上 下
6 / 57
わたしと家族と座敷わらし

公園

しおりを挟む

  その公園は神社の隣にあるそれほど大きくない近所の公園だ。

  幼い頃この公園でナオカちゃんと夕暮れまで遊んだ。今も時々友達やイトコと遊んだりしている。

  春の日差しが心地好い今日は小学生数人が遊具で遊びその親らしい人が何人かベンチに座っていた。

「さてさてこまたん砂場で遊ぶか?」

「えっ?  砂場~でも小さな子供が泥だんごを作って遊んでいるよ」わたしは砂場に目をやり言った。

「あ、そうだね。じゃあ、飲み物でも買ってベンチに座ろうか?」

  ナオカちゃんはそう言ったかと思うとスタスタと自動販売機に向かって歩き出した。もうナオカちゃんってばわたしの返事も待たずに勝手なんだから。

「こまたんはサイダーが好きだったよね。はい、わたしの奢りだよ」

  ナオカちゃんは自動販売機で買ったペットボトルのサイダーをわたしに渡した。

「ありがとう」

  まあ、ナオカちゃんの奢りなので嬉しくてニコニコと笑い受け取る。単純なわたしだ。

  わたしとナオカちゃんはベンチに座りサイダーを二人でゴクゴク飲んだ。シュワシュワとした炭酸の刺激がくせになりそうだ。

「ぷわ~スッキリ~」
「この刺激最高だ~」

   わたしとナオカちゃんはそう言ってほぼ同時にげっぷをした。

「あはは、ナオカちゃんってばげっぷした~」 わたしは口元に手を当てて笑った。

「こまたんこそげっぷしてるよ~」ナオカちゃんもがははと大きな口を開けて豪快に笑う。

「サイダーを飲むとげっぷが出ちゃうね」
「うん、出るよね~まあ、それも楽しいね」

  わたしとナオカちゃんは顔を見合わせ笑い合う。こうしているとなぜだか幼いあの頃に戻ったように感じる。

「ねえ、ナオカちゃんは大人になって変わったことってある?」

  わたしは笑って零れた涙を手の甲で拭っているナオカちゃんに尋ねた。

「ん?  変わったことね。う~ん、わたしはあんまり変わらないけど周りのみんなが変化したかな……だからわたし浮いちゃうんだよね」

「そっか。ナオカちゃんは大人なのに話をしていても年の差をあんまり感じないもんね」

「それって褒め言葉なのかな?」

「うん、もちろん褒め言葉だよ。だって、大人だからこうしなきゃいけないってなんだかツマンナイもん。ナオカちゃんは大人だけど自由って感じだからいいなと思うよ」

  わたしはそう言いながら大人になることがちょっとだけ怖く感じていた。だって、この先どうやって生きていけばいいかわからないしそれにいつか、みんな死んでしまうと思うと胸がドキドキする。

  そんなことを考えながらナオカちゃんの横顔をぼんやり眺めた。

「ん?  こまたんどうした?」

  ナオカちゃんがわたしの顔をじっと見て言った。

  わたしを見るナオカちゃんの目は透き通っていた。その濁りのない瞳に今までの人生どんなことを映してきたのかな?  楽しいこと、嬉しいこと、辛いこと悲しいことなどいろいろあったんじゃないかなと思う。

「大人になるのが怖くてこのまま子供のままでいたいなと思ったんだよ。でも、ナオカちゃんみたいな大人だったら楽しいかなと思ったの」

  わたしはそう答えナオカちゃんの透き通った目を見た。

「ふ~ん、こまたんはわたしみたいな大人になりたいんだ。世間からは冷たい目で見られるよ」

  ナオカちゃんはふふっと笑う。

「そうなの……」

「うん、だって、二十七歳フリーター女子だよ。しかも現在失業中。でもわたしは全然気にしてないからへっちゃらだよ」

  ナオカちゃんはそう言ってケラケラ笑う。

「……ナオカちゃん」

  ナオカは笑っているけれどちょっと寂しそうに見えたので何て言ったらいいのか言葉が見つからない。

「さてと、こまたんブランコにでも乗ろうか。鉄棒も楽しいかな。あっ!?」

  ナオカちゃんが驚いたような声を上げ指差した。

  その指先の方向に視線を向けるとおかっぱ頭に赤色のちゃんちゃんこを着た六歳か七歳くらいの女の子が鞠をついていた。

  あの女の子はまさか……。

  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうかわたしのお兄ちゃんを生き返らせて

なかじまあゆこ
児童書・童話
最悪な結末が……。 わたしの大好きなお兄ちゃんは、もうこの世にいない。 大好きだった死んだお兄ちゃんに戻ってきてもらいたくて、史砂(ふみさ)は展望台の下で毎日、「お兄ちゃんが戻ってきますように」と祈っている。そんな時、真っ白な人影を見た史砂。 それから暫くすると史砂の耳に悪魔の囁き声が聞こえてきて「お前のお兄ちゃんを生き返らせてほしいのであれば友達を犠牲にしろ」と言うのだけど。史砂は戸惑いを隠せない。 黒いカラスが史砂を襲う。その理由は? 本当は何が隠されているのかもしれない。どんどん迫り来る恐怖。そして、涙……。 最後まで読んでもらえると分かる内容になっています。どんでん返しがあるかもしれないです。 兄妹愛のホラーヒューマンそしてカラスが恐ろしい恐怖です。よろしくお願いします(^-^)/

鐘の音が鳴るその先へ

雪宮凛
恋愛
冬のある日、古森真守(こもりまもる)は、高台の上にある公園で一人の女性と出会った。 彼女の名前は遠野美羽(とおのみう)。 二人は毎日のように同じ公園で語らいを続け、次第に互いを意識し合う。 ――しかし、ある日を境に、美羽は公園に姿を見せなくなった。 とある男女に起こった、ちょっぴり不思議な物語。 小説家になろう様からの転載になります。

陰陽怪奇録

井田いづ
キャラ文芸
都の外れで、女が捻り殺された──「ねじりおに」と呼ばれ恐れられたその鬼の呪いを祓うは、怪しい面で顔を覆った男と、少年法師の二人組。 「失礼、失礼、勝手な呪いなど返して仕舞えば良いのでは?」 物理で都に蔓延る数多の呪いを"怨返し"する、胡乱な二人のバディ×異種×鬼退治録。 ※カクヨム掲載の『かきちらし 仮題陰陽怪奇録』の推敲版です。

わがままだって言いたくなる

もちっぱち
キャラ文芸
前作に登場する 【稼げばいいってわけじゃない】の 専業主婦の小松果歩が主役でお届けします。 その後の状況を 物語にしました。 初めての方でも 読みやすくなっているので ぜひご覧ください。 榊原絵里香の転生後のお話です。 榊原 晃が小松 晃となっています。 それはなぜかは本編を 読んでみてください。 表紙絵 せつむし 様

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ニンジャマスター・ダイヤ

竹井ゴールド
キャラ文芸
 沖縄県の手塚島で育った母子家庭の手塚大也は実母の死によって、東京の遠縁の大鳥家に引き取られる事となった。  大鳥家は大鳥コンツェルンの創業一族で、裏では日本を陰から守る政府機関・大鳥忍軍を率いる忍者一族だった。  沖縄県の手塚島で忍者の修行をして育った大也は東京に出て、忍者の争いに否応なく巻き込まれるのだった。

MIDNIGHT

邦幸恵紀
キャラ文芸
【現代ファンタジー/外面のいい会社員×ツンデレ一見美少年/友人以上恋人未満】 「真夜中にはあまり出歩かないほうがいい」。 三月のある深夜、会社員・鬼頭和臣は、黒ずくめの美少年・霧河雅美にそう忠告される。 未成年に説教される筋合いはないと鬼頭は反発するが、その出会いが、その後の彼の人生を大きく変えてしまうのだった。 ◆「第6回キャラ文芸大賞」で奨励賞をいただきました。ありがとうございました。

たまごっ!!

きゃる
キャラ文芸
都内だし、駅にも近いのに家賃月額5万円。 リノベーション済みの木造の綺麗なアパート「星玲荘(せいれいそう)」。 だけどここは、ある理由から特別な人達が集まる場所のようで……!? 主人公、美羽(みう)と個性的な住人達との笑いあり涙あり、時々ラブあり? なほのぼのした物語。 大下 美羽……地方出身のヒロイン。顔は可愛いが性格は豪胆。 星 真希……オネェ。綺麗な顔立ちで柔和な物腰。 星 慎一……真希の弟。眼光鋭く背が高い。 鈴木 立夏……天才子役。 及川 龍……スーツアクター。 他、多数。

処理中です...