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第四章 新しい始まりの日
6 不思議な感覚と出会い
しおりを挟む楽しいのか楽しくないのかよく分からないティータイムをわたし達は過ごした。わたし以外の二人はゴーヤ茶を飲みながら楽しそうではあるけれど。
「それにしてもレトロ感と温もりがある空間だね。ゆったりと寛ぎたくなるよ」
真奈ちゃんは、ティーカップをコトッとテーブルに置き店内を見渡した。
それから、
「それにしても二人が古書カフェ店の店長になるなんてね。ちょっと意外だったかな?
昔は民宿のオーナーになりたいって話していたよね」と言って真奈ちゃんは悪戯っぽく笑った。
「うん、そうだったんだけどね……真理子が突然古書カフェ店の店長になりたいなんて言い出して気がつくとわたしも引きずられるようにして店長になっていたんだよ」
みどりちゃんは「ねぇ、真理子」と言ってわたしの顔を見てにやりと笑った。
「それがね、そのはずだったんだけどね、『沖縄で夢を売りませんか? 古書カフェの雇われ店長二名募集中』と書かれている張り紙を見つけたんだ。この沖縄で夢を売りませんか?という言葉になぜか引き込まれて魅力を感じてどうしても古書カフェ店の店長になりたいと思ったんだ」
わたしは、この古書カフェのシャッターに貼られていたあの張り紙を思い出した。猫の茶和ちゃんに導かれるようにしてこのまりみど古書カフェ店に辿り着いた。
そう思うとなんだか不思議な気持ちになった。
あの時、茶和ちゃんに出会わなければわたしの人生は違った形になっていたのかもしれない。茶和ちゃんの黄色いあの目がわたしをここに導いた。
わたしは店内をぐるりと見渡した。
ずらりと並ぶ木製の書棚にはたくさんの本が並べられている。木の温もりが感じられる空間。木製のこのテーブルにわたしが今座っている椅子ここにわたしが居る偶然。そんなことを考えているといろいろな選択肢が人生にはありみんな各々選んでいるんだなと思う。
なんてわたしらしくもない真面目なことを考えていると、
「ちょっと、真理子ちゃん、ぼけーっとした顔になっているけどどうしたの?」
「真奈ちゃん、真理子のこのぼけーっとした顔は元からだよ~」
「あ、そっか、そうだよね。みどりちゃん」
なんて話す二人は失礼極まりない。
「あのね、真奈ちゃん、みどりちゃん! わたしは人生について真面目に考えていたんだからね」
わたしは、ぷくりと頬を膨らませぷんぷんと怒った。
「……えっ、真理子ちゃんが人生について考えていたなんてびっくりしたよ」
「この暑い沖縄に雪が降るかもしれないよ」
やっぱりこの二人は本当に失礼極まりないよ。
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