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第五章 吉田さん

11 動物達と吉田さん

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  わたしとみどりちゃん、それから動物のお客さん達はテーブルの上に並べられたみどりちゃん手作りの料理を完食した。

「ごちそうさまでした」と皆で手を合わせた。動物達のその仕草が可愛らしくて微笑ましい気持ちになった。ヤンバちゃんなんて羽と羽を合わせているのだから可愛くて面白くもある。

  それからしばらくするとみどりちゃんがカモミールティーを淹れてくれた。

  温かいカモミールティーはリンゴのような甘酸っぱい香りがして疲れた夏の身体が癒される。

「ねえ、皆。吉田さんとここで知り合ったのかな?」

  わたしは、ずっと聞いてみたかったことをおもいきって聞いてみた。

  動物達は一瞬カモミールティーを飲む手を止めわたしをじっと見つめた。

「吉田さんとはここで知り合いましたにゃん。わたしが近所をお腹を空かせてにゃんにゃんと歩いていると吉田さんがにゃんちゃんお腹空いてないかい?  と言ってご飯を分けてくれました」

  茶和ちゃんは、過去を思い出し懐かしそうに目を細めた。

「わたしも同じくです。わたしがこっこーと散歩していたその時、吉田さんが、わっ、ヤンバルクイナがどうしてここにいるんだ。その顔はお腹空かせているんだねと言ってご飯を食べさせてくれました。こっこー」

  ヤンバちゃんは嬉しかったなと言って羽をバタバタさせた。

「わたしも同じくですワン。吉田さんがお腹を空かせていたわたしに優しい手を差し伸べてくれましたワン」

  チワワンちゃんも嬉しそうに語った。

  どうやら古書カフェ店にやって来る動物のお客さんは吉田さんに助けられた仲間達だったようだ。

  
  二階の自室に戻りごろんと横になる。い草の良い香りが心地好い。

  今日一日をぼんやりと振り返る。いろいろなことがあったな。那覇の町で買い物をしたり吉田さんを発見して跡をつけてみたり。

  なんだか探偵気分になれてちょっとだけ楽しかったかな。

  堤防によじ登れなくて伸ばしてくれた大きな吉田さんの手。その手はぽかぽかしていて温かくて優しい人だなと感じた。

  猫の頭を優しく撫でる吉田さんの横顔。ゴーヤをびゅーんと飛ばして拾おうとして転びそうになったわたしを助けてくれた吉田さん。

   太陽が降り注ぐ下で食べたアイスキャンディー冷たくて美味しかった。

  ハイビスカス柄のTシャツがよく似合う吉田さんのことばかりが頭の中にふわふわふわりと浮かんだ。

  普段は何をしているのか教えてもらえず気になったままだ。何も分からず探偵失格だよね。

  ただ一つ分かったことがある。それは、吉田さんが優しい人であることだ。人間だけではなく動物にも優しい人だった。
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