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第四章 新しい始まりの日
9 じゃんけん真剣勝負
しおりを挟むみどりちゃんの声で我に返る。気がつくと自分の世界に入っていた。
「みどりちゃん、顔が面白すぎるって失礼だよ」
わたしはぷくーっと頬を膨らませる。
「だって、本当のことじゃん。にひひっと笑っているかと思ったら今度は急に真面目な顔になって一人で頷いたりしてるんだもん」
「だって、それは勝負について真面目に考えていたんだもん」
「……あの、すみません。お話中失礼なんですがじゃんけんはいつしてもらえるのでしょうか?」
すっかり忘れていた……。みどりちゃんとのバトルに夢中になっていたではないか。
わたしとみどりちゃんは顔を見合わせてあははっと笑った。
「真理子、早くじゃんけんしなきゃ」
「あ、うん。お待たせしました。すみません。じゃんけんのお時間ですよ。手抜きしないで真剣勝負のじゃんけんですよ」
わたしはとびっきりの笑顔を作ってみせた。
「お姉さんは面白い方ですね。僕も負けませんよ。真剣勝負で挑みますよ」
お客さんはクスクスと笑いそれから真剣な表情になった。
ではでは、じゃんけんの真剣勝負の始まりですよ。
「最初はグー」と言ってまずはグーを出した。そして、ここからが真剣勝負のじゃんけんだ。
わたしは勝つぞと気合いを入れてみせる。お客さんの顔をちらりと見ると真剣な表情になっていた。負けないぞ。
「じゃんけんぽーん!」とお互い声を出した。
運命の瞬間だ。さあ、どちらが勝つのかドキドキと心臓の音が聞こえる。
わたしは、パーを出した。
「……あっ」わたしは思わず声を出してしまった。
「おっ」とお客さん。
「わっ、真理子!」
じゃんけんの真剣勝負の行方は……。
わたしがパーを出したのに対してお客さんはチョキを出した。
「えっ、わたしの負け~そんな……」
わたしは、ガックリと肩を落し両膝をついた。
「よっしゃ! 本半額ゲットしました~」
お客さんは会心のガッツポーズを決めた。
「く、悔しいよ~」
わたしは地団駄を踏んだ。たかがじゃんけんされどじゃんけんに熱くなってしまった。
「お姉さん大丈夫ですか?」
お客さんはにっこりと笑った。
みどりちゃんもんクスクス笑っているしもう嫌になる。
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