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第四章 新しい始まりの日
3 続チラシ配り。そして
しおりを挟むわたしの差し出したチラシをスーツ姿のサラリーマン風の男性が受け取ってくれた。
「ありがとうございます。まりみど古書カフェ店で~す。良かったら来てくださいね」
わたしは明るく元気よくお礼を言った。
チラシを受け取った男性はチラシに目を落とし「古書カフェ店なんて珍しいですね。機会があれば」と言ってにっこりと微笑んでくれた。
それからもわたしは沖縄の街を行く人たちにチラシを配り続けた。「お願いしま~す」とチラシを配るとかなりの人達がわたしが配るチラシを受け取ってくれた。
暑さなんて忘れてわたしは夢中になり地元の人から観光客ぽい人達にまでチラシを配った。
「ねえ、真理子。わたしのチラシ受け取ってもらえないんだけど……」
みどりちゃんは額にかいた汗をハンカチで拭きながら言った。
「そうなんだね」
「真理子がチラシをどんどん受け取ってもらえてるからどうしてかなと思って……」
みどりちゃんは、「見てよこれ」と言って配り始める前とさほど変わらない紙袋に入っているチラシの束を見せた。
「チラシ配りにはコツがあるんだよ」
わたしは胸を張って言った。
「チラシ配りはね、受け取るタイミングがズレるとダメなんだよ。ちょうど良いタイミングでおへその辺りを目指してチラシを配る。ある一定の間チラシを差し出し続ける。差し出すタイミングが早すぎても遅すぎても駄目だからね」
わたしは、ふふんと得意げに笑った。
「真理子のくせに……真理子に教えてもらう日が来るなんて」
みどりちゃんは悔しそうに唇を噛み締めた。
「それからね、両手が塞がってる人には配らないとかね。あ、でもそれでも受け取ってくれる人もいるんだけどね」
「真理子、どうしてそんなに詳しいの?」
みどりちゃんは不思議そうに首を傾げた。
「だって、わたし学生時代にチラシ配りのアルバイトをしていたんだもん」
わたしは、ふふんと笑い胸をポンポンと叩いた。
「そうだったんだ。知らなかった」
「さあ、チラシ配りはめげない、諦めないことが大切だからね。まりみど古書カフェ店に頑張ってお客さんを呼び込もうよ」
わたしはにんまりと笑った。
わたしはそれからもチラシを配って配りまくった。まりみど古書カフェ店にお客さんが来てくれますようにと願いを込め「お願いしま~す!」と笑顔を浮かべた。
みどりちゃんもわたしの指導のせいかチラシ配りが板についてきた。
暑くて汗をたくさんかくけれど自分が任せられているお店のチラシだと思うとチラシを配ることも楽しくなってくるから不思議だ。
「お願いしま~す! まりみど古書カフェ店で~す!」
わたしはチラシ一枚一枚丁寧に心を込めて配った。学生時代にやったアルバイトでのただ枚数が捌けるためだけのいい加減な気持ちとは大きな違いだ。
チラシが入っている紙袋のチラシは残り一枚となった。太陽がキラキラ輝くこの沖縄の空の下でわたしは元気よく声を出した。
「まりみど古書カフェ店で~す!」
その時、
「あれ? 真理子ちゃんじゃない?」と誰かがわたしの名前を呼んだ。
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