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わたしと家族と座敷わらし
くまのぬいぐるみと鞠助
しおりを挟むバターンと閉められたドアをしばらくの間わたしは眺め続けた。そしてそこにあったクマのぬいぐるみをぎゅっと掴みドアに向かっておもいっきり投げつけた。
なんだか悔しくてイライラする。どうして大人だからこうしなければいけないとかあれをしたらダメだとかあるのかな?
大人だって公園で遊んだっていいじゃない。仕事を休んでもいいじゃないのかな? わたしはまだ子供だから良くわからないけれど。
鞠助の言うような立派な大人にならなければいけないんだったらわたしはこのまま子供のままでいたい。
大人になんかなりたくないよ。なりたくないよ。気がつくとわたしの頬を涙が伝っていた。ああ、もうどうして涙が出るのよ。
嫌になってしまうよ。大好きで大嫌いなナオカちゃんのことをバカにされたからなのかそれとも情けない自分自身に嫌気が差しているのかわからない。
「クマちゃん投げたりしてごめんね」
わたしはドアの前に行き転がっているぬいぐるみを拾い上げ謝った。クマのぬいぐるみの黒目が悲しそうに見えた。
ドアの前でわたしはクマのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
このクマのぬいぐるみはおばあちゃんが作ってくれた大切なぬいぐるみなのに投げてしまうなんてわたしはどうかしているよ。
「クマちゃん本当にごめんね」ともう一度謝りぬいぐるみの頭を撫でていたその時、
「こ、こ、これは何だよーーーー!?」と叫び声が聞こえてきた。
鞠助の声だ。一体どうしたと言うのだろうか。どうせくだらないことだと思う。相手にしないでいよう。
そう思いながらクマのぬいぐるみを本棚の上に置こうとしたその時、
「犯人は姉ちゃんかよ」と鞠助の大きな声が聞こえてきた。お姉ちゃんが何かしたのかな? 珍しいな。どうしたんだろ。
「おい、鞠姉ちゃん!!」と言う大きな声と共に部屋のドアがバーンと開き鞠助が入って来た。
「だから人の部屋のドアを勝手に開けないでと言ってるでしょう」
わたしがそう言って鞠助を睨むと「これ、鞠姉ちゃんが置いたのか?」と鞠助は言った。
「えっ? それは……」
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