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第四章 新しい始まりの日
10 じゃんけん楽しかったと可愛らしいお客様
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「お買い上げありがとうございました」
わたしはレジカウンターで半額と打った。お客さんの買った本は人生に勝利する哲学書なのかビジネス書なのかよく分からないけれどそんな内容の本だった。じゃんけんに見事に勝利しているじゃないのと思うと可笑しくなった。
「また来ますね。お仕事頑張ってくださいね」とお客さんは優しい笑顔で微笑んだ。
「はい、ありがとうございます。また是非来てくださ~い」とわたしは元気よく挨拶をした。
わたしとみどりちゃんはお客さんの後ろ姿を見送った。
「真理子、じゃんけんに見事に負けて笑えたよ。やっぱり人生に勝利する本なんて買う人はじゃんけんにも勝利するのかな~」
みどりちゃんは肩を震わせてぷるぷる笑っているんだから嫌な子だ。
「ふん、たまには負けることだってあるんだもんね」
わたしは、ぷくぷくぷくりーんこと膨れた。
いいもんね、本が半額になって喜んでくれたのだからまたご来店してくれることでしょう。わたしは前向きに考えることにした。
そのあとの店内はしーんとした。人生に勝利する本を買ったお客さんが帰ったあとはパタリと客足が途絶えた。
「真理子、そろそろ閉店にしようか」
「うん、そうだね。もう二十時になったね。わたしお腹が空いた~」
今日のお客さんは真奈ちゃんを入れて二人かと思うと寂しく感じるけれど、それでも大きく前進した。まだまだこれからだ。それよりも今はお腹が空いた。ご飯を食べよう。
シャッターを下ろした後わたし達はみどりちゃんが作ってくれた沖縄そばと豆腐チャンプルーをお店のテーブルで食べた。
みどりちゃんの作ってくれる料理はなかなか美味しくて箸が進む。
「この沖縄そば美味しいね。みどりちゃんは料理の才能があるかもね」
「えっ、本当に! 嬉しい、あ、でも何も出ないからね」
みどりちゃんはちょっと照れたように笑った。
その時、
にゃんにゃんにゃん、こっこっこー、わんわんわんわんと可愛らしい鳴き声が聞こえてきた。
この声はと思うのとほぼ同時に店の裏口から可愛らしい動物のお客さんがご来店した。
「茶和ちゃん、ヤンバちゃん、チワワンちゃんだ~」
「こんばんは、にゃん」、「こんばんは、こっこっこー」、「こんばんは、わんわ~ん」と可愛らしい動物達は挨拶をした。
どうやらまりみど古書カフェ店には夜になると可愛らしい動物のお客さんがやって来るようでした。
わたしはレジカウンターで半額と打った。お客さんの買った本は人生に勝利する哲学書なのかビジネス書なのかよく分からないけれどそんな内容の本だった。じゃんけんに見事に勝利しているじゃないのと思うと可笑しくなった。
「また来ますね。お仕事頑張ってくださいね」とお客さんは優しい笑顔で微笑んだ。
「はい、ありがとうございます。また是非来てくださ~い」とわたしは元気よく挨拶をした。
わたしとみどりちゃんはお客さんの後ろ姿を見送った。
「真理子、じゃんけんに見事に負けて笑えたよ。やっぱり人生に勝利する本なんて買う人はじゃんけんにも勝利するのかな~」
みどりちゃんは肩を震わせてぷるぷる笑っているんだから嫌な子だ。
「ふん、たまには負けることだってあるんだもんね」
わたしは、ぷくぷくぷくりーんこと膨れた。
いいもんね、本が半額になって喜んでくれたのだからまたご来店してくれることでしょう。わたしは前向きに考えることにした。
そのあとの店内はしーんとした。人生に勝利する本を買ったお客さんが帰ったあとはパタリと客足が途絶えた。
「真理子、そろそろ閉店にしようか」
「うん、そうだね。もう二十時になったね。わたしお腹が空いた~」
今日のお客さんは真奈ちゃんを入れて二人かと思うと寂しく感じるけれど、それでも大きく前進した。まだまだこれからだ。それよりも今はお腹が空いた。ご飯を食べよう。
シャッターを下ろした後わたし達はみどりちゃんが作ってくれた沖縄そばと豆腐チャンプルーをお店のテーブルで食べた。
みどりちゃんの作ってくれる料理はなかなか美味しくて箸が進む。
「この沖縄そば美味しいね。みどりちゃんは料理の才能があるかもね」
「えっ、本当に! 嬉しい、あ、でも何も出ないからね」
みどりちゃんはちょっと照れたように笑った。
その時、
にゃんにゃんにゃん、こっこっこー、わんわんわんわんと可愛らしい鳴き声が聞こえてきた。
この声はと思うのとほぼ同時に店の裏口から可愛らしい動物のお客さんがご来店した。
「茶和ちゃん、ヤンバちゃん、チワワンちゃんだ~」
「こんばんは、にゃん」、「こんばんは、こっこっこー」、「こんばんは、わんわ~ん」と可愛らしい動物達は挨拶をした。
どうやらまりみど古書カフェ店には夜になると可愛らしい動物のお客さんがやって来るようでした。
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