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第六章 真理子

7 古書店で働けて良かった

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「みどりちゃん、やっぱり豆腐チャンプルーは最高だね。ゴーヤは入ってない方が美味しいよ」

  わたしは、豆腐チャンプルーをパクパク食べながら言った。

「そうかな?  ゴーヤ入りも美味しいけどね。うん、でもそうだね。豆腐の方が野菜の甘みがよく出るね。ゴーヤはちょっと苦いもんね。まあ苦いのそれも良くてあのゴーヤのシャキシャキ感もわたしは好きだけどね」

  みどりちゃんは豆腐チャンプルーの野菜を口に運びながら言った。

  わたしからするとゴーヤが美味しいなんて信じられないけれど食べ物の好みは人各々だもんね。

  けれど、わたしはやっぱり豆腐チャンプルーが好きだ。美味しくてご飯もどんどん進む。もりもり食べてしまうよ。

「真理子、お客さんに食後のさんぴん茶を持っていてよ」

  お味噌汁をずずーっと啜っているわたしにみどりちゃんが言った。

「あ、うん。持っていくね」

  料理もまともに出来ないのだから接客くらいしないとね。

  わたしは、温かいさんぴん茶をお客さんに持って行った。すると、お客さんは本に目を落としていた。さっきわたしとじゃんけんぽんをして買った猫の絵本だ。

  声を掛けようとしたけれどお客さんは絵本に夢中になっていたのでためらってしまった。そんなに楽しい絵本なのか幸せそうに微笑みながらページを捲っている。

  けれど、ずっと突っ立っているわけにもいかないのでわたしはお客さんに声を掛けようとしたその時、

  わたしは見てしまった。お客さんの瞳からポタリと涙が流れ落ちたのを。

  
  
  それほどまで感動的な絵本だったのだろうか?  それとも何か悲しいことでもあったのかなと気になった。

  絵本で感動してもらえたのであれば嬉しいけれど何かあったのかなと少し心配になってしまいわたしは、その場にぼんやりと立ち尽くしてしまった。

  気がつくとお客さんは涙を拭い笑顔になり絵本をぱらぱらと捲っていた。きっと何でもなかったんだとホッとした。

「あの、さんぴん茶をどうぞ」

 「わっ、ありがとうございます」

  お客さんは顔を上げてにっこりと微笑んでくれた。その笑顔は花がぱっと咲いたようなそんな微笑みだった。

「……なんだ良かった」

「はい?」

  わたしは、思わず声に出してしまったのでお客さんは不思議そうに首を傾げているではないか。またやってしまった。

「あ、その……いえ、何でもありません。その絵本面白いのかなと思ったんですよ。楽しそうに読まれていたので」

  わたしは、慌てて喋ったので早口になってしまった。

「この絵本ですか?  はい、とても可愛らしくて面白くてほっこりして元気になれますよ」

  お客さんのその表情は幸せそうだった。

「嬉しいです。この店で買って頂いた本を喜んで頂けて」

  この時、わたしはこの古書カフェ店で働くことができて本当に良かったなと思った。
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