんて憎たらしい子なんだよ。

「ふん、ほっといてよ。で、何の用事なの?」


  「あ、そうだ、鞠姉ちゃん。部屋にお手玉があるんだよ。しかも十個も。俺の部屋に置いた?」

「知らないよ。置かないよ。また、お手玉があったの?」

「そうだよ。また、俺の部屋にお手玉があるんだよ。しかも今度は破れていないんだよ」

  鞠助は「ほらこれだよ」と言ってビニール袋からお手玉を取り出しずらずらと並べた。

 赤地に手鞠柄のお手玉と青地に手鞠柄のお手玉で可愛らしかった。


「あ、本当だ!  破れてなくて良かったね」
「鞠姉ちゃん、ふざけるなよ!  破れてなくても全然良くないよ。誰が置いたんだよ」

  鞠助はぷんぷん怒り唇を尖らせた。

「誰が置いたんだろうね」とナオカちゃんと言い合い顔を見合わせた。そして、わたし達はほぼ同時に「あっ!」と叫んだ。

  これはあの子だよきっと。

わたしとナオカちゃんは座布団にちょこんと座っている座敷童子に視線を向けた。

  座敷童子は楽しそうに笑っていた。

「はぁ?  二人して大きな声を出してどうしたんだよ」

  鞠助は不思議そうに首を傾げた。
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