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わたしと家族と座敷わらし

座敷童子はどこへ

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  そうなのだ。座敷童子がいたはずの場所には誰もいなかった。

「き、消えたよ!」
「うん、消えたね」

  わたしとナオカちゃんは座敷童子がいた空間をじっと眺めた。その空間だけぽっかりと穴が空いたように感じた。

「座敷童子は帰ったのかな?」

「うん、こまたん座敷童子はわたしの部屋に……帰ったのかかもね?」

「えっ!  ナオカちゃんの部屋に……」

  わたしはナオカちゃんの部屋で座布団を敷きちょこりんと座っている座敷童子の姿を思い浮かべ身震いした。

「座敷童子も帰ったみたいだからわたし達も帰ろうか」

  ナオカちゃんはそう言ってテクテク歩き出した。

「うん、帰ろう」と返事をしてわたしはナオカちゃんの後を追いかけた。

  オレンジに染まる夕焼け空がとても美しくて今日という一日も終わりなんだなと思うとなんだか切なくなった。

  そして、ナオカちゃんの後ろ姿に目を向けずっと幸せな日々が続きますようにと願った。


  おばあちゃんの美味しい夕食を食べ終えると、わたしは現在はナオカちゃんの部屋である元『開かずの間』の引き戸をノックした。

  引き戸の前でちょっとドキドキしていたのだけど、わたしが引き戸をガラガラと開け部屋の中に入ると、ナオカちゃんが「よっ!  こまたんだ~」と口角をキュッと上げて笑った。

  わたしはナオカちゃんのその笑顔を見るとほっとした。

「えへへ、遊びに来ちゃった」

  わたしは笑いながら部屋の中を見渡したけれど、座敷童子の姿はなかったしごくありふれた部屋だった。長く使っていなかった部屋の埃の臭いがナオカちゃんらしい匂いに変わっている。

「どうぞどうぞ~こまたん」と言いながらナオカちゃんは手鞠柄の座布団を用意してくれた。

   その手鞠柄の座布団にちょっとドキッとしながらわたしは腰を下ろした。

「お菓子持ってきたよ~」

  わたしはスーパーの袋に入っているポテトチップスやチョコレートにクッキーなどを取り出しながら言った。

「わ~い!  ポテチだ」

  ナオカちゃんはポテトチップスの袋を両手で引っ張ってバリバリッと開けた。

「あ、それはわたしが食べようと思っていたサワークリームオニオン味だよ!」

「ふふん、早い者勝ちだよ。こまたんは塩味ね」

  ナオカちゃんは口の中にポテトチップスを放り込んだ。

「あ、ズルいよ~」

  わたしは仕方なく塩味のポテトチップスの袋をバリバリッと開けた。
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