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第六章 真理子

8 本が大好き

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「また来ますね」と笑顔を残してお客さんは帰っていった。

「ありがとうございました。また是非お越しください」とわたしとみどりちゃんも元気良くお客さんを見送った。

    この日は幸せな気持ちで仕事ができた。お客さんも少しずつではあるけれど増えてきた。良かった、頬が気づくと緩んでいる。

  なんだか嬉しくて楽しくてふんふんふんふんと鼻歌なんかも歌ってしまった。

「真理子、楽しそうだね」

  みどりちゃんはわたしの顔を見てにひひっと笑った。

「うん、楽しいよ」

  わたしの高い位置で結んだポニーテールの髪の毛が左右にゆらゆらと揺れた。

「真理子は元気いっぱいなのがらしいね!」

「うん、お馬鹿だけど元気なのがわたしだもんね」

「うん、真理子って言えばアホで間抜けだもんね。それが真理子のトレード・マーク」

「うん、そうそうアホで間抜けがわたしだもんね。チャームポイント、って、ちょっと待ってよみどりちゃん、それって酷くな~い」

  わたしは、ぷくぷくぷくーと頬を膨らませた。みどりちゃんはニカッと笑った。

「あははっ、真理子そんなに怒らないの。真理子は良い子だよ」

「本当にみどりちゃん」

  わたしとみどりちゃんは顔を見合わせて笑った。


  
  仕事が終わり自室の畳の上でごろごろした。今日もい草の香りが心地よい。夜にはやはり茶和ちゃん達がやって来た。

  みどりちゃんの作ってくれたご飯を動物達と一緒に食べた。最近わたしの生活はこれが日課になりつつある。

  部屋の一角に積まれた本。どんどん増えていく本の山にそれから服の山。わたしは片付けが苦手なのだ。気がつくとたくさんの物に囲まれて生活をしている。

  みどりちゃんから片付けたらと言われるけれど物の在りかは分かっているのでこれでいいのかもとも思っている。

  けれど、女の子としては失格だよねとは思う。ああ、深い溜め息が出るのだ。

  そんな部屋の一角に積まれた本を手に取る。ぺらぺらページを捲っていると素敵な夢の世界に惹き込まれていくのだ。本は人を選んだりしないし、いつでもそこにある。

  夢をみたい時には夢をみさせてくれて、何かが物足りない冒険したいなと思えば大人になってもワクワクできる冒険小説の世界に旅立てば現実にはあり得ない世界がようこそと両手を広げてくれる。

  本の中にはいろいろな世界があり夢や希望に友情や愛をみさせてくれる。

  わたしは、本が好きなんだなと思った。古書カフェ店の店長になって良かったなと思う。時間がある時は好きなだけ本を読むこともできるのだから。

  
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