座敷童子が見える十四歳のわたしと二十七歳のナオカちゃん

なかじまあゆこ

文字の大きさ
上 下
19 / 57
わたしと家族と座敷わらし

青春

しおりを挟む

  椅子をガタガタ揺らし続けながらナオカちゃんは、「こまたんは青春時代をおもいっきり楽しむんだよ」と顔をこちらにくるっと向けて言った。

「あ、うん、そうしたいと思っているよ」

  わたしはそう答えたけれど、青春時代とは何だろうなと考えた。たしか十三歳くらいから青春時代だと聞いたことがあるけれど、なんだかピンとこない。

「ねえ、ナオカちゃん……」
「ん?  なあに?」
「ナオカちゃんも人生まだまだ諦めたりしないでよ」

「あはは、わたしもまだこれからだと思っているよ。だけどね、やりたいなと思ったことは早いうちに全部やってみるのも良いかなとか思ったりするんだよね……」

  ナオカちゃんはそう言ってちょっと寂しそうに笑った。

「そっか、でもわたしまだよくわからないや……」
「まあ、急ぐこともないよ。だけど、わたしみたいな失敗作人間みたいにならないように気をつけてね」

  ナオカちゃんは椅子にきちんと座り直し言った。

「えっ?  失敗作人間って何を言っているのよ」

   ナオカちゃんが失敗作人間なんてことあるはずがないよ。

「あはは、わたしも自分のこと失敗作人間だなんて思いたくないけどね。でも、無職のプー太郎になっちゃったしね……それにこまたんのお母さんはわたしのことをダメ人間だって言うしさ……」

  ナオカちゃんはフフッと笑ったけれど、その笑い声がなんだか切なく感じた。

「ナオカちゃんはダメ人間なんかじゃないよ。わたしはお母さんよりナオカちゃんの方が好きなんだからね!」

  わたしは拳をギュッと握って言った。気づくと爪が食い込むほど拳を握り締めていた。

「ありがとう。こまたんは優しいね」

「ナオカちゃん、わたしは本当にナオカちゃんに憧れているんだよ。もっと自分に自信を持ってよ」

  ナオカちゃんはわたしが同情して言っていると思っているんだ。ナオカちゃんみたいな生き方が正しいのかお母さんみたいにきちんとした人が正しいのかわからないけれど、わたしはナオカちゃんが大好きなんだ。

「えっ?  こまたんはわたしに憧れているの?」

  ナオカちゃんはきょとんとした顔でわたしを見た。

「う、うん、ちょっと悔しいけどそうだよ」とわたしは素直に答えた。

「こまたん、わたしはめちゃくちゃ嬉しいよ。だけど、わたしの真似をすると将来こうなる見本だよ」

  ナオカちゃんはこちらを見てニカッと笑い舌を出した。

「う~ん、でも、わたしはそれならそれで構わないと思うしナオカちゃんもまだまだこれからなんだよね?」

「うん、だって、わたしはまだ一応二十代だよ。今からアイドルになるのは難しいかもしれないけど、なんだって出来る可能性はあるもんね。人生諦めていないもん。お姉ちゃんはいい歳してって言うけどさ……」

「お母さんはわかっていないんだよ。それにナオカちゃんは可愛いから今からでもアイドルにだってなれるかもだよ」

  わたしは拳をギュッと握り言った。

「あはは、こまたんどうしたの?  ちょっとわたしを褒めすぎだよ」

「だって、お母さんもお姉ちゃんそれから鞠助もムカつくんだもん!」

  わたしはぷくっと頬を膨らませた。

「あはは、あの人達は現実主義だし優秀だもんね。まあ、それが正しい生き方なのかもしれないけどさ、ただ、わたしはたとえお姉ちゃんの歳になってもまだまだこれからと思って夢を見ているかもね」

「そうだよ、ナオカちゃんその意気だよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

梅子ばあちゃんのゆったりカフェヘようこそ!(東京都下の高尾の片隅で)

なかじまあゆこ
キャラ文芸
『梅子ばあちゃんのカフェへようこそ!』は梅子おばあちゃんの作る美味しい料理で賑わっています。そんなカフェに就職活動に失敗した孫のるり子が住み込みで働くことになって……。 おばあちゃんの家には変わり者の親戚が住んでいてるり子は戸惑いますが、そのうち馴れてきて溶け込んでいきます。 カフェとるり子と個性的な南橋一家の日常と時々ご当地物語です。 どうぞよろしくお願いします(^-^)/ エブリスタでも書いています。

おにぎり屋さんの裏稼業 〜お祓い請け賜わります〜

瀬崎由美
キャラ文芸
高校2年生の八神美琴は、幼い頃に両親を亡くしてからは祖母の真知子と、親戚のツバキと一緒に暮らしている。 大学通りにある屋敷の片隅で営んでいるオニギリ屋さん『おにひめ』は、気まぐれの営業ながらも学生達に人気のお店だ。でも、真知子の本業は人ならざるものを対処するお祓い屋。霊やあやかしにまつわる相談に訪れて来る人が後を絶たない。 そんなある日、祓いの仕事から戻って来た真知子が家の中で倒れてしまう。加齢による力の限界を感じた祖母から、美琴は祓いの力の継承を受ける。と、美琴はこれまで視えなかったモノが視えるようになり……。 第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神様になった私、神社をもらいました。 ~田舎の神社で神様スローライフ~

きばあおき
ファンタジー
都内で営業事務として働く27歳の佐藤ゆかりは、色々あって(笑)神様から天界に住むことを勧められたが、下界で暮らしたいとお願い?したところ、神社の復興を条件にされてしまう。 赴任した神社は前任の神様が主祭神ではなく、本殿の悪神をおさえるのが仕事であった。 神社を発展させ、氏子を増やさないと存在が消えてしまう。 神格があがると新しい神の力、神威が使えるようになる。 神威を使って神域を広げ、氏子を増やし、更に神威を大きくすることができるのか。 ゆかりは自分の存在を護るため、更に豊かなスローライフも目指し、神使の仲間や氏子と神社復興ために奮闘する。 バトルは少なめです

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

おっ☆パラ

うらたきよひこ
キャラ文芸
こんなハーレム展開あり? これがおっさんパラダイスか!? 新米サラリーマンの佐藤一真がなぜかおじさんたちにモテまくる。大学教授やガテン系現場監督、エリートコンサル、老舗料理長、はたまた流浪のバーテンダーまで、個性派ぞろい。どこがそんなに“おじさん心”をくすぐるのか? その天賦の“モテ力”をご覧あれ!

鬼の頭領様の花嫁ごはん!

おうぎまちこ(あきたこまち)
キャラ文芸
キャラ文芸大会での応援、本当にありがとうございました。 2/1になってしまいましたが、なんとか完結させることが出来ました。 本当にありがとうございます(*'ω'*) あとで近況ボードにでも、鬼のまとめか何かを書こうかなと思います。  時は平安。貧乏ながらも幸せに生きていた菖蒲姫(あやめひめ)だったが、母が亡くなってしまい、屋敷を維持することが出来ずに出家することなった。  出家当日、鬼の頭領である鬼童丸(きどうまる)が現れ、彼女は大江山へと攫われてしまう。  人間と鬼の混血である彼は、あやめ姫を食べないと(色んな意味で)、生きることができない呪いにかかっているらしくて――?  訳アリの過去持ちで不憫だった人間の少女が、イケメン鬼の頭領に娶られた後、得意の料理を食べさせたり、相手に食べられたりしながら、心を通わせていく物語。 (優しい鬼の従者たちに囲まれた三食昼寝付き生活) ※キャラ文芸大賞用なので、アルファポリス様でのみ投稿中。

熱砂のシャザール

春川桜
キャラ文芸
日本の大学生・瞳が、異国の地で貴人・シャザールと出会って始まる物語

処理中です...