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わたしと家族と座敷わらし

不思議なお手玉

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「どうしたのかな?  鞠助の声だよね」
「うん、鞠助の声だね」

  わたしとナオカちゃんはそう言い合いおでこがくっつきそうなくらい顔を近づけ言い合った。

「こ、これはなんだよ!!  どうして増えているんだよ~」

  鞠助は大きな声を上げている。

「もしかしたらお手玉が増えたのかな?」
「そうかもしれないね」
「座敷童子が置いたのかな?」
「きっと、そうだよ。なんか笑っちゃうね」

  わたしとナオカちゃんはあはは、わははと笑い合った。

  その時、部屋のドアがばーんと開いた。わたし達がドアの方向に振り向くと顔を真っ赤に上気させた鞠助が立っていた。

  また、人の部屋に勝手に入ってくるんだから。何回ノックをしろと言わせるのよ。

「鞠助どうしたの?」
「鞠姉ちゃんどうしたのじゃないよ。これは何だよ?」
「これって?」
「だからこれだよ。これ!」

  鞠助はそう言ってビニール袋を見せたかと思うとそのビニール袋から手鞠柄のお手玉を取り出しずらずらと床に並べた。

「あ、手鞠柄のお手玉だ~」

  ナオカちゃんはそう言って手鞠柄のお手玉を指差した。


「あ、ナオカちゃんもいるのかよ」

  鞠助はちらっとナオカちゃんに見て呟きそれから手鞠柄のお手玉に視線を戻し「増えているんだよね。数えたら十五個もあるんだぜ」と言って顔を上げわたしを睨んだ。

「どうしてわたしを睨んでいるのよ?  わたしお手玉なんて置いてないからね」

  わたしは言いながら鞠助を睨み返した。

「確かに俺の部屋に誰も入ってきた気配はなかったんだよ。ってことはまさか……」

  それまで顔を上気させ怒りに震えていた鞠助の顔がみるみるうちに青くなった。

  もしかしたら座敷童子の存在に気づいたのだろうかと思ったけれど違った。

「ゆ、幽霊が俺の部屋に入ってきたのかな?」鞠助は言いながらぷるぷると震えた。

「あはは、なんだかんだ言っても鞠助もまだ小学生だね。お化けが怖いんだね~」

  ナオカちゃんはケラケラ笑いながら鞠助の頭をわしゃわしゃと撫でた。

「ふ、ふざけるなよ!」
「だって、鞠助ってばぶるぶる震えているんだもんね」

  ナオカちゃんがそう言いながらもう一度鞠助の頭を今度は優しく撫でた。すると、鞠助は「ふ、ふざけるな~べ、別に怖くないしそれにお化けが怖いのは大人も子供も関係ないだろう!」

  そう言って頬を膨らませナオカちゃんの手を振り払った。いつも可愛くない鞠助が少しだけ可愛く見えた。だけど、鞠助は嫌な弟に変わりない。


「まあね、大人でも子供でもお化けは怖いよね。それにしてもこのお手玉ほつれて破れているんだね」

  ナオカちゃんは床にずらずらと並べられ中身の小豆がぱらぱらこぼれている手鞠柄のお手玉に視線を落とし言った。

「そうだよ。俺の部屋にこの破れているお手玉が置かれていたんだからね不気味だよ」

  鞠助は手鞠柄のお手玉を一つ手に取り「でも鞠姉ちゃんやナオカちゃんじゃないとすると本当に誰がこのお手玉を俺の部屋に置いたんだよ」と嫌そうな顔で眺め呟いた。

  鞠助は座敷童子の存在を知らないからより不気味に感じるのだろう。と言っても座敷童子が存在すること自体不思議でならないしちょっと不気味かもしれないなと思った。

  そもそもあの座敷童子はどうしてこの家に居るのだろうか?

「鞠助、不思議なことってあるのかもしれないよ。勉強だけじゃ解けないことがね」

  ナオカちゃんはそう言ってニヤリと笑った。
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