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第六章 真理子

2 今日のまりみど古書カフェ店は

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  道行く人に気がついてもらえるようにお店の前に手書きの看板を出す。

  今日のカフェメニューや本のセール内容を書いた。写真もプラスしておすすめの本やみどりちゃんが作った美味しそうな料理の写真もペタペタ貼り付けた。

  それから入口の両脇に置いているシーサーの置物にも「おはよう」と挨拶をする。シーサーの周りは綺麗にした方がいいと聞いたことがあるので箒で念入りに掃く。シーサーがようこそとお客さんを迎え入れてくれそうだ。

「皆さん~まりみど古書カフェ店ですよ~」

  わたしは、店の前で声を出して気合いを入れた。これで良し。
  
  今日の沖縄も朝から眩しい太陽の光りがキラキラと降り注ぐ。これは暑くなりそうだ。この空のように幸せがキラキラ舞い降りてくる一日になるといいな。

  わたしは太陽に向いうーんと両腕を伸ばし大きな伸びをした。

  まりみど古書カフェ店の一日の始まりです。

  
  
  期待しつつも半信半疑だった。たくさんのお客さんが来てくれることを願ってはいたけれどそんなに上手くいかないかもしれないなと心の片隅で思っていた。

「みどりちゃん、びっくりだよ。どうしたのかな? これは夢じゃないよね?」

  わたしは店内とみどりちゃんの顔を交互に見て言った。

「……ま、真理子、夢じゃないみたいだよ」

  いつも冷静で落ち着いているみどりちゃんも口をぱくぱくさせて慌てている。

  だって、いつも閑古鳥が鳴いていた店内がお客さんで賑わっているのだから。書棚の前に何人ものお客さんがいる。これは夢なのかもしれないと考えてしまう。

  けれど、どうやら夢ではないようだ。わたしは、自分のほっぺたをぎゅーとつねる。頬に痛みを感じる。それでも心配なのでみどりちゃんのほっぺたもつねってみた。

「真理子、痛いじゃない!  何をするのよ」

  みどりちゃんが目を三角にして怒っている。

「やったーみどりちゃんが痛がっている~夢じゃない良かった」

  わたしは嬉しくてニコニコと笑った。

「真理子~やったーじゃないよ。頬が痛いよ」

   みどりちゃんも怒りながらもなんだか嬉しそうだった。

  まりみど古書カフェ店始まって以来の大盛況なのだから。わたしもみどりちゃんも嬉しくなる。
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