上 下
49 / 75
第五章 吉田さん

5 吉田さんの秘密は?

しおりを挟む

  吉田さんの言葉で気がついた。でも、だけどホテルの仕事とは違い古書カフェ店はわたし自身がやってみたいと思った。

「そうでしたか。沖縄は良いところですもんね。まあ、那覇は最近都会化してきましたけどね」

「それでも独特の良い空気が流れていますよ。わたしはやっぱり沖縄が好きです」

  海では地元の人から観光客までが楽しそうに泳いでる。わたしと吉田さんはしばらくの間黙って海とそこで泳ぐ人達を眺めていた。

「吉田さんは普段何をされているんですか?」

  わたしは疑問に思っていたことを勇気を出して聞いてみた。

「気になりますか?」

  吉田さんは、わたしの目を見て言った。

「はい、気になります」

「気になるんですね?  でも教えてあげません。シークレットですよ」

  吉田さんは悪戯っぽい笑顔を浮かべた。

「えっ、それってちょっとズルくないですか?」

「そう言われてもね」

  クスクス笑う吉田さん。

「教えてくれるのかなと思わせて教えてくれないなんて」

   可笑しそうに笑う吉田さんは何を考えているのかよく分からない猫みたいな人だなと思った。

  だからこそより興味を持ってしまうのだ。


  「梅木さん、そんなに膨れなくてもいいじゃないですか。まあ、そのうち教えてあげますよ」

  吉田さんは、柔らかな笑みを浮かべた。

「納得いかないですけど……分かりました。いつかきっと教えてくださいね」

「はい、きっとそのうち」

  真夏の太陽が燦々と降り注ぎ海を照らす。波の上ビーチは都会の真ん中にあるビーチで海の上に道路が走りけして南国ムードがあるわけではないけれど、それでも海は透明度がありキラキラと輝いている。

「梅木さん、暑くなってきましたね。そろそろ帰りますか?」

  吉田さんはそう言って立ち上がった。

「はい、そうですね。暑いですね」

  吉田さんは、堤防の上からひょーいと飛び降り着地。

「梅木さん、降りられますか?  無理だったら手を貸しますよ」

  くふふと笑い手を伸ばす吉田さん。

「大丈夫ですよ。登るのは大変だったけど降りるのは簡単ですよ」

  わたしは、ぴょーんと飛び降りた。お尻にドーンと振動はあったけれどなんとか着地した。

  吉田さんの不思議な秘密を暴こうと思ったけれど上手く交わされてしまった。けれどいつかきっと暴いてみせるからねとわたしはニヤリと笑った。

  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あやかしのお助け屋の助手をはじめました

風見ゆうみ
キャラ文芸
千夏小鳥(ちなつことり)は幼い頃から、普通の人には見ることができない『妖怪』や『あやかし』が見えていた。社会人になった現在まで見て見ぬふりをして過ごしていた小鳥だったが、同期入社で社内ではイケメンだと騒がれている神津龍騎(かみづりゅうき)に小さな妖怪が、何匹もまとわりついていることに気づく。 小鳥が勝手に『小鬼』と名付けているそれは、いたずら好きの妖怪だ。そんな小鬼が彼にペコペコと頭を下げているのを見た小鳥はその日から彼が気になりはじめる。 ある日の会社帰り、龍騎が日本刀を背中に背負っていることに気づいた小鳥はつい声をかけてしまうのだが――

ガダンの寛ぎお食事処

蒼緋 玲
キャラ文芸
********************************************** とある屋敷の料理人ガダンは、 元魔術師団の魔術師で現在は 使用人として働いている。 日々の生活の中で欠かせない 三大欲求の一つ『食欲』 時には住人の心に寄り添った食事 時には酒と共に彩りある肴を提供 時には美味しさを求めて自ら買い付けへ 時には住人同士のメニュー論争まで 国有数の料理人として名を馳せても過言では ないくらい(住人談)、元魔術師の料理人が 織り成す美味なる心の籠もったお届けもの。 その先にある安らぎと癒しのひとときを ご提供致します。 今日も今日とて 食堂と厨房の間にあるカウンターで 肘をつき住人の食事風景を楽しみながら眺める ガダンとその住人のちょっとした日常のお話。 ********************************************** 【一日5秒を私にください】 からの、ガダンのご飯物語です。 単独で読めますが原作を読んでいただけると、 登場キャラの人となりもわかって 味に深みが出るかもしれません(宣伝) 外部サイトにも投稿しています。

のろいたち〜不老不死の陰陽師の物語〜

空岡
キャラ文芸
ポルターガイストに悩まされていたレイン・カルナツィオーネは、ジャポネの陰陽師ヨミと出会う。 ヨミは自分の不老不死の呪いを解くために旅をしており、身寄りのないレインはヨミの弟子になることに。 旅を共にするにつれ、ヨミの生い立ちを知り、レインもまた、ヨミの運命の輪に巻き込まれていく。 ヨミとレインの、不老不死を巡る旅路の果ての物語。

サザン・ホスピタル 短編集

くるみあるく
青春
2005年からしばらくWeb上で発表していた作品群。 本編は1980~2000年の沖縄を舞台に貧乏金髪少年が医者を目指す物語。アルファポリスに連載中です。 この短編は本編(長編)のスピンオフ作品で、沖縄語が時折出てきます。 主要登場人物は6名。  上間勉(うえま・つとむ 整形外科医)  東風平多恵子(こちんだ・たえこ 看護師)  島袋桂(しまぶくろ・けい 勉と多恵子の同級生 出版社勤務)  矢上明信(やがみ・あきのぶ 勉と多恵子の同級生 警察官)  粟国里香(あぐに・りか 多恵子の親友で看護師)  照喜名裕太(てるきな・ゆうた 整形外科医) 主人公カップルの子供である壮宏(たけひろ)と理那(りな)、多恵子の父母、サザン・ホスピタルの同僚たちが出たりします。

はじまりはいつもラブオール

フジノシキ
キャラ文芸
ごく平凡な卓球少女だった鈴原柚乃は、ある日カットマンという珍しい守備的な戦術の美しさに魅せられる。 高校で運命的な再会を果たした柚乃は、仲間と共に休部状態だった卓球部を復活させる。 ライバルとの出会いや高校での試合を通じ、柚乃はあの日魅せられた卓球を目指していく。 主人公たちの高校部活動青春ものです。 日常パートは人物たちの掛け合いを中心に、 卓球パートは卓球初心者の方にわかりやすく、経験者の方には戦術などを楽しんでいただけるようにしています。 pixivにも投稿しています。

禁色たちの怪異奇譚 ~ようこそ、怪異相談事務所へ。怪異の困りごと、解決します~

出口もぐら
キャラ文芸
【毎日更新中!】冴えないおっさんによる、怪異によって引き起こされる事件・事故を調査解決していくお話。そして、怪異のお悩み解決譚。(※人怖、ダーク要素強め)怪異のお姉さんとの恋愛要素もあります。 【あらすじ】  大学構内掲示板に貼られていたアルバイト募集の紙。平凡な大学生、久保は時給のよさに惹かれてそのアルバイトを始める。  雇い主であるくたびれた中年、見藤(けんどう)と、頻繁に遊びに訪れる長身美人の霧子。この二人の関係性に疑問を抱きつつも、平凡なアルバイト生活を送っていた。  ところがある日、いつものようにアルバイト先である見藤の事務所へ向かう途中、久保は迷い家と呼ばれる場所に迷い込んでしまう ――――。そして、それを助けたのは雇い主である見藤だった。 「こういう怪異を相手に専門で仕事をしているものでね」 そう言って彼は困ったように笑ったのだ。  久保が訪れたアルバイト先、それは怪異によって引き起こされる事件や事故の調査・解決、そして怪異からの依頼を請け負う、そんな世にも奇妙な事務所だったのだ。  久保はそんな事務所の主――見藤の人生の一幕を垣間見る。 お気に入り🔖登録して頂けると励みになります! ▼この作品は「小説家になろう」にも投稿しています。

古からの侵略者

久保 倫
キャラ文芸
 永倉 有希は漫画家志望の18歳。高校卒業後、反対する両親とケンカしながら漫画を描く日々だった。  そんな状況を見かねた福岡市在住で漫画家の叔母に招きに応じて福岡に来るも、貝塚駅でひったくりにあってしまう。  バッグを奪って逃げるひったくり犯を蹴り倒し、バッグを奪い返してくれたのは、イケメンの空手家、壬生 朗だった。  イケメンとの出会いに、ときめく永倉だが、ここから、思いもよらぬ戦いに巻き込まれることを知る由もなかった。

夫は平然と、不倫を公言致しました。

松茸
恋愛
最愛の人はもういない。 厳しい父の命令で、公爵令嬢の私に次の夫があてがわれた。 しかし彼は不倫を公言して……

処理中です...