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第七章 吉田さんと動物達そして
1 吉田さんのTシャツ
しおりを挟むこの日は朝から吉田さんがまりみど古書カフェ店に顔を出した。
人の気配がしたので元気よく「いらっしゃいませ」と声を出すと入って来たのはハイビスカス柄のTシャツを着た吉田さんだった。
「あ、吉田さん、おはようございます」
「梅木さん、おはようございます」
吉田さんは柔らかくて優しい微笑みをわたしに向けた。
「今日もハイビスカス柄のTシャツなんですね。そのハイビスカス柄以外のTシャツは持っていないんですか?」
わたしは、ずっと聞きたくてうずうずしていたことを勇気を出して聞いた。
「……梅木さん、ちょっと失礼ではありませんか?」
吉田さんは拗ねたようにくちびるを尖らせた。
「あ、だって、いつもハイビスカス柄のTシャツなので素朴な疑問ですよ……」
わたしはまたやらかしてしまったかな。
「はははっ。まあいいですよ。確かに俺が着ているのはハイビスカス柄のTシャツばかりですからね」
吉田さんは口を大きく開けて笑った。
「で、他のTシャツは持っていないのですか?」
「あの梅木さん……まだ聞きますか? 他にもシーサー柄などいろいろTシャツは持っていますがハイビスカス柄がマイブームなんですよ」
吉田さんは顔をくしゃくしゃにして笑った。良い笑顔だなとわたしは思った。
「マイブームなんですか。あはははっ」
ハイビスカス柄のブームが吉田ファッションに巻き起こっていると思うと可笑しくて笑えてくる。
「梅木さん、マイブームって……それと、笑っていますね」
「あ、いえ、笑っていません。あ、やっぱり笑っているかもです」
わたしは正直に答えた。
「梅木さんには敵わないですよ」
吉田さんは弱った表情になりそれから少し長めの前髪をかきあげ笑った。
「わたし思ったことを口に出してしまうんですよ。すみません」
わたしは、ぺこりと軽く頭を下げた。
「構わないですよ。それは正直ってことですしね」
わたしが顔を上げると吉田さんは花が開いたような優しい笑みを浮かべていた。
「怒っていなくて良かったです」
わたしはホッとして笑顔になった。
今日はどんな一日になるのかな楽しいことがたくさんあるといいな。うん、きっとお客さんもたくさん来てくれて楽しく活気ある古書カフェ店になることでしょう。
何気なく吉田さんを見るとにっこり笑みを浮かべていた。
時計の針は午前十時を指していた。
こうして、まりみど古書カフェ店はわたしとみどりちゃんに吉田さんも加わりスタートしたのでした。
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