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わたしと家族と座敷わらし
座敷童子が見えるのは
しおりを挟むしばらくの間わたしとナオカちゃんはぼんやりと座敷童子が歩き去った神社を見ていた。
それから今わたしがいる公園内に目を向けると小さな子供たちが遊具で遊んだり鬼ごっこなどをしていてお母さん同士は立ち話をしている。
誰も座敷童子に注目なんてしていない。と言うか他の人には見えていないのかもしれない。
そんなことをぼんやりと考えているとナオカちゃんが「滑り台を滑ろうか」と言った。
「うん、滑ろうよ~」と答えたのとほぼ同時にわたしは滑り台に向かって走り出した。
「よし、滑るぞ~」ナオカちゃんもわたしの後を追いかけてきた。
わたしは滑り台の階段を登り「わ~い!」と声を上げてするすると滑る。十四歳になった今も滑り台で遊ぶことは楽しいのだ。
ナオカちゃんもわたしと同じように階段を登り「滑るぞ~」と叫び滑った。わたしより少しスピード感が出ていないけれどとても楽しそうな笑顔だった。
「ナオカちゃん、楽しいね」
「うん、こまたん楽しいね」
わたし達は顔を見合わせ笑った。
それからわたし達は何度も滑り台を登り滑った。ナオカちゃんと一緒に遊ぶ公園はやっぱり小さな頃と同じく楽しかった。
滑り台をナオカちゃんが逆走して駆け上がった。「ふふん! こまた~ん!」と滑り台のてっぺんから叫ぶ。
「あ、ナオカちゃんってば逆走したな~早く滑ってよ~」とわたしは下から叫ぶ。
「なんか滑り台のてっぺんから叫ぶと楽しいよ~こまた~ん! 気持ちいいよ」
なんて大きな声を出してこまたんなんて叫ばれると恥ずかしいよ。
「もうナオカちゃんってばこまたんなんて叫ばないでよ~恥ずかしいでしょ」
信じられないよ。二十七歳の大人が滑り台のてっぺんで叫んでいるなんてね。けれど、それがナオカちゃんらしいなとも思った。
「ふふん、さあ、滑ろう~」
ナオカちゃんは言いながら滑り台をするすると滑った。そして、地面に着地すると「イェーイ」と両手でピースを作り口角をきキュッと上げて笑った。
「わたしも逆走するぞ~」
わたしもナオカちゃんの真似をして滑り台を逆走した。それがなんだか楽しくて気持ちいい。てっぺんに着くとわたしは、「二十七歳のナオカちゃ~ん!」と叫んでやった。えへへ。
「あ、ちょっと大きな声で二十七歳なんて叫ばないでよ」
今度はナオカちゃんが滑り台の下からわたしを見上げて言った。
「ふふん、ナオカちゃんも叫んだんだからね」
滑り台のてっぺんにいるとなんだか清々しい気持ちになる。なんてちょっと大袈裟かもしれないけれど。
わたしは、「さあ、滑ろう~」と言って滑り台をするすると滑った。そして、地面に着地すると、イェーイと両手でピースを作った。
「あ、こまたんってばわたしの真似をしたな~真似っこたんだ~」と言ってナオカちゃんはあははと笑った。
「真似っこでもいいもんね~だ」
わたしは、えへへと笑いナオカちゃんの顔を見た。やっぱりナオカちゃんと一緒に遊ぶと楽しい。高校生のお姉ちゃんなんて公園で遊んでくれないし弟の鞠助なんて小学生のクセに勉強やゲームばかりして公園や外で遊ばないのだから。
やっぱりナオカちゃんがお姉ちゃんだったら良かったのにな。家《うち》にナオカちゃんが戻って来て嬉しいなとわたしは心から思った。
そして、わたしとナオカちゃんは滑り台やブランコにそれから鉄棒などでおもいっきり遊んだ。時間が経つのも忘れるくらい楽しくて気がつくと春の空はオレンジ色に染まっていた。
「そろそろ帰ろうか」と言ったナオカちゃんの顔はオレンジ色に染まっていた。「うん、帰ろう」そう返事をしたわたしの顔もきっとオレンジ色に染まっていただろうと思う。
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