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わたしと家族と座敷わらし
青春
しおりを挟む椅子をガタガタ揺らし続けながらナオカちゃんは、「こまたんは青春時代をおもいっきり楽しむんだよ」と顔をこちらにくるっと向けて言った。
「あ、うん、そうしたいと思っているよ」
わたしはそう答えたけれど、青春時代とは何だろうなと考えた。たしか十三歳くらいから青春時代だと聞いたことがあるけれど、なんだかピンとこない。
「ねえ、ナオカちゃん……」
「ん? なあに?」
「ナオカちゃんも人生まだまだ諦めたりしないでよ」
「あはは、わたしもまだこれからだと思っているよ。だけどね、やりたいなと思ったことは早いうちに全部やってみるのも良いかなとか思ったりするんだよね……」
ナオカちゃんはそう言ってちょっと寂しそうに笑った。
「そっか、でもわたしまだよくわからないや……」
「まあ、急ぐこともないよ。だけど、わたしみたいな失敗作人間みたいにならないように気をつけてね」
ナオカちゃんは椅子にきちんと座り直し言った。
「えっ? 失敗作人間って何を言っているのよ」
ナオカちゃんが失敗作人間なんてことあるはずがないよ。
「あはは、わたしも自分のこと失敗作人間だなんて思いたくないけどね。でも、無職のプー太郎になっちゃったしね……それにこまたんのお母さんはわたしのことをダメ人間だって言うしさ……」
ナオカちゃんはフフッと笑ったけれど、その笑い声がなんだか切なく感じた。
「ナオカちゃんはダメ人間なんかじゃないよ。わたしはお母さんよりナオカちゃんの方が好きなんだからね!」
わたしは拳をギュッと握って言った。気づくと爪が食い込むほど拳を握り締めていた。
「ありがとう。こまたんは優しいね」
「ナオカちゃん、わたしは本当にナオカちゃんに憧れているんだよ。もっと自分に自信を持ってよ」
ナオカちゃんはわたしが同情して言っていると思っているんだ。ナオカちゃんみたいな生き方が正しいのかお母さんみたいにきちんとした人が正しいのかわからないけれど、わたしはナオカちゃんが大好きなんだ。
「えっ? こまたんはわたしに憧れているの?」
ナオカちゃんはきょとんとした顔でわたしを見た。
「う、うん、ちょっと悔しいけどそうだよ」とわたしは素直に答えた。
「こまたん、わたしはめちゃくちゃ嬉しいよ。だけど、わたしの真似をすると将来こうなる見本だよ」
ナオカちゃんはこちらを見てニカッと笑い舌を出した。
「う~ん、でも、わたしはそれならそれで構わないと思うしナオカちゃんもまだまだこれからなんだよね?」
「うん、だって、わたしはまだ一応二十代だよ。今からアイドルになるのは難しいかもしれないけど、なんだって出来る可能性はあるもんね。人生諦めていないもん。お姉ちゃんはいい歳してって言うけどさ……」
「お母さんはわかっていないんだよ。それにナオカちゃんは可愛いから今からでもアイドルにだってなれるかもだよ」
わたしは拳をギュッと握り言った。
「あはは、こまたんどうしたの? ちょっとわたしを褒めすぎだよ」
「だって、お母さんもお姉ちゃんそれから鞠助もムカつくんだもん!」
わたしはぷくっと頬を膨らませた。
「あはは、あの人達は現実主義だし優秀だもんね。まあ、それが正しい生き方なのかもしれないけどさ、ただ、わたしはたとえお姉ちゃんの歳になってもまだまだこれからと思って夢を見ているかもね」
「そうだよ、ナオカちゃんその意気だよ」
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