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わたしと家族と座敷わらし
公園
しおりを挟むその公園は神社の隣にあるそれほど大きくない近所の公園だ。
幼い頃この公園でナオカちゃんと夕暮れまで遊んだ。今も時々友達やイトコと遊んだりしている。
春の日差しが心地好い今日は小学生数人が遊具で遊びその親らしい人が何人かベンチに座っていた。
「さてさてこまたん砂場で遊ぶか?」
「えっ? 砂場~でも小さな子供が泥だんごを作って遊んでいるよ」わたしは砂場に目をやり言った。
「あ、そうだね。じゃあ、飲み物でも買ってベンチに座ろうか?」
ナオカちゃんはそう言ったかと思うとスタスタと自動販売機に向かって歩き出した。もうナオカちゃんってばわたしの返事も待たずに勝手なんだから。
「こまたんはサイダーが好きだったよね。はい、わたしの奢りだよ」
ナオカちゃんは自動販売機で買ったペットボトルのサイダーをわたしに渡した。
「ありがとう」
まあ、ナオカちゃんの奢りなので嬉しくてニコニコと笑い受け取る。単純なわたしだ。
わたしとナオカちゃんはベンチに座りサイダーを二人でゴクゴク飲んだ。シュワシュワとした炭酸の刺激がくせになりそうだ。
「ぷわ~スッキリ~」
「この刺激最高だ~」
わたしとナオカちゃんはそう言ってほぼ同時にげっぷをした。
「あはは、ナオカちゃんってばげっぷした~」 わたしは口元に手を当てて笑った。
「こまたんこそげっぷしてるよ~」ナオカちゃんもがははと大きな口を開けて豪快に笑う。
「サイダーを飲むとげっぷが出ちゃうね」
「うん、出るよね~まあ、それも楽しいね」
わたしとナオカちゃんは顔を見合わせ笑い合う。こうしているとなぜだか幼いあの頃に戻ったように感じる。
「ねえ、ナオカちゃんは大人になって変わったことってある?」
わたしは笑って零れた涙を手の甲で拭っているナオカちゃんに尋ねた。
「ん? 変わったことね。う~ん、わたしはあんまり変わらないけど周りのみんなが変化したかな……だからわたし浮いちゃうんだよね」
「そっか。ナオカちゃんは大人なのに話をしていても年の差をあんまり感じないもんね」
「それって褒め言葉なのかな?」
「うん、もちろん褒め言葉だよ。だって、大人だからこうしなきゃいけないってなんだかツマンナイもん。ナオカちゃんは大人だけど自由って感じだからいいなと思うよ」
わたしはそう言いながら大人になることがちょっとだけ怖く感じていた。だって、この先どうやって生きていけばいいかわからないしそれにいつか、みんな死んでしまうと思うと胸がドキドキする。
そんなことを考えながらナオカちゃんの横顔をぼんやり眺めた。
「ん? こまたんどうした?」
ナオカちゃんがわたしの顔をじっと見て言った。
わたしを見るナオカちゃんの目は透き通っていた。その濁りのない瞳に今までの人生どんなことを映してきたのかな? 楽しいこと、嬉しいこと、辛いこと悲しいことなどいろいろあったんじゃないかなと思う。
「大人になるのが怖くてこのまま子供のままでいたいなと思ったんだよ。でも、ナオカちゃんみたいな大人だったら楽しいかなと思ったの」
わたしはそう答えナオカちゃんの透き通った目を見た。
「ふ~ん、こまたんはわたしみたいな大人になりたいんだ。世間からは冷たい目で見られるよ」
ナオカちゃんはふふっと笑う。
「そうなの……」
「うん、だって、二十七歳フリーター女子だよ。しかも現在失業中。でもわたしは全然気にしてないからへっちゃらだよ」
ナオカちゃんはそう言ってケラケラ笑う。
「……ナオカちゃん」
ナオカは笑っているけれどちょっと寂しそうに見えたので何て言ったらいいのか言葉が見つからない。
「さてと、こまたんブランコにでも乗ろうか。鉄棒も楽しいかな。あっ!?」
ナオカちゃんが驚いたような声を上げ指差した。
その指先の方向に視線を向けるとおかっぱ頭に赤色のちゃんちゃんこを着た六歳か七歳くらいの女の子が鞠をついていた。
あの女の子はまさか……。
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