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わたしと家族と座敷わらし
大切なぬいぐるみ
しおりを挟むクマのぬいぐるみに目を落とす。すると、クマのぬいぐるみの黒目がわたしのことをじっと見ているように感じた。
そして、その黒目が『鞠助君と仲良くしてね』と言っているように見えた。
「こまたんどうしたの?」
わたしがぼんやりとクマのぬいぐるみを眺めていると、ナオカちゃんが椅子から立ち上がり尋ねた。
「あ、ううん。この子ずっと大切にしたいなと思ってね……」
わたしはクマのぬいぐるみの頭を優しく撫でながら答えた。
「そのぬいぐるみはお母さん、あ、こまたんのおばあちゃんが作ったぬいぐるみだよね?
幼い頃からずっと、大切にしていたよね」
ナオカちゃんがわたしの目の前にやって来て言った。
「うん、そうだよ。わたしが赤ちゃんの頃におばあちゃんが作ってくれたぬいぐるみなんだ。ってナオカちゃん覚えているの?」
わたしが顔を上げ尋ねるとナオカちゃんはニッと笑い「うん、こまたんがずっと大切にしていたの知ってるしそれにそのクマに似たぬいぐるみわたしも作ってもらったんだよ」と言った。
「えっ! ナオカちゃんも持ってるの?」
わたしはびっくりして思わず大きな声を出してしまった。
「うん、わたしも幼い頃お母さんにクマのぬいぐるみを作ってもらったんだよ」
ナオカちゃんはわたしのクマのぬいぐるみに手を伸ばしその頭をそっと撫でた。
「へぇ~おばあちゃんに作ってもらったぬいぐるみがあったんだね」
ナオカちゃんもわたしと同じようにぬいぐるみを持っていた過去があるんだなと思うとなんだか嬉しくなった。
うふふ、嬉しいなと微笑みを浮かべていると、ナオカちゃんが、
「わたし今もそのぬいぐるみを大事にしているよ」と言ったのでわたしは「へぇっ」と思わず素っ頓狂な声を出してしまった。だって、ナオカちゃんがまだ大事にぬいぐるみを持っているとは思わなかったのだから。
「えっ? こまたんってばどうしてびっくりしてるの?」
「だって、そのぬいぐるみもう持っていないと思ったんだもん」
「わたしたまに頭を撫でたりしているよ」
ナオカちゃんはニヒヒッと笑いながらわたしのクマのぬいぐるみの頭を撫でた。
「そうなんだね。大人になってもぬいぐるみを大切にしているんだね。その子幸せ者だね」
「ぬいぐるみに心があるかわからないけどさ、大事にしてるとなんだか自分の心がぽかぽかするんだよね」
そう言ったナオカちゃんの顔がとても穏やかで優しく見えた。
「だよね。ぬいぐるみって眺めたり触れたりするとめちゃくちゃ癒されるもんね」
わたしはクマのぬいぐるみに手を触れずっと仲良くしてねと心の中でそっと呟いた。
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