座敷童子が見える十四歳のわたしと二十七歳のナオカちゃん

なかじまあゆこ

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わたしと家族と座敷わらし

鞠助は憎たらしいけれど

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「……ふん、あっそ」

  鞠助は手のひらにのせている手鞠柄のお手玉に目を落とし呟いた。鞠助は今、何を思っているのだろうか?  わたしの弟なのにその気持ちがわからない。

  ナオカちゃんはそんな鞠助をじっと見ている。

「おい、ナオカちゃんちらちら見るなよ。気持ち悪いんだよ」と顔を上げた鞠助はナオカちゃんの顔を見て嫌そうな顔をした。

「あら、ごめんね。ってわたし可愛いけどね」
「はぁ。キモいな自分で言うなよ。それにナオカちゃんはもう三十歳だろう。可愛いってバカかよ」鞠助はふん!  と鼻で笑う。

「失礼な子だね。わたしはまだ二十七歳ですけど。それに年なんて関係ないんだからね」

  ナオカちゃんはふふんと笑う。

「はいはい、そうですか。三十歳も二十七歳も俺からしたらどっちでもおばさんだよ」

「ふ~ん、そうですか。子供だから大人の魅力がわからないのよ」

「はぁ?  大人の魅力~バカじゃないの。相手にしていられないぜ。じゃあ、俺は部屋に戻るから」
  
鞠助はそう言って部屋から出ていこうとした。

「ちょっと、鞠助このお手玉持って行ってよ」

  わたしが言うと鞠助は「鞠姉ちゃんとナオカちゃんにあげるよ」と言って大股で歩き部屋から出ていった。


「騒がしい子だよね」

  ナオカちゃんは鞠助が出ていったドアを眺めそれから視線をわたしに向け笑った。

「だよね。一人で騒いで文句を言って出ていったね」

  わたしもナオカちゃんの顔を見て笑った。

「生意気な奴だけどあの子このお手玉お化けの仕業かと思って怖がっているんだよ。意外と可愛いね」

  ナオカちゃんは破れて中身の小豆が飛び出している手鞠柄のお手玉に手を触れクスクスと笑った。

「今日眠れなかったりしてね」
「鞠姉ちゃん、俺眠れないよ~一緒に寝てくれって部屋にやって来たらどうする。こまたん」
「あはは、来るわけないでしょう」
「来たりするかもよ」

  なんてわたしはナオカちゃんと笑い合っていると、幼き頃を思い出した。

  あれはまだ鞠助が三歳くらいの頃だった。わたし達は当時同じ部屋で生活していた。ある日鞠助が大切にしていたクマのぬいぐるみが見当たらなくなり鞠助はわーんわーんと泣いた。

『鞠姉ちゃん、僕のクマちゃんがどっかにいっちゃったよ~クマちゃ~ん』と泣き叫びわたしの布団で寝ているクマのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。

  わたしは、『貸してあげるよ』と言って鞠助の頭をそっと撫でた。


  鞠助がまだ可愛らしかったのはあの三歳くらいまでの頃だったと記憶している。幼稚園に入園する頃には生意気で憎たらしくなっていた。

  鞠助は幼稚園の頃から数字や文字に興味を持ち勉強ができた。それをお母さんやお姉ちゃんに頭のいい子だと褒められると得意げに胸を張り笑った。

  そして、わたしの顔を見て鼻で笑った。

『ぬいぐるみ貸してあげないからね』とわたしが言うと、鞠助は『ぬいぐるみ~?  鞠姉ちゃんバカじゃないの』と言った。

『おばあちゃんに作ってもらったクマのぬいぐるみだよ。どこにやったの?』
『あ、あのクマね。押入れの中だよ。もう必要ないからね』

  なんて言って鞠助は大人みたいにフフッと偉そうに笑ったことを思い出した。わたしは今でも大切にしているというのにだ……。

  そうそのクマのぬいぐるみは先程鞠助の言葉に頭にきて投げつけてしまったクマのぬいぐるみだった。

  わたしは、本棚の上においたクマのぬいぐるみを手に取るとなんだか懐かしさがぎゅっとよみがえってきた。
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