23 / 57
わたしと家族と座敷わらし
鞠助は憎たらしいけれど
しおりを挟む
「……ふん、あっそ」
鞠助は手のひらにのせている手鞠柄のお手玉に目を落とし呟いた。鞠助は今、何を思っているのだろうか? わたしの弟なのにその気持ちがわからない。
ナオカちゃんはそんな鞠助をじっと見ている。
「おい、ナオカちゃんちらちら見るなよ。気持ち悪いんだよ」と顔を上げた鞠助はナオカちゃんの顔を見て嫌そうな顔をした。
「あら、ごめんね。ってわたし可愛いけどね」
「はぁ。キモいな自分で言うなよ。それにナオカちゃんはもう三十歳だろう。可愛いってバカかよ」鞠助はふん! と鼻で笑う。
「失礼な子だね。わたしはまだ二十七歳ですけど。それに年なんて関係ないんだからね」
ナオカちゃんはふふんと笑う。
「はいはい、そうですか。三十歳も二十七歳も俺からしたらどっちでもおばさんだよ」
「ふ~ん、そうですか。子供だから大人の魅力がわからないのよ」
「はぁ? 大人の魅力~バカじゃないの。相手にしていられないぜ。じゃあ、俺は部屋に戻るから」
鞠助はそう言って部屋から出ていこうとした。
「ちょっと、鞠助このお手玉持って行ってよ」
わたしが言うと鞠助は「鞠姉ちゃんとナオカちゃんにあげるよ」と言って大股で歩き部屋から出ていった。
「騒がしい子だよね」
ナオカちゃんは鞠助が出ていったドアを眺めそれから視線をわたしに向け笑った。
「だよね。一人で騒いで文句を言って出ていったね」
わたしもナオカちゃんの顔を見て笑った。
「生意気な奴だけどあの子このお手玉お化けの仕業かと思って怖がっているんだよ。意外と可愛いね」
ナオカちゃんは破れて中身の小豆が飛び出している手鞠柄のお手玉に手を触れクスクスと笑った。
「今日眠れなかったりしてね」
「鞠姉ちゃん、俺眠れないよ~一緒に寝てくれって部屋にやって来たらどうする。こまたん」
「あはは、来るわけないでしょう」
「来たりするかもよ」
なんてわたしはナオカちゃんと笑い合っていると、幼き頃を思い出した。
あれはまだ鞠助が三歳くらいの頃だった。わたし達は当時同じ部屋で生活していた。ある日鞠助が大切にしていたクマのぬいぐるみが見当たらなくなり鞠助はわーんわーんと泣いた。
『鞠姉ちゃん、僕のクマちゃんがどっかにいっちゃったよ~クマちゃ~ん』と泣き叫びわたしの布団で寝ているクマのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
わたしは、『貸してあげるよ』と言って鞠助の頭をそっと撫でた。
鞠助がまだ可愛らしかったのはあの三歳くらいまでの頃だったと記憶している。幼稚園に入園する頃には生意気で憎たらしくなっていた。
鞠助は幼稚園の頃から数字や文字に興味を持ち勉強ができた。それをお母さんやお姉ちゃんに頭のいい子だと褒められると得意げに胸を張り笑った。
そして、わたしの顔を見て鼻で笑った。
『ぬいぐるみ貸してあげないからね』とわたしが言うと、鞠助は『ぬいぐるみ~? 鞠姉ちゃんバカじゃないの』と言った。
『おばあちゃんに作ってもらったクマのぬいぐるみだよ。どこにやったの?』
『あ、あのクマね。押入れの中だよ。もう必要ないからね』
なんて言って鞠助は大人みたいにフフッと偉そうに笑ったことを思い出した。わたしは今でも大切にしているというのにだ……。
そうそのクマのぬいぐるみは先程鞠助の言葉に頭にきて投げつけてしまったクマのぬいぐるみだった。
わたしは、本棚の上においたクマのぬいぐるみを手に取るとなんだか懐かしさがぎゅっとよみがえってきた。
鞠助は手のひらにのせている手鞠柄のお手玉に目を落とし呟いた。鞠助は今、何を思っているのだろうか? わたしの弟なのにその気持ちがわからない。
ナオカちゃんはそんな鞠助をじっと見ている。
「おい、ナオカちゃんちらちら見るなよ。気持ち悪いんだよ」と顔を上げた鞠助はナオカちゃんの顔を見て嫌そうな顔をした。
「あら、ごめんね。ってわたし可愛いけどね」
「はぁ。キモいな自分で言うなよ。それにナオカちゃんはもう三十歳だろう。可愛いってバカかよ」鞠助はふん! と鼻で笑う。
「失礼な子だね。わたしはまだ二十七歳ですけど。それに年なんて関係ないんだからね」
ナオカちゃんはふふんと笑う。
「はいはい、そうですか。三十歳も二十七歳も俺からしたらどっちでもおばさんだよ」
「ふ~ん、そうですか。子供だから大人の魅力がわからないのよ」
「はぁ? 大人の魅力~バカじゃないの。相手にしていられないぜ。じゃあ、俺は部屋に戻るから」
鞠助はそう言って部屋から出ていこうとした。
「ちょっと、鞠助このお手玉持って行ってよ」
わたしが言うと鞠助は「鞠姉ちゃんとナオカちゃんにあげるよ」と言って大股で歩き部屋から出ていった。
「騒がしい子だよね」
ナオカちゃんは鞠助が出ていったドアを眺めそれから視線をわたしに向け笑った。
「だよね。一人で騒いで文句を言って出ていったね」
わたしもナオカちゃんの顔を見て笑った。
「生意気な奴だけどあの子このお手玉お化けの仕業かと思って怖がっているんだよ。意外と可愛いね」
ナオカちゃんは破れて中身の小豆が飛び出している手鞠柄のお手玉に手を触れクスクスと笑った。
「今日眠れなかったりしてね」
「鞠姉ちゃん、俺眠れないよ~一緒に寝てくれって部屋にやって来たらどうする。こまたん」
「あはは、来るわけないでしょう」
「来たりするかもよ」
なんてわたしはナオカちゃんと笑い合っていると、幼き頃を思い出した。
あれはまだ鞠助が三歳くらいの頃だった。わたし達は当時同じ部屋で生活していた。ある日鞠助が大切にしていたクマのぬいぐるみが見当たらなくなり鞠助はわーんわーんと泣いた。
『鞠姉ちゃん、僕のクマちゃんがどっかにいっちゃったよ~クマちゃ~ん』と泣き叫びわたしの布団で寝ているクマのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
わたしは、『貸してあげるよ』と言って鞠助の頭をそっと撫でた。
鞠助がまだ可愛らしかったのはあの三歳くらいまでの頃だったと記憶している。幼稚園に入園する頃には生意気で憎たらしくなっていた。
鞠助は幼稚園の頃から数字や文字に興味を持ち勉強ができた。それをお母さんやお姉ちゃんに頭のいい子だと褒められると得意げに胸を張り笑った。
そして、わたしの顔を見て鼻で笑った。
『ぬいぐるみ貸してあげないからね』とわたしが言うと、鞠助は『ぬいぐるみ~? 鞠姉ちゃんバカじゃないの』と言った。
『おばあちゃんに作ってもらったクマのぬいぐるみだよ。どこにやったの?』
『あ、あのクマね。押入れの中だよ。もう必要ないからね』
なんて言って鞠助は大人みたいにフフッと偉そうに笑ったことを思い出した。わたしは今でも大切にしているというのにだ……。
そうそのクマのぬいぐるみは先程鞠助の言葉に頭にきて投げつけてしまったクマのぬいぐるみだった。
わたしは、本棚の上においたクマのぬいぐるみを手に取るとなんだか懐かしさがぎゅっとよみがえってきた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
梅子ばあちゃんのゆったりカフェヘようこそ!(東京都下の高尾の片隅で)
なかじまあゆこ
キャラ文芸
『梅子ばあちゃんのカフェへようこそ!』は梅子おばあちゃんの作る美味しい料理で賑わっています。そんなカフェに就職活動に失敗した孫のるり子が住み込みで働くことになって……。
おばあちゃんの家には変わり者の親戚が住んでいてるり子は戸惑いますが、そのうち馴れてきて溶け込んでいきます。
カフェとるり子と個性的な南橋一家の日常と時々ご当地物語です。
どうぞよろしくお願いします(^-^)/
エブリスタでも書いています。
おにぎり屋さんの裏稼業 〜お祓い請け賜わります〜
瀬崎由美
キャラ文芸
高校2年生の八神美琴は、幼い頃に両親を亡くしてからは祖母の真知子と、親戚のツバキと一緒に暮らしている。
大学通りにある屋敷の片隅で営んでいるオニギリ屋さん『おにひめ』は、気まぐれの営業ながらも学生達に人気のお店だ。でも、真知子の本業は人ならざるものを対処するお祓い屋。霊やあやかしにまつわる相談に訪れて来る人が後を絶たない。
そんなある日、祓いの仕事から戻って来た真知子が家の中で倒れてしまう。加齢による力の限界を感じた祖母から、美琴は祓いの力の継承を受ける。と、美琴はこれまで視えなかったモノが視えるようになり……。
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
里帰りした猫又は錬金術師の弟子になる。
音喜多子平
キャラ文芸
【第六回キャラ文芸大賞 奨励賞】
人の世とは異なる妖怪の世界で生まれた猫又・鍋島環は、幼い頃に家庭の事情で人間の世界へと送られてきていた。
それから十余年。心優しい主人に拾われ、平穏無事な飼い猫ライフを送っていた環であったが突然、本家がある異世界「天獄屋(てんごくや)」に呼び戻されることになる。
主人との別れを惜しみつつ、環はしぶしぶ実家へと里帰りをする...しかし、待ち受けていたのは今までの暮らしが極楽に思えるほどの怒涛の日々であった。
本家の勝手な指図に翻弄されるまま、まともな記憶さえたどたどしい異世界で丁稚奉公をさせられる羽目に…その上ひょんなことから錬金術師に拾われ、錬金術の手習いまですることになってしまう。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
神様になった私、神社をもらいました。 ~田舎の神社で神様スローライフ~
きばあおき
ファンタジー
都内で営業事務として働く27歳の佐藤ゆかりは、色々あって(笑)神様から天界に住むことを勧められたが、下界で暮らしたいとお願い?したところ、神社の復興を条件にされてしまう。
赴任した神社は前任の神様が主祭神ではなく、本殿の悪神をおさえるのが仕事であった。
神社を発展させ、氏子を増やさないと存在が消えてしまう。
神格があがると新しい神の力、神威が使えるようになる。
神威を使って神域を広げ、氏子を増やし、更に神威を大きくすることができるのか。
ゆかりは自分の存在を護るため、更に豊かなスローライフも目指し、神使の仲間や氏子と神社復興ために奮闘する。
バトルは少なめです
後宮の裏絵師〜しんねりの美術師〜
あきゅう
キャラ文芸
【女絵師×理系官吏が、後宮に隠された謎を解く!】
姫棋(キキ)は、小さな頃から絵師になることを夢みてきた。彼女は絵さえ描けるなら、たとえ後宮だろうと地獄だろうとどこへだって行くし、友人も恋人もいらないと、ずっとそう思って生きてきた。
だが人生とは、まったくもって何が起こるか分からないものである。
夏后国の後宮へ来たことで、姫棋の運命は百八十度変わってしまったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる