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わたしと家族と座敷わらし

夕焼けと座敷童子

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  わたしとナオカちゃんは昔と同じように公園から神社を抜けて家路につく。静寂に包まれた神社は夕日に包まれていた。

「ナオカちゃん夕焼けが綺麗だね」

「うん、こまたんが小さい頃もこうして時間が経つことも忘れて夕焼け空の下帰ったね」

  ナオカちゃんはオレンジ色に染まった美しくて幻想的な空を見上げて言った。

  あの頃とわたし達はそんなに変わっていないなと思いながら夕焼け空を見上げる。このまま大人にならずに子供のままでいたい。けれどやっぱり大人にもなってみたいなと、矛盾した考えがわたしの頭の中に浮かぶ。

  その時、何処かからぽーんぽーんと鞠をつくような音が聴こえてきた。

「あはは、うふふっ! くすくす」と笑い声も同時に聴こえてきた。

「ナオカちゃんこの音と笑い声は!」わたしはナオカちゃんの曇りのない瞳を見て言った。

   そして、わたし達は、口を揃えて、「座敷童子だ~!!」と言ってお互いの顔はを見る。それから「鞠をついてる音だ~」とほぼ同時に言った。

  ぽーん、ぽーん、ぽんぽん。くすくす。



  わたし達は辺りをキョロキョロ見渡した。けれど、座敷童子の姿はなかった。

「ナオカちゃん、あの音は座敷童子の鞠をつく音と笑い声だよね?」

「うん、きっとそうだよ。でも姿が見えないね。なんだかバカにされているみたいだね」

  ナオカちゃんは辺りをキョロキョロ見回しながら悔しそうに唇を噛んだ。

  うふふ、くすくす。あははっ。うふふーっ。なんて話しているとまたまた歌うような笑い声が聴こえてきた。

「あの座敷童子ってば何処にいるんだろう?」

「ちょっとムカつくね」

  うふふっー、あはは、くすくすーっ。

「ちょっと何処にいるのよ!  出てきなさいよ~隠れているなんて卑怯だよ」とナオカちゃんが大きな声で叫んだ。

  その時。

「お姉さん達遊ぼうよ~」と言う声とぽんぽんと鞠をつく音が聴こえてきたのとほぼ同時に大木の後ろから座敷童子が姿を現した。

「あ、座敷童子だ!」とわたしとナオカちゃんが指差した。

「鞠つき楽しいよ」

  座敷童子は口元に手を当ててくすくすと笑っている。
「もうどうして隠れていたの?」

「そうだよ、笑ったりしてさ」

  わたしとナオカちゃんはくすくすと笑う座敷童子に尋ねた。

「だって、わたしを必死に探すお姉さん達の姿が面白いんだもん」

  座敷童子はそう答え鞠をぽーんぽんぽんとついた。可愛いけれどちょっと憎たらしい。

「それで座敷童子はわたし達と鞠つきがしたいのかな?」とナオカちゃんが聞くと座敷童子は、「うふふ、それはどうかな~?」と答えて笑った。

  そして、手に持っていたカラフルな鞠をぽーんと遠くへ投げた。鞠はコロコロと転がった。

「あ、鞠が転がってしまったよ~お姉さん拾ってきてお願い」

「自分で拾いなさいよ」とナオカちゃんが言うと座敷童子は小さな手を顔の前で合わせ「お願い拾ってきて」と可愛らしいポーズで言った。

「わかったよ仕方ないな」

  ナオカちゃんはコロコロと転がっている鞠を拾いに行くのでわたしもその後に続いた。途中後ろを振り向くと座敷童子はニヤリと笑っていた。

「本当に人騒がせな座敷童子だよね」

  ナオカちゃんは鞠を拾いながら言った。

「うん、そうだね」

  わたしは返事をしながらナオカちゃんが手にしている鞠をじっと眺め綺麗だなと思った。

「座敷童子~鞠を拾ってあげたよ」

  ナオカちゃんは鞠を高く持ち上げ座敷童子のいる方向に振り向いた。わたしも同時に振り向いたのだけど、

「座敷童子がいない!!」とわたしとナオカちゃんは口を揃えて叫んだ。

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