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第五章 吉田さん

6 沖縄の太陽が輝いている

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「梅木さん、笑っていませんか?」

  吉田さんが、ニヤリと笑うわたしの顔を覗き込み聞いた。

「ふふん、なんでもありませんよ」

「うーん、なんだか怪しく感じますけどまぁいいか」

  吉田さんは、首を傾げてそれから笑った。

  今回は吉田さんに勝ったかなと心の中でガッツポーズを決めた。ずっと負けっぱなしでは納得いかないもんね。

「やっぱり笑っていますね」

「いいえ笑っていませんよ~」

  わたしと吉田さんは、「笑っていますよね」、「笑っていませんよ~」と言い合い帰途につく。

  途中で可愛らしい猫を見つけ吉田さんが、「お~猫ちゃん、可愛いね。こっちにおいで」なんて言ってしゃがみ込み猫の頭を優しく撫でた。

  吉田さんの猫の頭を撫でるその姿がなんだか大きな猫が小さな猫の頭を撫でているように見え不思議な感覚を覚えた。

  わたしも吉田さんの隣にしゃがみ可愛らしい猫と吉田さんを見比べた。

  猫は吉田さんに頭を撫でてもらい嬉しそうに目を細めていた。


  
  それから、吉田さんが帰り道の途中で暑いのでアイスキャンデーを奢ってあげますよと言ってくれのでわたしは有り難く奢ってもらった。おまけとしてさんぴん茶も付けてくれた。

  わたしと吉田さんは沖縄の太陽がキラキラ輝く道をアイスキャンデーとさんぴん茶を飲みながら歩いた。

  アイスキャンデーは冷たくて頭がキーンとなった。けれど暑くてたまらない体を冷やしてくれてスッキリした。さんぴん茶もゴクリと飲むとアイスキャンデーの甘さで渇いた喉がちょうど良い感じに潤った。

「吉田さん、暑い時に食べるアイスキャンデーは最高ですね」

  わたしはゴーヤの入っているスーパーの袋をぶんぶん振り回しながら歩いた。

「そうですね。暑い時にはやっぱり冷たいものが一番ですね。って梅木さん!」

「……あっ!」

  わたしがぶんぶん振り回していたゴーヤ入っているスーパーの袋がわたしの手から離れビューンと飛んだ。

  これは、大変だ。

  わたしは、待ってとゴーヤが入っているスーパーの袋を追いかけ手を伸ばしたその時、バランスを崩した。

  あ、駄目だ転ぶ!

「梅木さん、危ない!」

  吉田さんが叫んだ。

  そして、転びそうになっているわたしを吉田さんが後ろからギュッと腕を引っ張り助けてくれた。

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