9 / 57
わたしと家族と座敷わらし
夕焼けと座敷童子
しおりを挟むわたしとナオカちゃんは昔と同じように公園から神社を抜けて家路につく。静寂に包まれた神社は夕日に包まれていた。
「ナオカちゃん夕焼けが綺麗だね」
「うん、こまたんが小さい頃もこうして時間が経つことも忘れて夕焼け空の下帰ったね」
ナオカちゃんはオレンジ色に染まった美しくて幻想的な空を見上げて言った。
あの頃とわたし達はそんなに変わっていないなと思いながら夕焼け空を見上げる。このまま大人にならずに子供のままでいたい。けれどやっぱり大人にもなってみたいなと、矛盾した考えがわたしの頭の中に浮かぶ。
その時、何処かからぽーんぽーんと鞠をつくような音が聴こえてきた。
「あはは、うふふっ! くすくす」と笑い声も同時に聴こえてきた。
「ナオカちゃんこの音と笑い声は!」わたしはナオカちゃんの曇りのない瞳を見て言った。
そして、わたし達は、口を揃えて、「座敷童子だ~!!」と言ってお互いの顔はを見る。それから「鞠をついてる音だ~」とほぼ同時に言った。
ぽーん、ぽーん、ぽんぽん。くすくす。
わたし達は辺りをキョロキョロ見渡した。けれど、座敷童子の姿はなかった。
「ナオカちゃん、あの音は座敷童子の鞠をつく音と笑い声だよね?」
「うん、きっとそうだよ。でも姿が見えないね。なんだかバカにされているみたいだね」
ナオカちゃんは辺りをキョロキョロ見回しながら悔しそうに唇を噛んだ。
うふふ、くすくす。あははっ。うふふーっ。なんて話しているとまたまた歌うような笑い声が聴こえてきた。
「あの座敷童子ってば何処にいるんだろう?」
「ちょっとムカつくね」
うふふっー、あはは、くすくすーっ。
「ちょっと何処にいるのよ! 出てきなさいよ~隠れているなんて卑怯だよ」とナオカちゃんが大きな声で叫んだ。
その時。
「お姉さん達遊ぼうよ~」と言う声とぽんぽんと鞠をつく音が聴こえてきたのとほぼ同時に大木の後ろから座敷童子が姿を現した。
「あ、座敷童子だ!」とわたしとナオカちゃんが指差した。
「鞠つき楽しいよ」
座敷童子は口元に手を当ててくすくすと笑っている。
「もうどうして隠れていたの?」
「そうだよ、笑ったりしてさ」
わたしとナオカちゃんはくすくすと笑う座敷童子に尋ねた。
「だって、わたしを必死に探すお姉さん達の姿が面白いんだもん」
座敷童子はそう答え鞠をぽーんぽんぽんとついた。可愛いけれどちょっと憎たらしい。
「それで座敷童子はわたし達と鞠つきがしたいのかな?」とナオカちゃんが聞くと座敷童子は、「うふふ、それはどうかな~?」と答えて笑った。
そして、手に持っていたカラフルな鞠をぽーんと遠くへ投げた。鞠はコロコロと転がった。
「あ、鞠が転がってしまったよ~お姉さん拾ってきてお願い」
「自分で拾いなさいよ」とナオカちゃんが言うと座敷童子は小さな手を顔の前で合わせ「お願い拾ってきて」と可愛らしいポーズで言った。
「わかったよ仕方ないな」
ナオカちゃんはコロコロと転がっている鞠を拾いに行くのでわたしもその後に続いた。途中後ろを振り向くと座敷童子はニヤリと笑っていた。
「本当に人騒がせな座敷童子だよね」
ナオカちゃんは鞠を拾いながら言った。
「うん、そうだね」
わたしは返事をしながらナオカちゃんが手にしている鞠をじっと眺め綺麗だなと思った。
「座敷童子~鞠を拾ってあげたよ」
ナオカちゃんは鞠を高く持ち上げ座敷童子のいる方向に振り向いた。わたしも同時に振り向いたのだけど、
「座敷童子がいない!!」とわたしとナオカちゃんは口を揃えて叫んだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
神様になった私、神社をもらいました。 ~田舎の神社で神様スローライフ~
きばあおき
ファンタジー
都内で営業事務として働く27歳の佐藤ゆかりは、色々あって(笑)神様から天界に住むことを勧められたが、下界で暮らしたいとお願い?したところ、神社の復興を条件にされてしまう。
赴任した神社は前任の神様が主祭神ではなく、本殿の悪神をおさえるのが仕事であった。
神社を発展させ、氏子を増やさないと存在が消えてしまう。
神格があがると新しい神の力、神威が使えるようになる。
神威を使って神域を広げ、氏子を増やし、更に神威を大きくすることができるのか。
ゆかりは自分の存在を護るため、更に豊かなスローライフも目指し、神使の仲間や氏子と神社復興ために奮闘する。
バトルは少なめです
椿の国の後宮のはなし
犬噛 クロ
キャラ文芸
※毎日18時 更新予定です※
すみません、2/1の予約公開を失敗しておりました…(日付を間違えてたー!)
2-2話は2/2 10時頃公開いたしました。
2-3話は2/2 18時に公開いたします。
架空の国の後宮物語。
若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。
有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。
しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。
幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……?
あまり暗くなり過ぎない後宮物語。
雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。
※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
狗神巡礼ものがたり
唄うたい
ライト文芸
「早苗さん、これだけは信じていて。
俺達は“何があっても貴女を護る”。」
ーーー
「犬居家」は先祖代々続く風習として
守り神である「狗神様」に
十年に一度、生贄を献げてきました。
犬居家の血を引きながら
女中として冷遇されていた娘・早苗は、
本家の娘の身代わりとして
狗神様への生贄に選ばれます。
早苗の前に現れた山犬の神使・仁雷と義嵐は、
生贄の試練として、
三つの聖地を巡礼するよう命じます。
早苗は神使達に導かれるまま、
狗神様の守る広い山々を巡る
旅に出ることとなりました。
●他サイトでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる