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わたしと家族と座敷わらし
鞠助も悩んでいるのかな
しおりを挟む現実はわたしの妄想とかけ離れていて悲しくなる。だって、実際の姉と弟は悪魔みたいな人達なのだから。
だからナオカちゃんがこの家に戻って来てくれてどんなに嬉しかったことか。
この家にナオカちゃんが戻って来るまではわたしの味方と言えばおばあちゃんくらいだった。お母さんがわたしのことを悪く言うとおばあちゃんが庇ってくれる。
だけど、お姉ちゃんと鞠助はお母さんと一緒になってわたしのことを貶す。それが辛くて早く大人になってこの家から出ていきたいと何度も思ったことだろうか。
それなのに大人になることも怖く感じどうしようもない毎日を送っていた。
そんなある日ナオカちゃんが帰って来るとおばあちゃんから聞いた時は飛び上がるほど嬉しかったのだ。そんなことをぼんやり考えていると、
「こまたん」とわたしを呼ぶ声が聞こえてきた。
この声はナオカちゃんだ。
「はい、どうぞ」とわたしは返事をした。すると、扉が開きナオカちゃんが部屋に入ってきた。
「こまたん、大きな声が聞こえてきたけどどうかしたの?」
ナオカちゃんは学習机の椅子に腰を下ろし眉間に皺を寄せ心配そうな顔をした。
「ううん、大丈夫だよ。ちょっと鞠助と喧嘩をしちゃったんだ……あの子憎たらしいからね」
「あはは、鞠助は昔から憎たらしい子だよね。でも、ちょっと可哀想だよね」
「えっ? 可哀想って鞠助が? どうして?」
わたしはナオカちゃんの言っている意味がさっぱりわからなくて首を傾げた。
「う~ん、可哀想と言うか美鞠ちゃんに負けたくなくて頑張っているんじゃないかな?」
ナオカちゃんは漫画本をぺらぺらと捲りながら言った。
「お姉ちゃんに?」
「うん、美鞠ちゃんに負けたくなくて、それとこまたんみたいになりたくなくて。あ、失礼。親に褒められたくて必死なのかもね」
ナオカちゃんはそう言って物悲しげに微笑みを浮かべる。
「……そうなのかな? って、わたしみたいになりたくないってちょっとナオカちゃんってば失礼だよ。まあ、それは置いておいてそれも有り得るね」
ナオカちゃんの言っている意味がなんとなくわかったけれど、そんなに頑張らなくてもいいのになと思った。それと同時に考えようによっては案外わたしは幸せのかもしれないとも感じた。
「この学習机なんだか懐かしいな~」
ナオカちゃんは椅子をカタカタ揺らしながら「あ、昔こうやって椅子をカタカタ揺らしていると後ろにひっくり返りそうになったことがあるな~」と言って笑った。
「あ、わたし時々椅子をガタガタ揺らしてひっくり返りそうになっているよ~」
わたしと同じことをナオカちゃんもしていたんだと思うと可笑しくなりそして嬉しくも感じた。もし、学生時代のナオカちゃんと親族としてではなく出会っていたらきっと良い友達になっていただろうねとふと思った。
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