上 下
18 / 57
わたしと家族と座敷わらし

鞠助も悩んでいるのかな

しおりを挟む

  現実はわたしの妄想とかけ離れていて悲しくなる。だって、実際の姉と弟は悪魔みたいな人達なのだから。

  だからナオカちゃんがこの家に戻って来てくれてどんなに嬉しかったことか。

  この家にナオカちゃんが戻って来るまではわたしの味方と言えばおばあちゃんくらいだった。お母さんがわたしのことを悪く言うとおばあちゃんが庇ってくれる。

  だけど、お姉ちゃんと鞠助はお母さんと一緒になってわたしのことを貶す。それが辛くて早く大人になってこの家から出ていきたいと何度も思ったことだろうか。

  それなのに大人になることも怖く感じどうしようもない毎日を送っていた。

  そんなある日ナオカちゃんが帰って来るとおばあちゃんから聞いた時は飛び上がるほど嬉しかったのだ。そんなことをぼんやり考えていると、

「こまたん」とわたしを呼ぶ声が聞こえてきた。



  この声はナオカちゃんだ。
「はい、どうぞ」とわたしは返事をした。すると、扉が開きナオカちゃんが部屋に入ってきた。

「こまたん、大きな声が聞こえてきたけどどうかしたの?」

  ナオカちゃんは学習机の椅子に腰を下ろし眉間に皺を寄せ心配そうな顔をした。

「ううん、大丈夫だよ。ちょっと鞠助と喧嘩をしちゃったんだ……あの子憎たらしいからね」

「あはは、鞠助は昔から憎たらしい子だよね。でも、ちょっと可哀想だよね」

「えっ?  可哀想って鞠助が?  どうして?」

  わたしはナオカちゃんの言っている意味がさっぱりわからなくて首を傾げた。

「う~ん、可哀想と言うか美鞠ちゃんに負けたくなくて頑張っているんじゃないかな?」

  ナオカちゃんは漫画本をぺらぺらと捲りながら言った。

「お姉ちゃんに?」

「うん、美鞠ちゃんに負けたくなくて、それとこまたんみたいになりたくなくて。あ、失礼。親に褒められたくて必死なのかもね」

  ナオカちゃんはそう言って物悲しげに微笑みを浮かべる。

「……そうなのかな?  って、わたしみたいになりたくないってちょっとナオカちゃんってば失礼だよ。まあ、それは置いておいてそれも有り得るね」


  ナオカちゃんの言っている意味がなんとなくわかったけれど、そんなに頑張らなくてもいいのになと思った。それと同時に考えようによっては案外わたしは幸せのかもしれないとも感じた。

「この学習机なんだか懐かしいな~」

  ナオカちゃんは椅子をカタカタ揺らしながら「あ、昔こうやって椅子をカタカタ揺らしていると後ろにひっくり返りそうになったことがあるな~」と言って笑った。

「あ、わたし時々椅子をガタガタ揺らしてひっくり返りそうになっているよ~」

  わたしと同じことをナオカちゃんもしていたんだと思うと可笑しくなりそして嬉しくも感じた。もし、学生時代のナオカちゃんと親族としてではなく出会っていたらきっと良い友達になっていただろうねとふと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

神様になった私、神社をもらいました。 ~田舎の神社で神様スローライフ~

きばあおき
ファンタジー
都内で営業事務として働く27歳の佐藤ゆかりは、色々あって(笑)神様から天界に住むことを勧められたが、下界で暮らしたいとお願い?したところ、神社の復興を条件にされてしまう。 赴任した神社は前任の神様が主祭神ではなく、本殿の悪神をおさえるのが仕事であった。 神社を発展させ、氏子を増やさないと存在が消えてしまう。 神格があがると新しい神の力、神威が使えるようになる。 神威を使って神域を広げ、氏子を増やし、更に神威を大きくすることができるのか。 ゆかりは自分の存在を護るため、更に豊かなスローライフも目指し、神使の仲間や氏子と神社復興ために奮闘する。 バトルは少なめです

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

梅子ばあちゃんのゆったりカフェヘようこそ!(東京都下の高尾の片隅で)

なかじまあゆこ
キャラ文芸
『梅子ばあちゃんのカフェへようこそ!』は梅子おばあちゃんの作る美味しい料理で賑わっています。そんなカフェに就職活動に失敗した孫のるり子が住み込みで働くことになって……。 おばあちゃんの家には変わり者の親戚が住んでいてるり子は戸惑いますが、そのうち馴れてきて溶け込んでいきます。 カフェとるり子と個性的な南橋一家の日常と時々ご当地物語です。 どうぞよろしくお願いします(^-^)/ エブリスタでも書いています。

高尾山で立ち寄ったカフェにはつくも神のぬいぐるみとムササビやもふもふがいました

なかじまあゆこ
キャラ文芸
高尾山で立ち寄ったカフェにはつくも神や不思議なムササビにあやかしがいました。 派遣で働いていた会社が突然倒産した。落ち込んでいた真歌(まか)は気晴らしに高尾山に登った。 パンの焼き上がる香りに引き寄せられ『ムササビカフェ食堂でごゆっくり』に入ると、 そこは、ちょっと不思議な店主とムササビやもふもふにそれからつくも神のぬいぐるみやあやかしのいるカフェ食堂でした。 その『ムササビカフェ食堂』で働くことになった真歌は……。 よろしくお願いします(^-^)/

神の妖診療所

逢汲彼方
キャラ文芸
神として駆け出しの瑞穂は、人間からの人気がなく、まだ自分の神社を持っていなかった。そんな彼は、神々がおわす天界には住めず、人間や低級妖の住む下界で貧乏暮らしをしながら、「妖の診療所」を開いてなんとか食いつないでいた。 しかし、その経営も厳しく今や診療所は破綻寸前。 そんな時、瑞穂はある人間の娘と出会う。彼女とは、どこかで会ったことがある気がするのに瑞穂はどうしても思い出せない。楓と名乗ったその娘は、診療所で働きたいと言い出し、さらに彼女が拾ってきた猫又の美少年も加わり、診療所は賑やかになる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

処理中です...